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宿屋のメリー告白大作戦  作者: ミツキ
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回答者・ウィービー家


どうも。現場のメリーです。

宿屋裏口、家庭菜園の隙間から庭を覗き見中です。

なおかつ混乱中です。




まずは目に優しいものから。


弟のダニエル君次男6才。

ベンチでおねんね中です。お腹の上には猫のバニラさん。


弟のカルロ君長男11才。

ガーデンテーブルでお勉強中です。

開いたノートの上には猫のカカオさんが寝転がって撫でたまえポーズ。


隣人医師、エメリヒさんが優しく勉強を教えてくれているようです。


隣人友人、レイラさんはその隣で本を読みながらチャロさん(いつの間に!)をゆったりと片手で撫でています。


よいですねぇ。

みなさんの足元にそよぐ花壇の花々が

額縁となって、美しい絵画ようです。


次に、目に優しくないもの。


お母様。

アンジェラ・ウィービー(年齢非公開)

ムチ、振り上げ中。


お父様。

ロバート・ウィービー45才

ムチ、打たれ中。



何がどうした。





__回答者・ウィービー家



教会に養子縁組を相談に来た両親は、

院長にまず最初、こう聞かれたそうです。


『ご希望はありますか?』


性別は?年齢は?肌の色や髪色は?


父は、料理の注文を取るような質問に、帰りたくなったそうです。


母は、あらかじめ調べて心の準備はしていたと。


両親に似た特徴を希望される方は多く、

それは、家族だけでなく周囲も抵抗無く受け入れる為に、必要な条項だそうです。


『奥様に今後妊娠の可能性はありますか?』


これも、予想していた質問だそうです。

子どもを事故や病気で失ってしまった、あるいは夫婦のどちらかに原因があって子を宿せなかった場合。


養子を望む理由はそれぞれですが、


一度養子縁組をした後に、実子を授かると、教会に戻される子が多いのも事実でした。


頭では理解していた父ですが、答えようとした母が言葉を詰まらせた瞬間、

「帰ります!」と言いかけたとか。


院長室の窓の外から、けたたましい笑い声が響いたのはその時だったそうです。


「それがメリーだったのよ。この人ったら、『今笑った子がうちの子だっ!』って院長室の窓から飛び出してしまって」


「おや、では面会もせずに?」


「笑い声を聞いた瞬間、というわけではないのよ。かなり長い間爆笑していたから、変な間が空いてねぇ。

でも院長さまがもう一度同じ質問をしようとしたら、また爆笑でしょ?

私、笑ってしまって」


「でもその時のお姉ちゃんは、喋っちゃダメって言われてたのでしょう?」


「そうねダニエル。私も昨日レイラに聞くまで知らなかったわ。でもそうね。あの笑い声は男の子と女の子、

どっちだろうなと思って聞こうとしたら

院長室の窓の外は墓場でしょう?

『人間ですか?』って聞いちゃったわ」


「メリーあなた、墓場で何やってたの?」


それはですね、レイラさん。

野犬の兄さんの渾身のギャグがツボにはまっちゃってて。


「私達は夫婦揃って髪も目も茶色でしょう?案内される予定の部屋は似たような髪の男の赤ちゃんや、ダニエルより小さな男の子が待ってたのだけどね」


「僕なら墓場で犬を相手に爆笑をしている幼女に話しかけれないな。親父さんはすごいですね」


私もダニエル君が墓場で笑ってたら

声をかけにくいです。


「メリーも大変だったと思うわよ?

二階の窓から飛び降りた髭もじゃ大男に突然抱き上げられて、『お前は今日からウィービーの家族だぁぁ!』って叫ばれてたから」


記憶にある限り、人生初のギャン泣きしましたです、はい。


「院長は青ざめるし、シスター達は狼狽えてしまって、この人は大泣きしてる女の子片手に二階までよじ登るしで。

でもねぇ、仰け反りながら泣くこの子を見たら、

あぁ、この人に娘をまかせちゃいけないわって。気がついたら抱きしめてたわ」


全力でしがみつきました。

その後、興奮のあまり熱を出して寝込みました。


「そのまま無理矢理に連れ帰ったからねぇ。攫ったも同然ちゃ同然だわねぇ」


「では書類は?」


「書面を交わす前の出来事だし、

面会を申し込む際に名乗りはしたけど

田舎訛りが聞き取れなかったのか

ウェルベスさんってずっと呼ばれてたわね」


あのぉ。そろそろぉ、


「兄さん、ガントレ子爵に教会がウィービーさんの情報を売る線は消えたんじゃない?」


「まぁね。逆に、領主様に養子縁組をした書類を即日に提出していたことが

良かったかな。

他領から養子縁組をする際は、必ずその子どもに捜索願いが出されてないか調べるからね。

ガントレ子爵夫人が誘拐されたと言い張っても、各領地の公式資料は覆せないよ」


あのぉ。あのぉ。お母様。


「なぁにメリーちゃん?」


お父様が泣き止んでくれないのですが。

そして、メリーお年頃になったので、お膝の上恥ずかしいのです。


「お姉ちゃん、ムチの事は聞いてあげないの?」


ダニエル君、事実を知りたい好奇心より、見無かった事にしたい切望が上回ったので今記憶を捏造中なのですよ。

むしろ教育に悪いので一緒に捏造しません?


「姉さん、記憶を捏造してたのは父さんだよ。養子縁組したことを完全に忘れてて、母さんにお仕置きされてたんだ」


カルロ君、そんなまさか。


「メ、メ、メリー、じ、実はお前にっ、隠していたんだがっ、お前と父さんっ、血が繋がってなかったんだよぉぉぉ!」


「あんたがその調子だから(ビシッ)

昨日からっ(バシッ)話が進まないのでしょうが!」


あうっ!お母様、私にもはしっこが当たってます!


「お兄ちゃん。僕はこのノリに着いていけないあまりに自分が養子じゃないかとすら疑う時があるよ」

「心配するな。僕も通った道だよ」



「メ、メ、メリー!産んであげれなくてごめんなぁ!俺の娘よぉぉぉ!」


あうっ!あうっ!痛いってか痒い!

痛痒い!あうぅぅ!








……………おまけ……………



~門番フィリップ宅~


「あ、新しいスカーフを買ってくれるって言うから、お出かけしてあげるんだからね!お昼寝我慢したんだからね!ちゃんと可愛い柄を選んでよね!」ニマニマ


「お?自分で選びたいなら小遣いやるぞ?一人で行くか?」ニヤニヤ


「父さんのシャツは私が選ぶからいいの!」父の腕ギュウ


「そうかそうか!父さん今日何でも買っちゃうぞ~わぁっはっはっ!」



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