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文太と真堂丸   作者: だかずお
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百足百鬼



文太と真堂丸



〜 百足百鬼 〜


その日の夕方、山を下り、僕らは町に着いた。

どちらかと言うと、城下町のような賑わった雰囲気はなく、さびれた様な印象を持つ町であった。

何故だろう、人っ子 一人歩いていない。

暫く町を歩いていると、ようやく人が居る気配のある一軒のお店を見つけ。

「良かったら、ご飯にしませんか?」


「そうだな」


「すみません、お店やってますか?」

店の主人は何かに怯えてるようだった。


「ああ、どうぞ」


「お前さん達、この町のものじゃないだろう?」


「さっき到着したんです」


「こりゃあ、また時期の悪い時に来たもんだ、もう陽がくれた時間に今この町を歩くもんはいねえ」


「どうして、ですか?」


「鎖で繋がれた男見たか?」


「いいえ」


「あそこに繋がれてる男はな、こないだ町に来て、眠らした所を捕えられた、百足百鬼の一員なんだよ」


「百足百鬼? 何ですかそれ?」


「なんだよ、お前さん知らないのか?ここらじゃ、有名な盗賊団、奴らは仲間意識が強い、仲間になにかあろうものならすぐに飛んでくる」


「私達も捕まえたくはなかったが、この町の被害はそりゃあ半端ないものでな、そこの城の殿がついに百足百鬼を捕える方針をうちだして、盗賊団壊滅に乗り出したんだ」


「そして、そこの城に連れていけば後は、引き取ってくれるとのこと、俺たちは、奴が百足百鬼の一員だってことを知りさっそく食べ物に睡眠薬をいれ、寝てるとこをひっとらえたってわけだ、この町もこれ以上は黙っていられないからな」


