頼り
ホー ホーッ ホー ホーッ
「いつ眺めてもこの眺めは最高だぜぇ」夜の森の中から響くしんべえの声
皆は外にある風呂につかり、星空を見上げていた。
「たまらないでごんすね」
「はい」文太も微笑む
今までよく皆と風呂に入ってきた
この瞬間は戦いを忘れ、平和に浸れている気がした。
しかし、明日は。
「真堂丸、準備は出来ているか?」それは友の決闘を心配する、道来の言葉
「ああ」
明日はいよいよ骸との決闘の日
太一はふと思う、あんな怪物と真の兄貴は明日本当にやりあうんだ、自身に宿る骸の恐ろしい記憶。
見たことないくらい強大な存在
信じる事しか出来ない、真の兄貴は必ず勝つ。
菊一もまた夜空を眺め
骸を思う
あいつは本物の怪物だった。
あんな奴には出会った事はない
俺にはあいつを止める事は不可能
信じている
こいつが勝つ事を……
真堂丸が勝つことを
敗北即ち、そこに広がるのは死
正直、真堂丸抜きでこの先大帝国に勝つのは難しいだろう
こいつは今や、この国の運命を握ってる男
お前の敗北はこの国の民の死をも意味する
負けんじゃねえぞ
死ぬんじゃねえぞ
絶対に勝つんだ
その日の夜空はいつもより一段と眩く輝いて見えた。
星空を眺めてると、心が和む
自然はなんて壮大なんだろう
いつだって、自然は人々の苦しみや、悲しみ、過ちを、優しく包み込み、見守ってくれている気がした。
どうか、お願いです
僕の命 差し上げたって構いません
どうか
真堂丸を生かしてください
僕は真堂丸と共に明日、骸と向き合わなければならない
君は一人じゃない
神様
仏様
どうか・・・
そんな僕の心の内に気づいたかの様に真堂丸が言う
「心配するな、俺は勝つ」
「うん」
「俺達も一緒に見守ります」と太一
「ああ、おれがいりゃあ百人力だ」としんべえも続ける。
「見守らせてもらうでごんす、先生の勝つところを」
そう
僕らは一人じゃない
みんなでこうして一緒に向き合っているんだ。
一人で戦っているんじゃない
一人で挑んでいるんじゃない
仲間がいる
一緒に支え合う仲間が居るんだ
心が少し楽になった。
その同時刻
秀峰は自身の内に巣食う骸への怒りと共に、ある事を企てていた。
私を侮辱したあいつは許さない
骸に絶望を与えたい
どうすれば?
くっくっく
あるじゃないか方法が
奴は真堂丸と、完璧な状態で殺りあいたい、それを出来なくしてやればいい
「おいっ、洞海に崔よ、明日早朝、真堂丸達を襲え、勝てずとも、お前達なら手負いくらいなら、負わせられるはずだ、奴を万全な状態で骸と闘わせるな」
邪魔してやるよ、骸
私を馬鹿にした事、後悔させてやる
絶対に真堂丸を万全の状態でお前に会わせやしない。
お前は勝利して虚脱感に襲われるのだ、その決着が完全勝利ではなかった事を知ることによってな。
その時すでに、お前が求め、恋い焦がれ、切望した相手はこの世にいない
お前の虚しい勝利だけが残るのだ。
「お前達明日、早朝真堂丸を襲え、必ず一太刀はあびせろ」
「はっ」
暗い夜が明け始めその日は遂にやってきた
ザッ
真堂丸は決戦の地、富士の山の頂上に向かう
もちろん仲間達と共に
そこに菊一の姿はなかった
殺気を感じ
皆の向かう先とは逆方向、皆の背の背後の門の所
一人敵を迎え撃つ
先ほどの会話
「菊一殿あっしも、一緒に迎え撃つでごんす、敵は恐らく二人、殺気を隠すどころかわざと放っている、俺たちはこれ程強いと言わんばかり、おそらくかなりの手練れ」一之助が言う。
「いや、俺一人で充分、お前達は一緒に行け」
「骸は恐らくこんな姑息な手は使わない、他の誰かか、大帝国の者だろう」と道来
「おいっ、真堂丸 骸に勝てよ」菊一が叫ぶ
「ああっ」
ジャキッ
「安心して、進め、 この先絶対に誰一人とて俺は通さん」
菊一の目つきが変わる
「礼を言う」真堂丸は歩き出す
「行けっ」
菊一さんありがとう
気をつけてください
本当にありがとう
いよいよ、始まる
真堂丸と骸の決闘
絶対に僕らは誰にも邪魔させない
向かうぞ、富士の山
ザッ ザッ
「なぁ、崔 あそこにとんでもねぇ殺気を放ってる奴が居て、どうやら、真堂丸追えねえな」
「失敗かねぇ、殺気放てば、否が応でも奴が出て来ると思ったが、強いのは真堂丸だけじゃなかったねぇ、甘く見過ぎだ」
「秀峰様作戦失敗だねぇ」
「ふふふっ、馬鹿を言え、あの方はそんな失敗はしない」
「ほぉ?どういうことだ洞海」
「じきに分かるよ」
「おいっ、おっさんそこ通してくれねぇか」
「悪いがここは通さねぇ事になってんだ、通りたきゃ死ぬ気で来い」
「ちっ、しゃあねぇな」
「やるか」
ヒョオオーー
会話はあまりなかった、今までの敵だって凄かった、だけど、骸にはどこかまた違う凄さがある。
どことなく何処か、真堂丸に似ているところがあるような感じがした。
それは刀に追求する真摯な姿勢だろうか?
