序章 あれからの二人
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ロロベリアに続いてニコレスカ姉弟の謹慎も解かれた。
「明日からまたお勤めか。今にして思えば気楽な時間だったわ」
講師舎を出るなり愚痴るユースは謹慎明けとは思えないほど反省の色がない。
「わたしは待ち遠しかった。やっとロロに会える」
同じく謹慎明けのリースも反省の二文字はどこへやら、三日ぶりに親友に会える喜びで無表情ながらも機嫌がいい。
王国内で起きていた失踪事件から明るみに出たヴェルディク=フィン=ディリュア卿の反乱計画。その解決に一躍買ったリースとユースも謹慎処分を言い渡されていたがロロベリアに遅れること三日、ラナクスへと帰ってきたのは本日の昼下がり。
その足で学院へ向かい謹慎中に書いた反省文の提出、講師から再度注意を受けてようやく解放された。
「でもさ、どこいるんだ?」
今日は休養日なので学院に人気はなく、学食へ行っても当然ロロベリアはいない。
以前なら休養日関係なく自身の専用訓練場でボコボコになるまでアヤトに特訓をしてもらっていたらしいが、さすがにそれはないだろう。
なんせ一連の事件を得て、アヤトはロロベリアが六年も再会を待ち望んでいたクロだと判明した。
いや、新たな出会いと言うべきか。
アヤトはクロとしての時間を失い、本人も別人だと言い張っているらしい。
またロロベリアもアヤトと同じ見解でクロを失ったことを受け入れ、弔いの涙を流した。
それでも二人はシロとクロではなく、ロロベリアとアヤトとして再び再会を果たしたのだ。
なにより三日前、アヤトに会いに行くロロベリアの勢いを考えれば間違いなく思いを伝えているだろう。
アヤトがロロベリアをどう思っているかは謎だが、それでもユースから見れば特別な存在としているのは確実で。
ならば何かしら二人の関係は進展していると踏んでいる。なら以前と変わらぬ時間というのも違うハズ。
そこも踏まえてリースとは別の意味でロロベリアと会うのを楽しみにしていたりする。
「どこもなにも訓練場」
にも関わらずリースは無粋な勘違い、これにはユースも苦笑を漏らす。
「休養日にそれはないだろ」
「どうして?」
「どうしてもなにも色々知り合ったわけだし、オレたちが知らないところで二人の仲は進展してるだろ? なら――」
「――リースさま、ユースさま。お久しぶりです」
「「――っ」」
本気で理解していないリースに説明しようとするも、不意に背後から声をかけられ二人は反射的に距離を取る。
全く気配を感じさせず突然背後を取られたのだ。
声の主は黒のゴシックドレスに愛らしい顔をした少女で、二人の反応も気にせず優雅に一礼。
マヤ=カルヴァシア。アヤトの妹ということになっているが、その正体は想像上の存在でしかなかった神。
「お帰りになられていたのですね。まあ、知っていましたが」
そしてマヤも正体を知られていようと変わらず礼儀正しく。
「お気になさらず。周辺に人間は居ませんから」
しかし意味深な言葉を交えて接してくる。
「……つまり、気にせずぶっちゃけトークをしてくれるわけですか? 神さま」
「お話しできる範囲であれば。秘密は女性を美しく魅せるスパイスですし」
「それはまた光栄なことで。ですが神さまにも性別はあるんでしょうか?」
「さてどうでしょう? それとユースさま、わたくしのことは今まで通りマヤで結構ですよ。ロロベリアさまにもお伝えしましたが、神とは言っても人間に対して特別な何かをしているわけではありませんから」
皮肉にもクスクスと微笑を浮かべるマヤはさすが神さまと言ったところか。見下しているような雰囲気を醸し出す。
そんなマヤにユースは苛立ちよりも不気味な感覚を抱き、普段の軽口が潜んでしまうが代わりにリースが一歩前へ。
「ロロとは話した?」
「はい。大変興味深いお話をさせていただきましたが、それが?」
「……ロロは許したの?」
「お許しどころか感謝をされました」
「ならいい。でも、これだけは覚えておく。もしロロを泣かせるようなら……わたしはあなたを許さない」
「肝に銘じておきます」
リースの殺気にもマヤはやはり気にせず一礼。
このやりとりにユースはただ苦笑。
相手は未知の存在である神。にも関わらずロロベリア優先で必要とあればケンカを売るのも辞さない。
ならばとユースも開き直り肩の力を抜いた。
「マヤちゃんとのぶっちゃけトークはまたの楽しみとして。マヤちゃんはお兄さんと姫ちゃんがどこにいるか知らない?」
「むろん興味深い観察対象ですから。今は訓練場におりますよ」
「……いるのかよ」
「ああ、ですがユースさまが予想されていたようにお二人の仲は少々進展していますわ」
「そうなの?」
「はい。あの朴念仁な兄様がプレゼントをしていましたし、これまで以上に熱々な関係を育んでおりますから」
「それはそれは……というかマヤちゃん? いくら神さまでものぞき見はどうかと、お兄さん感心しないな」
「ご安心を。全てを観察しているわけではございませんから」
「よろしい。んで、姉貴。そういうわけだから邪魔せず……て、どこ行くの?」
「訓練場」
思わぬ情報にニヤニヤなユースを余所に、一人どこかへ向かうリースに問いかけるも返答はシンプルなもので。
「いやいや、訓練場とはいえ熱々な二人の邪魔するのは無粋だろ」
「もちろん熱い訓練の邪魔しない」
「その熱さじゃなくてさ……」
「なによりわたしのロロ成分がもう持たない」
「なにその成分っ?」
意味不明な理由を口にしつつ足を止めないリースを追いかけるユースをマヤは手を振り見送り。
◇
「これでひとまず役者は揃いすね」
二人の背中を見つめる瞳は興味津々と、まるで楽しいオモチャを得た子供のように、しかし浮かべる笑みは妖艶で。
「果たして兄様はあのお二人に何を見いだしたのでしょう。今後の接触も踏まえて楽しみですわ」
そして静かに姿を消した。
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