迫りくる時
コオオオオオオオオオオオオー
コオオオオオオオオオオー
対面しているのは
真堂丸と骸
避けては通れぬ運命
その時は突如としてあらわれた。
ジロリ骸が真堂丸を見つめる
「腕を上げたようだな、鬼神は強かったか?」
「ふっ、見るところ、勝負は瀕死にまで追い込まれ、最後に力が覚醒したか」
「抜け骸」真堂丸が刀を抜く
「ハッハッハ 、笑わせるな」
「見るところ、鬼神との死闘の後、身体は万全ではないだろう」
この二人のやりとりのまさにこの時だった、全身を白で覆う、大帝国の幹部が完璧に気配を押し殺し、近くに隠れたのだ。
「あれは、骸に真堂丸」
ニヤリ 良い流れですね。
息を殺し、身を潜め、完全に気配を消し、二人の会話を聞いている
「一週間後だ、富士の山の頂上に来い」
「そこで、決着だ 逃げるなよ」
「おまえがな」
全身を白で覆う幹部そいつの正体は秀峰
ほぉ、あの二人が決着?
こいつは、こちらにとっても良い流れ。
秀峰はニヤリと笑う
すると突然
「どうやら鼠が嫌がるようだが」
秀峰は骸のその声に姿を即座に表す
「やはり、あなたには隠せないですね」
「ふっ、貴様か 良いか小僧、もし俺たちの邪魔をしてみろすぐに斬り捨てるからな」
小僧っっ?
この私を小僧だとっっ
「相変わらずですね、骸さん」
「私を小僧呼ばわりですか」
「笑わせやがる、それ以外なんて呼びゃあ良い、鬼道の犬か?」
ズクシュッ
骸
骸めえっっ
「飼い犬は座り黙って見ているんだな」
「そしたら命は助けてやるよ」
事実、骸の実力は自身より遥か上
秀峰には何一つ返す言葉がなかった。
ぬおおおっ、ぬおおおっ 骸めっ 骸めえっ
真堂丸を見つめ
「じゃあな、せいぜい余生を楽しむんだな」
骸は歩き出す
馬車からは仲間達が出て来ていた。
「くっくっくくっ」
「今のおまえには隙がねぇ、仲間の一人は殺してやろうと思ったがあの時とは違うようだな」
「楽しみにしてるぜ」
ザッ ザッ
秀峰が真堂丸を見つめ
「真堂丸さん聞きましたよ、あの鬼神さんまでも倒したらしいですね、本当に大したものです」
「あの女狐さんを斬り、まさか鬼神さんまで斬るとは。だが次はどうでしょうね?相手はあの骸、私は二人が潰しあってくれるのには賛成ですから、鬼道様には決着が着くまで何も報告はしないでおきましょう」
秀峰は歩き出す
この時、秀峰の腹わたは煮えくり返っていた。
骸、骸、骸めえっ、あいつに一泡吹かせてやりたい
だがこの私に何が出来る?
覚えていろ
骸
「真堂丸」文太の声に振り返る
「一週間後、俺はあいつと決着をつける」
文太は頷いた。
「僕もそれを見届ける」
文太の本気の眼差しは真堂丸の両の瞳を何一つ揺らぐ事なく見つめていた。
「分かった、頼む」
ゴゴゴゴゴゴォー
その頃
もう一つの戦いが行われようとしている
対峙しているのは麻呂と一斎
「じゃあ、若き日の一山さんと僕どっちが強いか見て下さいね」
一斎が刀を抜く
おおっ、麻呂は驚き声をあげてしまう。
一斎の刀を抜く所作に麻呂は完璧に打ちのめされ感動していた。
なんと美しい所作
こんな者は見た事がない
この瞬間に麻呂は自分とこの男との、おおよそ比べることすら出来ぬ程の次元の違いを知覚した。
ちっ、ここまでとは
「見てやるよ来な」
「はいっ」
スパアアンッ
「ぬ、ぬおおっ」
まるで閃光
麻呂は後ろに退いた
「わああっ、凄い」
「どう、どっちが凄い?」
「そうだな、これなら一山と同じくらいか」麻呂が笑う
「なんだぁ、やっぱ残念だ」
麻呂の右腕は斬り落とされていた。
「僕こないだ、白竜っての斬ったんだ、強いって聞いたから本気で斬ったら動くことすら出来なかったみたい」
「おじさんは白龍より弱いなって感じたから半分の力でやったんだけど、神様は冷たいよ、こんなに強い僕が居ても相手になる奴がいないんだもの、つまらない」
なんとっ
こいつは驚いた、あれで半分の力か
麻呂はほくそ笑む
「おいっ」
「なあに?」
「俺も刀の道に生きた人間、おまえの本気ってやつをこの身体で感じてみたい」
「良いけど死ぬよ」
ザッ
「来やがれ」
「では」
ザッ
真堂丸君、君だったらこの状況どうする?
