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文太と真堂丸   作者: だかずお
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処刑岩






ゴヒョオオオオー ヒョオオーー




山のようなとてつもなく大きな岩を見上げる青鬼


処刑岩


いつ以来だ、あの岩が動くのは……青鬼は息を飲んだ。


鬼神が若かりし頃、たいそう強い人間がおった


鬼神はその人間に討ち勝つのに手を焼く事となる


だが人間が鬼に勝てない事の理由に圧倒的な力の差があった。


人間があの山の如き大きな岩の下敷きになり、生き抜くことは不可能なこと


鬼神は巨大な岩を持ち上げ、その人間を岩の下敷きにさせた、以来その岩が動かされる事はなかった。


その岩はそれ以来、鬼達のあいだで処刑岩となづけられる


「真堂丸や、続きをやろう」


鬼神の大きな手が真堂丸に向く


真っ黒い大きな大きな瞳が真堂丸をジロリと見つめていた


「行くぜ」


即座に真堂丸は自身の左側に大きな手を感じる、真堂丸はその手を蹴りあげ高く空を飛んだ


「うおおおおおおおおおおおおおーっ」


鬼神の頭上から真堂丸の刀が振りおろされたが、何もひるまず鬼神は地面を蹴り上げ、頭上のその刀に自分から向かって行く


刀と拳がぶつかり合う


ズゴオオオオオオオオオーーーン


二人は睨みあい、すぐさまお互い次の攻撃態勢に入る



「うおおおおおおおおおおおー」



「っしゃああああああああああー」



キィン ゴオオーン ドンッ キィン キィン


辺りにけたたましい音が響きわたる


次の瞬間、真堂丸の刀の柄が鬼神の脇腹に打ち込まれる


ズドオオオオンッ


凄まじい音だった


鬼神は一瞬意識を失いかけるが、すぐにほくそ笑んだ


「あめぇ」


ズゴオオオオオンッ


鬼神の拳が真堂丸の身体に打ち込まれた


「がふっ」真堂丸の口から大量の血が吐き出される


「真堂丸ーー」叫ぶ文太


即座にこの機を逃すまいと鬼神は無数の拳をくりだす


だが鬼神は瞬間ピタリと動きを止めた




スパアン




物凄い勢いで刀が下から振り上がっていた


鬼神はもし、もう一瞬動きを止めるのが遅れたならば真っ二つになっていた事を、この時確信した。




こ の や ろ う




鬼神は突如笑いだす


「やばいぜ、お前やばいぜ」


青鬼は驚く、あんな鬼神を初めてみる


この時、戦いを黙って見つめていた道来が叫んだ、


なにか嫌な予感がしたのだ、直感がそう叫んだのだ


「真堂丸、決着を急げ」


真堂丸は地面を蹴り上げ鬼神に飛びかかる


そのあまりの速度に、さしもの鬼神も真堂丸を見失う


直後自分の腹もとに響く音


ズゴオオオン


手応えありだった


そう決着はついたはずだった


普通なら……


だが


相手の名は


鬼神


地獄の鬼すら震え上がる鬼の王


数々の伝説になってきた本物の怪物だったのだ


鬼神は全身を貫くような痛み全てを凌駕したのだ、残ったものは何もなかった、痛みなどもはやない。


鬼神は笑った


「効かねえな」


ニヤリ


「っしゃああああー」


鬼神の拳が真堂丸を打ち抜いた




ズゴオオオオオン




ズゴオオオオオン




ズゴオオオオオオオオオオン


それは絶望の音をはらんでいるかの様に辺りに響く


「勝負ありだな」


真堂丸が倒れた所に鬼神は更に攻撃を続ける


「まだまだこんなもんじゃ済まさん」


一瞬の後、鬼神は驚いた、何故なら鬼神の目の前に刀が飛んできていたからだ。


鬼神は予想もしていなかったこの事態に瞬間とまどった。


この一瞬のうちに鬼神の頭にこんな言葉が浮かぶ


刀を捨てた


これが奴の最後の手段、もう手がないのだな


だが、それは確かにヤバかった、何故ならこの刀はこのまま完全に自分の首を飛ばすだろうからだ


間に合う手段がなかった


そう


俺以外ならな


鬼神はとっさに自身の牙を突き出し刀にあてる、凄まじい速度で回転する刀は牙を真っ二つに斬り落とすが、すぐに鬼神は牙をあてることで生じた刹那の瞬間、刀の前に腕を突き出す。