皆にもいつもとは違った緊張感が漂っている
富士の山頂の中腹を過ぎた頃
それは起こる
「真堂丸」道来が言った。
真堂丸は足を止める
ヒョオオー
「すみませんねぇ、刺客を送らせてもらいました、無論役に立たないのは最初から承知の上でしたが、菊一さんの足止めの役には立ちましたので、クックック私の私情により、骸の望みを叶えたくなくなってしまってねぇ」
そこに立つのは
全身を白で包む男
大帝国白い刃と恐れられる幹部の一人
秀峰
「貴様を万全な状態で骸とやらせはしないよ」秀峰はすぐさま刀を抜く
構える真堂丸
その時だった
「真堂丸行け」
それは道来の言葉
真堂丸はすぐさま返事をする
「任せた」
目を合わせる二人
真堂丸は歩き出す
「道来、勝て」
頷く道来
「必ず勝ってお前のもとに向かう」
「道来殿あっしも力添えさせてもらうでごんす」
「一之助 行くぞ」真堂丸が言う
「えっ?」
「道来さん、絶対の絶対の約束ですからね」と文太
「ああ、お前達もな」
「行け」
「本気かよ、一人でこいつとやるのかよ」心配するしんべえ
皆は進もうとする
その時
「皆さんすいませんが俺はこれを見届けなきゃいけねぇ、残らせてもらいます」
「分かってます」
「太一さん必ず二人で頂上に来てください」
「はいっ」
「真の兄貴、骸に勝ってくださいね」
「ああ」
太一と道来はそれを聞き、微笑む。
「文太さん、真の兄貴をよろしくお願いします」
「はいっ、太一さん道来さんをよろしくお願いします」
「はいっ」力強く頷く太一
「おやおや、笑わせる勝手に話をつけないでくれますかねぇ、誰がそんな事を許しましたか?」
「そこに止まりなさい」
キンッ
「悪いが俺が相手になる」
「おやおや、誰かと思えば、私に以前殺されかけた、負け犬ではありませんか?」
「あの時より、強くなっているんで気をつけろ」
「良いでしょう、即斬り捨てさせて貰おう、今度は確実に殺しますよ」
キィンッ キィンッ キンッ
僕らは道を進んでいた。
「おいっ、お前達良かったのかよ?」
「相手はあの大帝国の幹部だぞ、お前ならともかく、あいつ一人で幹部とやりあうなんて、奴らは本物の怪物だろっ」
「しんべえ、信じるでごんす道来殿を」
「道来さんは必ず勝つ」と文太、それは微塵の疑いも見えない瞳
「ったく、分かったよ、おめぇがそう言うんならな」
そう言いつつもしんべえは内心、気が気ではなかった、心配だったのだ仲間が、大好きな仲間が一人でもかけたら。
死んでしまったら
俺の最愛の友達が………
手足の震えが止まらない。
ちきしょう死ぬんじゃねえぞ、道来、太一。
この先本当に何が起こってもおかしくないんだ………
キィンッ キンッ キィンッ
「即斬り捨てじゃあなかったのか?」
キィンッ キンッ
「認めましょう、確かに強くなっていますね、しかし残念ながらその程度では確実に死にますよ」
道来は微笑む
「おや、何を笑っているんでしょうか?」
「嬉しいなぁ、嬉しいなぁ」
「私と戦える事がですか?それともこれから死ぬ事ですかねぇ?」
「いや」
「あいつが、私を信じてくれた事だ」
「いつも、己は力足らず、あいつに守られてばかりだった、だが今日は幹部と言う強敵を前にあいつは自分に託し信じ進んでくれた」
「初めて力になれた気がした、認めてもらえた気がした」
「はぁ?見殺しにされただけじゃないんでしょうか?」
「分からないだろうな、お前にはこんな気持ち」
「この嬉しさ、お前には分からないかもなぁ」
「決着をつけよう秀峰、あの時の借りは返す」
「良いでしょう真っ二つにしてあげましょう」
拳を強く握りしめる太一
道来さん 道来さん 負けんな
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォーー
ヒュオオオオオーーーッ
「待ってたぜ」
「どれほど夢見たか、この時を」
カチャ スッ
美しい所作で刀を抜く骸
「実はな、骸」
「俺もなんだ」
ガキィイィィイインンッ
凄まじい風圧が辺りに爆風となり生み出された
刀は遂に交わる
真堂丸と骸
両者の刀はまるで時代を超え、ずっと待ちわびていたかの様に顔を見合わす
いよいよそれぞれの命を賭けた戦いが始まる