近い将来君はこいつと戦うことになる
相手はまるで人間じゃねえ
君なら越えられるか?この男を
こいつは、とんでもない道だな
麻呂は笑った
俺も大馬鹿野郎だ
こいつの一振りで斬り殺されるのが分かっていても
それでも
この太刀を見れるのが死ぬ以上に嬉しい
皆よ、後は頼んだぞ
スパアアンッ
「うん、おじさん大した刀使いだよ、目をかっぴらいて、この太刀を斬られる直前まで眺めていたんだね」
ザッ
「真堂丸、君はもっと強いよね、あの道で会った時からたまに君の姿が頭に浮かぶんだ」
数分後
菊一がその場に到着する
麻呂……
目の前には真っ二つになった麻呂の変わり果てた姿が転がっていた。
「麻呂よ、全力で挑んだお前の姿を前にして俺は涙は見せないからな」
菊一は麻呂のくれた貝殻と共に墓をつくり弔った。
それから2日
キィンッ キィンッ
道来と真堂丸は二人で稽古と言い向きあっていた。
二人は本当に楽しそう
キィンッ キィンッ
しかし、本当に見事だ こんな自由自在に刀を扱えるんだからな、更に信じ難い身体能力
道来は笑った
嫉妬してしまうぜ
俺は幸せ者だ
身近にこんな者がいて
いつでも俺はお前の背中を追ってここまで来れたんだ
お前がいなきゃ、俺は偽り自分をごまかし生き続けていただろう
お前は俺の憧れであり
俺の道
そして、友だ
キィンッ キィンッ
「しっかし、あいつら気合い入ってんなぁ、毎日ほとんど一日中あれやってんぞ」としんべえ
太一は嬉しそうに一日中ずっと眺めていた。
「道来もどんどん腕を上げてるな」菊一は麻呂の事は皆に伝えなかった、気の良いこいつらの事、きっと責任を感じるだろう。
黙っておいた。
麻呂程の男が手も足も出ない手練れ、相手が一斎であった事は検討がついていた。
「しかし、文太さん先生と骸の斬り合いを止めようとはしないんでごんすか?」
「出来ることならそうしたいです、けど二人は止まらない、きっと真堂丸も」
「僕には見届けることしか出来ない」
「そうですか」
文太さん、あなたは知らないかもしれない
斬り合い
死ぬか生きるか、命をかける極限の場
その決闘の場
文太さんが居ることで先生がどれほど力強く感じているか
何より文太さんを見て先生に生きて帰ろうという思いがどれほど強く湧き上がっているか。
文太さんは気づいていますか?
残酷で辛いことかも知れない
大好きな友の死ぬか生きるかを見届けなきゃいけない状況、精神的に戦っている者以上に辛いものもある
もし、大丈夫なら先生に代わってお願いするでごんす
どうか先生の決闘を側で見届けてあげて下さい
心の中、一之助はこんな事を思っていた。
真堂丸と骸の決闘
一刻一刻
削られるようにして時は迫ってきている
その日
真堂丸か骸
どちらかが勝ち
どちらかは死ぬ
時は来たる