「それで、今その人は鎖に繋がれてるんですか」


「そうだ、それが今朝の事、明日には城に引き取りに連れて行くんだ」


「仕返しに来るんじゃないかとおそれて、みんな家からでないんですね」


「そういうことだ、普段はもっと賑わってるんだがな」


「んっ? あんさん剣客か?」


「ああ、こんな時にめっぽう強い男でもいてくれて、町を守ってくれたりなんかしたら、救われた気分になるがな」


「あはは、無理無理 そんな馬鹿な夢は見ないことにするか、あんたらこの辺りの事情を知らないなら百足百鬼には絶対に手を出すな」


「注告ありがとうございます」


カラン コロン 下駄の音

その時、店の扉は突如開いた。

ガラッ

ビクッとした、僕と店主

「ありゃあどこも、店がやってなくて参ったわあ、食べれるでごんすか? ここ」


「おどかすねぇ、百足百鬼かと思ったじゃないか」


「なんじゃか?そりゃ」


「お前さんもこの町の人間じゃあないのか、こんな日に来るなんてお前さん達本当、悪運の強いやつらだ」


僕は苦笑いした。

「おっ、他にも客人でごんすか、さっき町について、どこもやってないから困った困った」


「なんか食べさせてくれんかねぇ、もうぺこぺこでごんす」


僕達は酒と食べ物をつまみに話はじめた。

「あんさんがたは旅人でごんすか?」


「あっしも、こないだ 旅出たんですが、もう見るとこ寄るとこ、こんな村ばかり、あっしは死霊の村って呼んで楽しんでますがねぇ」


「そうなんですか、まっ僕らも旅はじめの町がここですけど、でも普段は人で賑わってるんですって」


「じゃあ、その百足なんとかってのせいなんか、はぁついとらん」


「それにしても、あんさんの相方偉い無愛想な人でんな、さっきからあっしの話なーんもきいてないで一人酒だけ飲んでるでごんす」


「あはは」僕は少し困った


「あんさん刀持ってるねえ、あっしも持ってるでごんす、ほらほら 闘ってみる?やめやめ、あっし闘い嫌いなんよ」


真堂丸は全く相手にせず酒を飲んでいた。


「ああ、そんな性格なんね、けっこう、けっこう邪魔しましたよ」

しかし、良く喋る人だ、僕は笑ってしまった。

ふと僕は今日泊まる宿が決まってないことに気がつき

「あっ、そうだ 泊めてもらえそうな、所ありますか?」


「なんだか、お前さん達揃いも揃って、おばかそうで、気に入ったから二階泊まんなよ」

僕は笑った。


「あっしは馬鹿じゃない、けどお言葉に甘えさせてもらいます」


「そういや自己紹介がまだ でござんしたな、あっしの名前は 一之助と申す」


「僕は文太、隣にいるのが真です」

僕は真堂丸の名前をそのまま言うのはやめておいた。

知ってる人がいるとなにかと困ることになるかもしれない。

それにいつ大帝国に居場所が知れるかも分からないからだ。


「そういえば、一之助さんはどうして旅を?」

一瞬、僕は驚いた。その時 今までの明るい顔が嘘のような深刻な表情を浮かべたからだ。

僕は一之助さんの触れてはいけない何かを垣間見た気がした。

「あっ、えっ、すいません なんか」


「うっ、クププ そんな真面目な反応しないでくれよぉ あはは わざと深刻な顔しただけなんでごんすから」


「暇だったから、とでも言っと来ますかなぁ」


ああ、なんだビックリした。


「しかし、旦那その百足なんとかとやらは強いのかい?」


「そりゃ、この辺で昔から有名な盗賊団で、歴史は長い 何ごともなく夜が終わり、明日はやく引き渡しに行ってくれればいいが」


「まっ、あんさんは大丈夫や あっしをただで泊めてくれるなんてお人好し守ってやるからねぇ」


「誰もただとは言ってない、ちゃんとお金はもらうからな」


「そんな、けったいな」

店主は笑い、僕もつられて笑った、真堂丸は表情変えず一人酒を飲んでいた。

こうして賑やかな夕食をすませ

その日の夜

何事も起こる事はなかった。

ただ、僕は眠ることが出来ずじまいでいた。

なぜなら、百足百鬼の一員の捕まってる男が奇声をあげていたからだ。


「この町は壊滅だ、皆殺しだ 、百足百鬼が黙っていない」


「最後の一日をせいぜい楽しく暮らすんだな」



朝方

「まったく、うるさい奴やなぁ、全然寝られんかったわ、まだまだあっしは眠りにつくとしますな」

「僕も少し寝よう」

「あれっ?真堂丸」

真堂丸はどこかに出掛けたよう。


「あんさん、あの手の男は図太いからどこでも、寝られちゃうのよ、あっ言ってやった あはは、あっしらみたいのは繊細で眠れないでごんす、さてもう一眠り お休み」

あはは、朝から良く喋る一之助さん。

それにしても何処に行ったんだ?

まあいいや僕も、もう一眠りしよう。



外では、今日これから百足百鬼の一員を城に連れて行く為に村の屈強な男達十人が集まり、馬車の中に鎖を手足につけたままの男を乗せ、今まさに出発するところだった。

真堂丸はそこに立っていた。

鎖に手足を拘束された男はすれ違いざまに真堂丸を見て

「おい、これとってくれないか そうしたら後で斬らないでやるよ」

なにも返事はしなかった。


「お前も強いね、刀を握る輩は2つの種類だけ、弱いか、強いか、俺は目を見て決める」


「貴様なにを喋ってやがる、はやく乗れ」


男を乗せ馬車は動き出し

真堂丸は走りゆく馬車の後ろ姿をじっと見つめていた。


「一 二 さん・・・十 貴様らの顔は覚えたぞ」

その頃、町にはいつもの活気が戻っていた。

町にはこんな会話がひろがる。

「怖かった 昨日の夜のあの男の叫び声不気味だったわ」


「何にも起こらなきゃいいけど、でも城の殿様も勇気あるお方よね、百足百鬼討伐政策に乗り出すなんて」


「ええ、本当」



その頃、文太の所では。

あまりの、一之助さんのイビキのうるささに僕は目を覚ました、あはは寝てても元気な人、僕は笑った。


「僕も外に出てみよう」

町は朝から活気があった、昨日外に出られなかった分か、子供も沢山外ではしゃいでいる。

子供を見ると、お世話になった平八郎さんのところの喜一を思い出す。

元気かなぁ。

「あっ、真堂丸 何してたの?」


「鎖に繋がれた男を見てた」


「やっぱり強そうなの?」


「あいつが、いっぱしの戦闘員であるならば骨のある盗賊団ってことになる」


「そんなぁ、じゃあもし?」


「ああ、町に報復に来た場合、町の人間は皆殺しにされるだろう」


僕は息を飲んだ。

「報復に来るのかなぁ?」


「さあな」



その頃、馬車は止まっていた。

目の前に人間の集団を見たからだ

「何だ貴様らは?」


「探しましたよ 頭領」


「あんたが帰らねぇもんだから、びっくりしたぜ」


「そっ、そんなぁ お前が百足百鬼の、ただの一員じゃなかったのか・・・」


「この鎖外してくんねぇか、そしたら そうだなぁ 町の人間半分で勘弁してやるよ」

町の男は震えあがった、馬車のまわりに20程の人間が武器を持ち立っているからだ。

もう、鎖を外す以外に道はなかった。

町の男達の手足は震えはじめた。

そして自分達の命はここまでだと知り涙した。

今我々の目の前に立つこいつらは残忍、残酷の盗賊団 百足百鬼


せめて、この百足百鬼の頭だけでも。

一人の男は武器を手にし「やああっ」襲いかかった。


「全く話の分からん奴らだよ」

その場に動く町の人間は、誰一人としてもう残っていなかった。


「さて、頭領どうしましょうか?」


「しかし、いけすかねぇ野郎だな、あの城の殿とやらは、俺たちを潰す気だったらしいぜ」


「じゃあ、さっさとあの城に乗り込むか?」


「行こうぜ、戦闘だ」


「おい待て、お前ら まずは順番があるだろう、先に俺をこんな目に合わした、あの町を見せしめとして壊滅させてからだろう」


「おおーーーっ」

そう捕まっていた奴こそが百足百鬼の頭だったのだ。

その頃、僕らは町を散歩して朝食を食べていた

「ここの名物、三色団子ですって美味しいですよ」

パクッ ムシャ ムシャ


「そうでしょう、このお茶も美味しいんですよ」


「あー良い香り」


ズズズッ

「ああ、美味しい」


真堂丸は突然静かにつぶやいた

「来た」


「おい、町人ども動くな」

団子屋の主人は手に持つ御盆を落っことし「もっ、もう終わりだ 皆殺しにされる」


「さて、良く聞け!この町は今日で終わりだ 二度とこんな馬鹿をしないように見せしめになってもらうことにした」


町人達はあまりの恐怖に悲鳴をあげ、中には立ちすくむもの、頭を抱え倒れこむ者、神に祈る者 、泣き出す者、あまりの恐怖に笑い出す者まで。


「さて、暴れようじゃないか」


「絶望とやらを教えてやるぜ」


百足百鬼の面々は刀を抜きはじめ、今町を襲いかかろうとしている

この時、真堂丸は静かに相手を見つめていた。




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