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夜の来訪者。  作者: now here man
第一章 夜の来訪者

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8/11

第八夜

「お主とわしは、同じ匂いがする。」

湯気の向こう。

エリナの瞳は、俺をただ見つめている。


ストーブの上の鉄鍋が沸騰する音だけが聞こえる。


俺は何も言わず、ストーブの揺れる炎を見つめる。


炎の赤が、痛い記憶へと俺を誘う。

見捨てられた。

その感情は全てを覆い尽くす。

見渡す限り一面の雪の中。

俺たちは退路を絶たれた。


敗軍の兵に、冷たい風が吹きつける。

残されたわずかな仲間と共にただ北を目指す、逃避行。

一人、また一人脱落して行くもの。

死にきれずに苦しむ仲間の掠れた声。

今も手に残る感触。


俺は震える手で、ウイスキーの瓶を掴む。

貪る様に煽ったそれは、俺を罰する様に喉を焼く。


エリナはただ黙って俺を見ていた。

俺の過去を見透かす様に。


ゆっくりと立ち上がったエリナは、足音もなく俺に近づく。


黒い髪がランプの光を受けて揺れる。


俺はただ見つめている。


その赤い唇から溢れた言葉は


「共に永遠を生きてみないか。」


細く冷たい指先が、俺の首筋に触れる。


ゾクリとする感覚に、俺は逆らうことができない。


聞こえるのは俺の心臓の鼓動と乱れた呼吸。


激しい雪が全てを覆い尽くした。

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