旅の序章
文太と真堂丸
〜 旅の序章 〜
チュンチュン チュン
鳥のさえずり声で目を覚ますと、そこは森の中、朝の始まりの到来。
何が待ち受けるか分からない僕と真堂丸の国放浪の旅は始まっている。
再び村を出た僕には、もう最初の頃のような不安は残されていなかった。
何故なら、僕には今、信頼出来る友がいたから。
今は旅を楽しむ余裕すらあった。
僕等は村を出て随分歩いている。
そこで、目にする美しい風景
森の木々達
目にしたことのなかった動物達
優しい自然の音色
肌に触れる空気の感触
毎日姿を変える空の絵模様
何度も何度も、ここ最近思う事だが世界が毎日新しく見えることを改めて実感した。
まるで、毎瞬別の世界にいる様な感動的な感覚が僕を包む。
「ああ、空気が美味しいですね、なんだか、これからどんな人や、風景に出会うのか楽しみで仕方ないですよ」
真堂丸も既に起きていて刀を磨いている。
「ああ、そうだな」
「俺はお前に出会って世界がまるで違うように見えることに驚いた」
「こんなにも目に見えるものが美しかったことを知らなかった、いつだって世界は見てるそいつの心次第で、景色も、色も、形も、変わってしまうものなんだな」
僕は頷く。
「人々が目の前にある、こんなにも美しい世界に本当に気がついたら、争いの無意味さに気がつくと思います、村を出ていろんな人間を見て気づきました、きっと彼らの中にある恐れとか色んなものが、世界を曇らせてみせていて、この当たり前にある世界を歪ませ知覚出来ないでいるんですね」
ぼくは大帝国が行う、人々を恐怖と力で支配するやり方には賛成出来なかった。
「俺も随分とこの国を歩いた、しかしまだまだ、行ったことのない所ばかりだ。
お前の村のような所もあれば、悲惨な村もある、この国の本当の状況を知ることになる。嫌なものを見ることにもなるけど大丈夫か?」
「はい、真堂丸と一緒なら何もこわくないですよ」
僕は微笑んだ。
「そうか」
真堂丸も笑う。
大帝国の城では
「秀峰さん、最高大頭帰って参りました」
鬼道千閣は怒り狂っていた。
俺の城に乗り込んだ、輩がいたらしいな、それでこのありさまか、どこのどいつだ?」
「はっ、真堂丸という男であります」
「真堂丸」一時期国中に名を広げたあの男、あいつが。
「で、どれくらいの人間を集めこの城をこんなにした?」
「ええと、私の知る所によると三人か四人だったかと」
その兵の首は斬り落とされていた。
「たかだか、そんな人数でこの有様か」
「おい、この男を国中にいる我々の部下に伝えろ 見つけたら殺せとな」
「はっ、はい すぐに」
「こんな日は、一山に斬り落とされた腕がうずく、俺に歯向かうなど、何者もだんじて許さん、この国は俺のものだ」
鬼道千閣のすぐ後ろには、常に彼の命を守る護衛がついている。
千閣はあらゆる奇襲にも備えていた。
なぜなら、最初から誰一人、
仲間ですらも信頼していなかったからだ。
その護衛それは白い刃の一員、幹部の男ソウファと呼ばれる男だった。
「ソウファよ、こないだ支配下においたあの町の奴隷どもを私の新しい城つくりに使えと兵に伝えよ、女、子供も朝から夜まで働かせろ、こんな城 私がもう住む価値もない」
「御意」
雷獣は廊下を歩いていた。
横に立つ気配をすぐさま感じ立ち止まる。
「おや、雷獣さん」
「何だ秀峰」
「解せないことがありましてね」
「なぜあんたがいながら、真堂丸があの小僧を連れて逃げられたか?それに私が殺しかけていたもう一人の侵入者の死体も見つからない、あの時、私のとどめの攻撃止める必要性ありましたか?」
