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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第五章 震撼

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第百二十二話 宿屋構想

「いくつか問題がある」


「うん。私も色々考えたからなんでも聞いて。魔力のことはわからないけど……」


「魔力はこっちで考えるから今は気にしなくていい。立ち話もなんだから休憩スペースに移動しようか」


 バックヤードに入り、休憩スペースのソファに腰を下ろした。


「じゃあ何点か聞くからな。まずここに宿屋を作るということはマルセールは二百人のお客を失うことになるかもしれないんだぞ?」


「今はどこも満室だから少しくらい減っても痛手にはならないよ。それに今後は冒険者以外のお客さんもきっと増えるだろうし」


「言い方が悪いかもしれないが最低ランクの宿屋に泊まってる冒険者も少なくないだろ? その宿屋に泊まりたいって一般客もいるのか?」


「冒険者に限らず宿にお金を使いたくないって人はたくさんいるの。それこそ寝るスペースさえあればいいって人もいるもの。でも冒険者がたくさん泊まってるような宿は避ける人もいるからそういう人にとってはいいことだと思うし」


 冒険者たちが泊まっていることで一般客が寄り付かなくなった宿屋もあるかもしれないのか。

 でもその宿屋は冒険者が来なくなったら一般客が来るようになるってことか。


 しかもウチの冒険者たちは素泊まりが多いはずだが、一般客や他の冒険者たちは夕食や朝食を食べてくれる可能性もあるよな。

 今はどこも満室ってことは泊まれなかった人もまだまだいるわけだし。

 もしかしてウチの冒険者はマルセールにとっていないほうがいいとか……。


「なるほど。その点は心配なさそうか。なら次は宿屋を立てる前提での話な」


 リョウカは少し笑顔を見せた。

 ミーノは起きたリスと遊んでいるようだ。


「確認だけど、地上の小屋とこのダンジョンストアの違いはわかってるよな?」


「ダンジョンがなくなっても残るか消えるかだよね?」


「あぁ、ここは物資エリアの一部だから本物の木を使おうがダンジョンがリセットされれば全てが消滅する。それを踏まえたうえで地上かここかだったらどっちに作るつもりだ?」


「悩むまでもなくここ」


「ほう? なぜ?」


「一番の理由は従業員に魔物が使えることかな。部屋の清掃やベッドメイキングは重労働だからね。それに地上に作るとなるとどうしても場所をとるから森に悪いし、仮に地下に作っても森に良くなさそうだし。でもやっぱり従業員の問題が大きいね」


 まぁさすがに地上では厳しそうだからな。

 宿屋の仕事がどんなものかは知らないが魔物を使わない手はない。


「作りはどんな建物がいいんだ? 最低でも三百人は泊まれるやつな」


「そこはこの物資エリアとの相談になるかも。上に高い建物にするか、高さはなくて横に長い建物にするとか、複数に分けるとかは私では決められないよ……」


「それもそうか。じゃあそれはおいおい考えるとして、宿屋の中の話をしようか。といっても俺は宿屋のことを知らないからな……」


「じゃあ私の話を聞いて疑問に思ったことがあったら言ってね。まず客室なんだけど、一人部屋、二人部屋、四人部屋の三種類ね」


「その部屋割りにはどういう意図があるんだ?」


「え、意図? ……どこの宿もたいていそんな感じだし……いきなりツッコむんだね……」


 ん?

 なにか考えがあってのことだと思ったが違うのか。

 俺なら一人部屋一択だけど。

 二人パーティも結構多いから二人部屋も需要ありそうか。

 三人パーティ以上なら四人部屋もいいかもしれないが部屋くらい別のほうがよくないか?

 でもみんなでワイワイするのが好きな人もいるだろうしなぁ。

 作成会議とかならみんなが集まれる広い部屋のほうがいいか。

 結局人それぞれってことか。


「それぞれの部屋の違いは? ベッドの分広くなるだけ? トイレや風呂は一つ?」


「他にもソファやテーブルのサイズが変わったりかな。トイレとかお風呂はさすがに一つだね」


「二人部屋とか四人部屋は一人ずつ個室があるのか?」


「え……さすがに個室は……」


「ふ~ん。なぁ、リョウカの家の宿屋に来るお客は何泊する人が多い?」


「一泊とか二泊かな。稀に一週間くらいの人もいるよ」


「例えばリョウカとミーノが二人で泊まるとしてさ、一人当たりの料金が同じなら一人部屋か二人部屋どっちを選ぶ?」


「二人部屋かな。部屋で色々お話したいし」


「宿泊期間が一年でもか?」


「え……一年……それなら一人部屋がいいかも……いや、でも二人で暮らしても楽しいかも……」


「ここにはもうすぐ一年通い続けてくれてるお客がたくさんいるぞ? しかもパーティともなると日中ずっといっしょにいるんだぞ?」


「あ……そうだよね……宿泊じゃなくて住むって考えないといけないのか……」


 一年ともなるとさすがにどんな仲のいい双子だとしても寝るときくらいは別の部屋がよくないか?

