美羽と六
――『私立ミライ学園 レイト中学校・高等学校』
昼下がりの時間帯にて、チャイム音が鳴り響いた後、生徒たちは一斉に帰宅や部活動に向かおうと、通学路を一斉に歩き出しています……そんな中で中等部の2-Aの教室にて、クラスメイトのみんなが次々と教室を出ていき、残っている人が、仲が良いグループ同士の会話声がハッキリと聞こえるようになった今、私はようやく解放されたかのように、机に向かってうつ伏せになっています……。
あっ……名前がまだだった……! えっと……『永瀬 美羽』です……今日は苦手な授業があっていつもよりもかなり疲れを感じています……。
(……ふぅ……ようやく終わった……今日の国語の授業、班で研究するなんてプレッシャーだよぉ~……)
ようやく起き上がり、スクールバッグを持って、教室を出ようとしました……すると、担任の先生が私に話しかけて来ました……。
「悪い、美羽……今日ちょっと六と一緒に職員室へ来てくれないか?」
「は……はい……」
私は教室を出て、ネズミの獣人の『夏目 六』先輩と急いで合流しました……そして、職員室の扉を開けた時、私は先生達にはっきり聞こえるぐらいの声で、担任の先生に呼びかけました……。
「あっ、あああああああの、中等部の2年A組の永瀬です……高等部の1年C組の六先輩も……呼んできました……」
「ああ、六も来たんだな。入ってくれ~」
先生に言われるがままに、私達は職員室の扉をくぐり抜けました……丈夫な机の上に端末が一つ、事務椅子に座っている先生の隣には、高等部の1年A組の『関 杏音』さんも一緒にいました……杏音さんと一緒にいると、緊張して変な声が出てしまいそうにソワソワしてしまいます……私と杏音さんの仲が悪いって訳ではありませんが……六先輩と杏音さんとは相性が悪いらしくて……私は『大事になりませんように』ってただ、祈るしかありませんでした……。
「あっ……ああああああ杏音さん……こここここここここんにちは……」
「美羽……? ってことは……あのネズミ野郎も……」
「フン! お前がついでに来るって分かってたら、速攻に帰ってたな!」
「はぁ?! 俺にそんなに会いたくねぇのかよ!! それに、ついでなのはネズミ野郎の方じゃねぇのか~?」
そして、案の定二人は互いに睨み合っていて場の空気が良くありません……先生が口に拳を当てて、喉を鳴らしたので、大事には至りませんでした……二人の喧嘩が静まった時、先生はこう話します……。
「……今日呼び出したのは、俺からお願いがあってな……この資料をお前たちが言ってた、古代タイムマシンの事を調べたがっている白い服の戦士さんに渡してきてくれるかな……本来急ぎの用事で先生が行く予定だったんだけど、重大会議で先生達全員ここにいないといけないから……」
先生は資料が入っているファイルを私達に見せてきました……この資料をよく見ると、この前学校に落ちてきた隕石の欠片にそっくりな気がします……。
「これって……学校で落ちてたって言ってたあの隕石の……? わ……わかりました……」
「悪い先生……今日バイトあっから……」
「えっと、んじゃあ……私と六先輩が行ってきます……」
杏音さんはバイトがある為、私達よりも先に職員室を出ました……私は戦士の一人、浩司さんと同行していた、白いお洋服の女戦士さんはどこにいるか尋ねてみると――
「その白いお洋服の戦士さんはどこにいるんですか……?」
「最近、『レイトミライフェスティバル3020』に行ってるみたいだ……もし、急ぎじゃなければフューチャーファイターズの拠点に連絡すればいいよ。美羽は広いところはあまり得意じゃないだろ?」
「いいえ! オレ達は直接行ってきます……! フューチャーファイターズに声を掛ける訳には……」
「先生……実はこの前……六先輩がフューチャーファイターズの人を困らせてしまったので……連絡しづらい状況なんです……私もすごく緊張してしまいますし、直接会いに行くぐらいなら……気分転換になるかもしれませんし……」
「そっか……無理しないようにな。それと六、くれぐれも美羽や周りの人たちを困らせるような事をするんじゃないぞ……それじゃあ、よろしく頼む」
――と言った感じで、私は先生から渡された資料を持って、六先輩と一緒に『レイトミライフェスティバル3020』の会場へと行くこととなりました。
電車に揺られながらも、リーフ区に到着して、そこから会場へと歩いて向かっていきます……すると、偶然にも杏音さんを見つけました……ビクっとして振り向くと、杏音さんも同時に足を止めました……そして、再び振り向くとまた足を止める……まるで、だるまさんがころんだみたいになりながら、博覧会に向かいました……六先輩が私の耳元へ囁きながら話します……。
「なんであいつ、オレ達の後をつけてんだ……?」