刀の勢いを確実に殺す為、腕を縦に自身の首の前に並べるよう突き出した、瞬間のこの鬼神の判断は自身の首をつないだ。


片腕は斬り落とされたが、二本めの腕の真ん中、刀は止まったのだ。


それらはほんの一瞬の内に起こっていた事


「っしゃあああああ」鬼神は勝利の雄叫びをあげ


斬られた腕の方と半分切れかかっている腕で真堂丸を殴り始めたのだ


ズゴオッ ボギッ グギャアアン


しんべえは震えた「イカれてやがる」しんべえの脳裏に女狐と真堂丸の戦いが思い出されていた。


「やべぇ、あいつ殺されちまう、駄目だ今回ばかりは」


真堂丸は地面にめり込む


ズゴオオオオオンーーー


「とどめだ死ね」


鬼神の手首の無い腕が天に振りかざされ、そのまま真堂丸の顔面に打ち込まれた。


ズゴオッ


鈍い音が響辺りに響く


青鬼の口から


「完全に死んだ」と力ない声で発せらた。







その拳を真堂丸は自身の鞘で受け止めていた。


鬼神は自身が攻めあぐねている事に気づいていた、どうしたって、こいつの動きを完全に止める方法が思いつかなかったのだ、そう処刑岩を奴の上にかぶせる隙、それが無い




その瞬間鬼神は笑った




コ レ ダ


鬼神は自身の牙を拾い上げ真堂丸に向かって叫んだ


「これで、ののは死ぬ」


真堂丸は即座に投げ込まれようとしてる牙の前に出た


「この甘さがお前の弱さよ」


真堂丸の腹に牙が突き刺さる


ズシュュッ


「ぐはっ」倒れた真堂丸


鬼神は処刑岩に近寄り


「お前が刀を持たず倒れていようとも迂闊に近づくことはしねぇ、認めてやろう、お前が危険な餌であることをな。ここに完全決着を宣言する」


鬼神は信じられないくらい大きい山のような岩をなんと持ち上げ真堂丸の身体の上に落としたのだ。


「さようなら、、我が餌よ」


道来達が止めようとするが、前に鬼神の家来の鬼達が立ちはだかった。


「まずい」一之助が叫ぶ


ズウォォオオオオオオオオオオーン


砂埃が舞った後、目の前に立っていたのは鬼神の姿


「手こずらせやがって」鬼神が地面に唾をはく


鬼神が文太達の方を向く


「貴様らにも地獄を見せよう、のの、青鬼よ、貴様らも殺す、まずは のの貴様からだ」鬼神が歩き出す


「お姉ちゃん、おばあちゃん わっ わたしもすぐにそっちに行くよ」


覚悟は決まっていたはずだった


のの の両膝は突如崩れ地面に座り込んでしまった


お姉ちゃん



どうしよう



どうしよう



わたし


こんな風に感じるなんて思ってもみなかったの


正直な気持ち


生きたい


もう生きたいとも思わなかった


でも、お姉ちゃんとおばあちゃんの気持ちを知り


今産まれて初めて


心から生きたいんだって思ってる


ごめんなさい


お姉ちゃんとおばあちゃんの願い叶えられそうにない


私はお姉ちゃんとおばあちゃんの分まで生きれそうにない


私このまま、すぐに殺されてしまう


それは産まれて初めて持った のの の生に対する執着であった。


私 今 生きたい


だが恐怖と絶望が一瞬の間にのの の全身を真っ暗に包んでいた


鬼神はゆっくりと近づいて来ている




目の前に見えるものは 暗闇




真っ暗な




どこまでも出口のない




果てしなく続く




暗闇




ののはうちひしがれ、自身の身、全てを暗闇に任せひれ伏そうとした


それは


その瞬間の出来事


「とん とん とん とんっ」


何者かが自身の肩を叩きながら言う


「とん とん とんっ」


ハッと見上げた目の前の視界に入ったのは文太の姿だった。


「とん とん とん とんっ」


ぶっ、文太さんっ?


