旅立ち
文太と真堂丸
〜 旅立ち 〜
「行っちゃいましたね」
「ああ」
やはり、暫らく一緒にいた二人がいなくなってしまったのは寂しく感じた。
でも、またきっと会える。
その時を楽しみに僕達は僕等の人生を歩もう。
文太の母親が近づいて来る
「ほらっ、文太、真ちゃんご飯よ」
「あらっ、道来さんに太一ちゃんは」
もう、こんなふうに呼ぶオッカア
恥ずかしいような、僕は苦笑い。
ちなみに何故道来さんだけ「さん」呼ばわりなのか、母は少し道来さんが気にいっていたらしい。
ちょっと好みだった?からなのか。
「あら?二人は?」
「おっかあ、話がある みんなを呼んで」
「呼んでって、そんな重要なことかい?みんな夕食時だよ」
「みんなが喜ぶ報せがあるんだ」
僕は一刻もはやく、知らせたくうずうずしていた。
そして、村の中心に人が集まってきた。全員で五十くらいの小さな村すぐにみな集まり。
「どうした、文ちゃん」
「皆さん、きいて下さい、知らせたい事があるんです。もうこの村はお金や米を納める必要はなくなりました」
村の大人達はざわめきはじめた
「本当かい?」
「でもどうして?」
「僕の友、太一さん、道来さんのおかげです」
僕は事情を話した。
村人達は嬉しくて泣く者も
「もう、いいんだ払わないで」喜び抱き合うものも。
僕は村の人達のその姿を見てまた心の中、二人に感謝した。
そして村人達も
「二人は行ってしまったのか?」
「礼くらい言わさせてくれれば」
村中の人達もまた心から二人に感謝していた。
「必ずまた、連れて来てくれな」
「このご恩いつか必ず」
真堂丸はそんな村人達の様子を見て嬉しそうに微笑んでいた。
それから、僕らは朝から晩まで畑を耕したり、野菜を育てたり、ご飯を食べ、村の子供達と遊んだり。
酒を酌み交わし、話合い、当たり前の生活をして過ごした。
当たり前の日々がこんなに幸せで、ありがたかったこと僕は忘れていた。
本当に素敵な日々だった。
ある夜、夕食をすませ、村の丘の上で僕らは星を眺めていた。
「文太この村の人々は本当に心優しい人達だ、お前の性格の根源を見た気がする」
「そうですかぁ、でも本当良い人達です、ここでは村中の人達が家族なんです、誰かが困ってたら村中で助け合います」
「世界もそんなふうになったら良いな」真堂丸は刀を置き空を見上げた。
「いつまでも、こうしていたいです、普通に真堂丸と村の人達と暮らして」
真堂丸は微笑んだ
「それは、良いなあ、それは最高だなぁ」
綺麗な星空
幸せな日々
闘いも争いごともなく、毎日笑いあい、平和な日々を友と家族のような村人達と過ごした。
太一さん達が去ってから、もう一月になる頃
いつものように夕食を食べ終えて外で星を眺めていた。
今日も綺麗な星空だった、僕の昔から大好きな景色。
暫らく黙って星を眺めていた。
そんな時、真堂丸が声をだし話はじめた。
「文太、俺はそろそろ旅立とうと思う」
「えっ、そんな 居てくださいよ、もう飽きましたか?」
「正直いつまでも、ここに居たい。だがな、必ず俺を狙って大帝国の奴らはここを嗅ぎつける、もしここに俺が居たら必ず村人を巻き込むことになる。きっとあいつらはお前一人を狙い探し出しここまでくることはない、お前はここで静かに暮らすのが一番良いさ」
文太は黙り込んだ
「世話になったな文太 色々と救われた、礼を言う 」
「これから、どうするんです?」
「国を巡り、歩いてまわろうかと思う、せっかく生きながらえた命 なにか出来ることがあるかもしれない、この国にはこの村のような所が沢山あるみたいだしな」
「そうだ、文太お前の持ってた、太一に貰った黒の書とかいうのをくれないか?」
「あの、一筋縄で解決出来ない依頼がのってるやつですか、どうするんです?」
「旅をしながら、それで稼ぎつつ、なにか出来ることがあるか見てみようと思う」
「あのう」
真堂丸は文太を見る
「良かったら、僕もその旅、同行させて貰えませんか?」
真堂丸は驚き
「良いのか?この村に残らなくて」
「せっかくの機会です、僕も当てのない旅なんて憧れてたんです」
「ああ、構わん」
真堂丸は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「じゃあ、一緒に行きましょう」
出発は明日
突然決まった、二人の放浪の旅
行き先に何が待つか、またどんな人々と出会い、どんな敵、困難に遭遇するかまったく未知数な旅。
一人村をでて旅立った最初の頃
僕は再び村をでる
今度は二人で一緒に……
翌朝、オッカアに事情を説明した。
猛反対されると思った、泣かれると思った。
だが反応は意外なものだった。
「真ちゃんに迷惑かけるんじゃないよ、自分が決めたことなんだね?」
「うん、僕の望む道」
母はたくましく育って帰ってきた息子の姿が素直に嬉しかった。
最初の頃と顔つきが変わった息子の姿に誰よりもはやく気がついていたのは、他ならぬ母親だった。
母は言葉に出さなくても、すぐに子の心に気づく。
それは、文太が自分で決めたこと、もう立派な大人。私にはもう止めることは出来ない、分かっていた。
「行って来なさい、身体に気をつけるんだよ」
僕の目は急にうるんだ、泣いてしまいそうになったが、この別れの時はしみったれたのは嫌だった。
この時、母に泣かれなくて僕は本当に良かったと思う。
「村のみんな、お世話になりました」
「本当にありがとう 命を救われた」 真堂丸は頭を下げる。
村人は急に泣きはじめた、真堂丸に遊んでもらった子供達
「真兄、行っちゃいや」
「文太ちゃん 寂しくなるよぉ」
僕は堪え切れない、涙を必死に耐える
真堂丸も村の人達との別れが寂しそうに見えた。
正直生きて帰れるか、再び戻ってこれるかは分からなかったから。
きっと母もそれは知っていた、感じていたはずだ。
もし一度泣いたら、泣きくずれてしまいそうで。
そんな時
母の顔を見た、涙せず微笑んでいた。
こんな強い母だと生まれて初めて知った。
それを見て 僕も涙を拭く
「行こう、真堂丸」
「ああ」
「ありがとう、さようなら」
「また、必ず来いよ」
いつまでも、村人達の声はやむことはなかった。
丘の上で村を見渡せる程高い所に来ても、まだ声がきこえる、まだ広場に立つ人々の姿が見えた。
僕はこの時、ようやく大粒の涙を流し泣いた、涙が止まらない、とめどなく涙がこぼれはじめた。
さようなら、ここの自然
さようなら 故郷
さようなら 村の優しい人達
さようなら おっかあ
必ずまた帰るから
必ず。
「文太 本当に良かったのか?」
「はい」
村では
文太の母の肩を作蔵さんが叩いた
「もう文太 行ったよ」
その瞬間、はじめて文太の母は泣き崩れた。
村人達はそっと優しく手をさしのべていた。
新たな僕らの旅はこうして幕を上げる。