 もちろん安くなるから二人部屋とか四人部屋を選ぶのはわかるが、ここでは料金ではなく生活のしやすさを優先してほしい。


「じゃあ今俺が思いついた案を言ってもいいか?」


「うん……お願い」


「まず客室は一人部屋のみとする。装備品とかもあるから少し広めがいい。そしてパーティメンバーのみが使用できる部屋を別に設ける。これは無料な。二人パーティ用と三人以上のパーティ用の二種類にするか。個人部屋とパーティ部屋間の移動は転移魔法陣な。ソロの人には可哀想かもしれないけど、パーティを組むきっかけになるかもしれないし」


「……なるほど。それなら個室があって集まる部屋があってと両方を兼ね備えてるね」


「個人部屋に入れるのは本人と本人が許可した人のみな。冒険者カードのIDを使ってシステムを構築しようか。それと外部と遮断されることになるから誰かに用があるときに呼び出す仕組みも考えないとな。これは許可した人とパーティメンバー、あとは受付から可能にしようか」


「そっか、冒険者カードの情報を使えば色々できるんだね。でも呼び出すのは部屋の外に呼び鈴を付けるとかじゃダメなの? ドアをノックしたりでもいいわけだし」


「うん、呼び鈴みたいなイメージだな。だけど部屋にドアはない。受付から部屋の中に転移させるから。だからもちろん廊下や階段も必要ない」


「え……ドアや廊下や階段がない……部屋の中に転移……」


 ここはダンジョンだからな。

 転移魔法陣を有効に使わないと。

 部屋へ転移させることも冒険者カードと部屋番号を紐付ければいいだけだ。

 鍛冶工房ではできてるし。

 余分なものは魔力の無駄遣いにもなるしな。


「ミーノ……なにがなんだかわからなくなってきちゃった……」


「大丈夫よ。リョウカちゃんが言ったことをロイス君がダンジョン仕様に変更してくれてるだけだから。気にせずに続けて」


「私もダンジョン仕様で考えてきたつもりなんだけど……それにまだ一言なのにこんなに進展しちゃうなんて……」


「そこは割り切ったほうがいいよ。視点が違うんだから考え方も違うの」


 ミーノは俺のことをずいぶん理解しているようだ。

 さすが八歳からの付き合いって言ってるだけはある。


「……じゃあ客室はロイス君の案で。次に食事のことなんだけど……」


「食事? 今のままじゃダメなのか? もうすぐメニューも増えるぞ?」


「それでもいいんだけど、今以上に食事を楽しみにしてほしいって思ってね」


「なにかいい案があるのか?」


「朝と昼は今のままでいいと思うけど、夜はバイキングにしたらどうかなって」


「バイキング?」


「うん。食べ放題のことをそう呼んでるみたい」


「食べ放題? キャベツ食べ放題みたいなもんか?」


「うん。だけどキャベツだけじゃなくて全部の料理の中から好きな物を好きなだけ食べれるようにするの。料金は定額でね」


「定額で好きなだけ? そんなの赤字を垂れ流すようなものじゃないのか?」


「普通は損しないように料金設定するらしいの。普通は」


「マルセールでそれをやろうとしたらかなりの金額になると思うんだが……。でもここではあまり気にする必要ないな」


「うん。だからやってみたいの」


 バイキングか、めちゃくちゃ面白そうじゃないか。

 好きなものを好きなだけ食べられたらさぞ嬉しいだろう。

 好きなだけってことは少量でもいいってことだよな?

 俺なら色んな種類を少しずつ食べるだろうな。

 でも作るほうが大変じゃないか?

 キャベツみたいに大きな皿に盛っておくのか?


「場所はどうする? 料理の提供はどんな形になるんだ?」


「バイキング会場を作ってほしいかな。食堂をもっと大きくした感じね。たぶんバイキングだとみんな長居するはずだから今みたいに時間をずらしてもらうことはできないと思う。料理は一度にいっぱい作って大皿に盛る感じかな。今までよりも作る量はだいぶ増えるし、なくならないようにずっと作り続けることになるけど……」


 小屋も手狭になってるから拡張が必要と思ってたところだ。

 二百人同時に集まるかもしれないとなるとかなりの広さが必要だな。

 いっそのこと食堂もそっちに移して小屋をダンジョン酒場にするか?


 料理の提供方法も少し考える必要があるな。

 従業員の勤務時間を延ばして負担が増えても困るし。


「よし、わかった。バイキングの案は採用な。場所や料理についてはみんなで相談しながら決めていこう」


「ホント!? 嬉しい!」


「やったねリョウカちゃん!」


 宿屋のことよりもバイキングのほうが喜ばれるんじゃないか?

 でも宿屋があってこそのバイキングか。

 町に帰ることを気にしなくていいっていうのは気持ち的に楽だからな。


 というか宿屋のせいで地下四階が霞んでこないか……。

 地下四階があるからこその宿屋だよな、うん、そう思うことにしょう。

 相乗効果ってやつだよな。


「確認だけど、リョウカが宿屋の責任者になってくれるんだよな?」


「……私でいいの?」


「もちろんだ。他に誰がいるんだよ」


「うん! ありがとう! じゃあ次はね~……」


 まだまだありそうだな。

 これからは女将さんって呼べばいいのか?


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