「はいっ、ののさんを縛っている鎖は今全部とれました」


ゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオー


目の前には闇を象徴する鬼神が一歩一歩こちらに近づいて来ている。


その間に入るように


自身の目の前にしゃがみ込む文太の姿


「ののさん どうする ?」


「えっ?】


「信じるものは自分で決める」


文太は微笑んだ。


「のの さん どうする?」


鬼神がどんどん近づいて来ている


文太は立ち上がった


「僕らはののさんを命にかえても守ります、それを信じますか」


のの の目の前に差し出された文太の手


ののは目の前を見て、泣いた


のの の目の前に立っていたのは


五人の男達の背中


その男達は自身を守るように立ち


鬼神と向き合っていた


「大丈夫あっし達、仲間を信じるでごんす」


「お前には指一本触れさせない」


「道来さんの言うとおりだ」


「きっ、鬼神 なんてなっ おっ おれが倒してやるっ」


「さあ、ののさん」


それは、ののに差し込んだとてつもなく暖かい光だった。


のの の瞳からは泪が溢れていた


ありがとう 本当に ありがとう


のの がしっかりと文太の手を掴む


「私、皆さんを信じる」


「よしっ」


文太はその手を力強く握り返した。


青鬼の瞳からも、ののと同じように涙がこぼれていた


目の前に立つのは鬼神


誰もが恐れる本物の怪物


真堂丸が負け、絶望にうちひしがれていると思った。


すまない


お前達は最初から本当に本気だったんだ


本当に俺やのの、この島の人間を鬼神から救うつもりだったんだ







涙が止まらぇ


何度も逃げろと、お前達の覚悟を己は何もわかってはいなかった




最初からお前達は


本気だった


信じてんだ


仲間を


俺もお前達を信じる


青鬼は立ち上がる


「鬼神よ、俺もお前と向き合うことにした」




もう逃げねぇ




青鬼貴様 ナンダト




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオー


「貴様ら今のこの俺の状態を見て勝てるとでも思ったのか?」


なんと愚かな


貴様らごとき 指一本でも殺せるんだぞ


ズシャ ズシャアン


鬼神はどんどん近づいて来ていた


「道来殿あっしは左から攻める」


「承知した」


「じゃあ、俺は道来さんに続く」太一が刀を抜く


「俺も援護する、同時に行くぞ」青鬼も三人の後ろに立つ


「俺はえっと、そうだな」たじろぐ しんべえ


「文太、しんべえ のの 真堂丸のほうを任せる」道来が言った。


「はいっ」


道来の言葉は三人をこの危険な場所から遠ざける意図も含んでいた。


ズシャアン ズシャアン


「行くぜ」


目の前に立っていた鬼神が消えた


即座に太一は気付くこととなる


目の前に大きな鬼神の瞳


鬼神の瞳は自身の顔よりデカく


その瞳は太一をジロリと見つめたのだ


おお、おおっ おおおおおおおおおおっ


真の兄貴はこんなのと戦ってたのか


こんなのと戦ってたのか………




俺 死んだ




ズバアアアアンー


鬼神の指は太一の目の前で止まっていた


止めていたのは道来の刀


「こいつは私の命より大切な兄弟、簡単にはやらせん」


「どっ、道来さんっ」


「てめぇただの雑魚じゃねえな」


直後鬼神は自身の左側と頭上に敵の気配を感じた


「ったく」


鬼神は斬られた腕で一之助の刀を受け止め、頭上から来た青鬼の拳を口で受け止めた


「あぁーあぁーなってねぇな」


「そいつはどうだか」


鬼神は真下に気配を感じる


それは道来


「皆同時に行くぞ」


道来の刀が下から鬼神を斬りあげる


その一瞬の隙をつき、一之助、青鬼も渾身の一撃を鬼神にうちこんだ。


ズゴオオオオン


土埃が舞う


ズドオオオオオンーー


「やったか?」しんべえが叫ぶ


ギロリ


「少々効いた」


「さてと」


「いたぶりながら、殺すとしようかねぇ」


「のの、見ていろよ、貴様の仲間とやらの言葉はただの嘘だと言うことを証明しよう」


「ああ、可哀想なのの、お前は今日以後、何も信じられなくなる、お前はただのほら吹きを信じたのだ」


ジロリ


まん丸の真っ黒い二つの瞳が一同を見つめた。


「みんな気をつけろ」道来が叫ぶ


ズバッ


「ぐわあああああっ」青鬼の肩から血が吹き出す


「簡単には殺さんぞ」


ヒョオオオオオオオオオオオオ~~


「さて、絶望劇の始まり 始まり」


鬼神の口が大きく開く


辺りに鬼神の殺気が走る


真堂丸を押しつぶす処刑岩は未だにピクリとも動くことはなかった。


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