「杏音さんのバイト先が、博覧会に近いかも知れませんし……」
こんな感じで言ったら、「そうか?」って杏音さんの事を睨んでいました……すると、杏音さんは髪をいじりながら止まると、六先輩が大声で――
「おい! なんで俺達についてきてんだ! ストーカー行為か?」
「はぁ? なんでネズミ野郎なんか、付きまとわなきゃなんねぇんだ!! 俺のバ先そっち方面だからな! 先に行かせてもらうぜ!」
「お、お先にどうぞ……な、何だかすみません……」
「もう、お前は何も悪くねぇのに謝んなつってんだろ! んじゃ!」
杏音さんは私を横切りながら、こわばった表情で小走りして行きました……私の頭の上で腕を組んでいる六先輩に仲良くするように話しました……。
「六先輩……杏音さんと仲良くしてくださいよ……私は喧嘩は苦手なので……」
「あのヤンキー女なんかもう会うことはねぇと思うから! もし、また出会ったら今日一日、裏声で話してやってもいいぜ!」
六先輩は得意げにしながら、鼻の穴を大きくしながら呼吸をしました……でも、杏音さんは入口方面に向かって行ったような……。
しばらく歩くと、博覧会の入口へと入っていきます……私と六先輩はスタッフさんに先生の代役の証明書を見せて、中に入って行きました……それにしても、結構広いし、よくできていますね……まだ開催されていないのに……でも、こんな広い場所なのに何処から探しましょう……?! 変に探すと一日が無駄になってしまいますので、細かく探さないと……そんなことを考えていたら、ドローンちゃんとAIロボットちゃんと浮島人らしき人を連れた白いお洋服の人が……私はすぐに向かい、急いで資料を渡しに行きました……!
「あっ……あの……こ、こんにちは!!」
「あら……? あなたは確か、レイト学園の生徒よね……どうしてここにいるのかしら……?」
「あわわわわ……! せ、戦士さん……今日は……えっと……その……」
「ああ、んんっと……美羽と……タンキーネズミーか!」
「あ?! タンキーネズミーだと?! なんて態度だけがデカいAIポンコツロボットなんだ!」
「なんだとゴラァ!! 俺様をポンコツ扱いなんていい度胸だ!! いいぜ! 相手になって――」
「やめなさーーーい!! 話は戻すけど、美羽……ここに来たってことは隕石の事について何か進展があったのね?」
「は……はい……こちらを白いお洋服の戦士さんにと、歴史の先生から……」
私は白いお洋服の戦士さんに、スクールバッグを開いて取り出した、資料が入ったファイルを渡しました……戦士さんはあまり表情を動かさずに手を差し伸べました……。
「ありがとう……美羽……」
も、もしかして……感謝されている……? 戦士さんは両手で資料をじっくりと見つめていました……その間、六先輩が甲高い声を短く大きな声で発していました……あれって……杏音さん……?!
「!?」
「あぁ……?! てめぇ、何でここに?!」
「それはこっちのセリフだ!! 俺はバイトでここに来ただけだ! ネズミ野郎こそ、何でここにいんだ!!」
「そ、それは……古代タイムマシンを調べたがってる戦士に資料を届ける為だ!」
六先輩は裏声を発しながら、汗を流していました……すると、杏音さんは首を傾げながら、困り顔で話していました……。
「……? 気持ち悪い声になってるな……なんでだよ……?」
「六先輩……「もし、また出会ったら今日一日、裏声で話してやってもいいぜ!」なんて、意地を張って言うからですよ~……」
「なるほどな……こいつとんでもねぇバカだな……」
AIロボットちゃんは六先輩の事を笑い交じりで呆れていました……確かに六先輩は短気なんですが、有言実行を第一にしている方なので、約束を破るような人じゃないってことは確かなんです……。
すると、浮島人のお姉さんが、杏音さんに質問を問いかけていました……。
「てか、アンタ……ここでバイトしてたの……? イリルさんから聞いたんだけど~博覧会に無関心だったのに~?」
「ああ、俺の叔父がこの博覧会の建設監督をしててな……スタッフのバイトを募集してるって言いだしてきてさ……俺も都会暮らしが長続き出来るなら、なんだってするよっつったらこうなった……でも、案外と楽しいもんだぜ!」
「建設監督って……確か『ダイヤモンド重工』の……お兄ちゃんが言ってた……」
「その通りだ! 今ちょうど、こっちに向かっている所だってさ、戦士達に挨拶してぇって聞かねえから……」
杏音さんの言葉の通り、『レイトミライフェスティバル3020』の建設を担当している『ダイヤモンド重工』の建設監督さんが、ここに来るみたいです……しかし……イリルさん……という方はまだ資料の方を見つめていました……何か思い当たる事でもあるんでしょうか……。