秀峰は雷獣の目を覗き込むように見つめ不気味に微笑んだ。
「まさか、真堂丸と昔からの付き合いと言っていましたが、仲間なんじゃあないですよね?」
「俺とあいつがか?笑わせるな、あのネズミは殺す価値もねえから、ほっておいた、牢は俺が便所にでも行った時、奴が来ちまって逃げられていた、そんだけの話だ」
雷獣は再び歩きはじめた。
雷獣の背中越しから秀峰はつけ加えるように
「そうそう、馬が二頭消えていましてね、奴らが逃げる時それを使って逃げたんですが、あそこには鍵がかかっていた。ある兵にきいたら、あなたがあけたとのこと ふふふ 大した偶然ですね」
秀峰は不気味に笑っている
「何者も大帝国にはむかう者は皆殺しですよ 雷獣さん 忘れないように」
雷獣は真っ直ぐ長く続く廊下を歩きはじめた。
真堂丸の名は大帝国の中にも知れ渡り、命を狙う手配はできたが、文太、太一、道来に関しては名前、姿も分からず手配には至らないですんでいた。
骸は城の庭に立ち、あの日のあの男、そう真堂丸を思い恋がれている
「殺りてぇ、あいつと闘いてぇ、待ち切れねぇな」
この男は国の支配など最初からどうでもよかった、骸の幹部加入の理由、それは鬼道の一言であった。
「大帝国の幹部になったら、強い奴と闘わせてやる」
その時に気がついたことがあった。
幹部は国中から選りすぐり選ばれた強き者達。
実は幹部どうし、会う機会もあまりなく普段は白い姿で全身を覆われてるため何者かは分からない。
骸ですら、今城に居る幹部以外の正体は知らないでいたのだ。
「こいつらも、斬りたい」
骸は飢えていた、強き者に飢えていた。
ちょうど幹部斬りを始めようと思っていた矢先、真堂丸という男に出会ったのだ。
その時、突然の強い存在の空気を感じ目を向けた。
「ソウファか」
「骸、久しぶりだな」
「すぐに大頭のもとにもどらなきゃいけないが、ちょっとお前を見たくてな」
「追うんだろ?真堂丸という男を」
「ああ」
「強いか?」
「じゃなきゃ興味はねえよ」
「ふふっ それなら、その男はもう逃げられないな」
「じゃあな、骸よ、おっとそれから」
「俺にむき出しの殺気をぶつけるのはやめろよ」
骸はほくそ笑む
あいつも必ず俺が斬る。
場所は変わり文太達の所
「真堂丸 見てよこの景色」
その山の上から見る景色は格別だった、辺り一帯が見渡せる
「みてください富士の山、ここから見るあの山も最高ですね」
「文太あそこを見ろ」
「あっ、あれは町だ」
「行くか」
「はいっ」
旅を始めて最初の町、心踊る。
カラン カラン 下駄を鳴らし男は歩いていた
「この町も死霊に取り憑かれてるような町だ、ああいっけねえでごんす、こんな町に呼ばれるのは」
町の外、両手、両足を鎖で繋がれた男がいた。
「そこのあんた、俺をここから逃がしてくれよ」
「随分ひでぇ状態なこってぇ、あいにくそういうのあんま興味ないんでごんすよ、あんた罪人だろう?もし逃がしたら何してくれるでごんすかねぇ?」
「お前だけは、斬らないでやろう」
「ひゃーおっかねえ、やだやだ まあなんとか自分でするこってえね、そんじゃあ」
カラン コロンッ カラン
「あの野郎強いな」
「おいっ、村人ども俺をこんなところに繋ぎやがって、覚えとけよ、放たれたらどうなるか、覚悟しておけ」
そう、この町こそ僕らを待ち受ける
最初の町だった。
何かが起こりそう、そんな予感。
真堂丸はこの時なにかを感じとっていたのだろうか? 山の下に広がるその町を静かに見下ろしていた。




