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宿屋のメリー告白大作戦  作者: ミツキ
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回答者・ブルーノ

ドウモ。ワタシ、メリー。ヨウセイナノヨ。

コワクナイヨ。コワクナインダヨ~。



_回答者・ブルーノ




ヨウセイナノヨ。コワクナインダヨ~。


「メリー、メリー。やめてくれ。

スカートひらひらの変な舞はやめてくれ。僕は妖精じゃないし、通りすがりの奇術師でもないし、一発屋の吟遊詩人でもない!から期待した目で見ないでくれ!」


え?それ以外に何が?


「ただの幽霊だよ!!」


………はぁ。


「っ!君はいつもそうだ!どうしてそこでがっかりするんだよ!僕が悪いのか?」


多分?


「興味を持ちなさい。もう驚いて欲しいとか、黄色悲鳴とか求めないから」


あぁ、じゃぁ、


「何?」


ちょっと出没場所変えてもらっていいですか?

ここは私とオオカミさん達との逢引場所なんで。

私、今とっても、もふもふに飢えていてですね。もふりたいのです。


「オオカミ達ならもう寝床に帰っていったよ。はいメリー行っちゃダメ。

オオカミの群れの中で寝たいとかダメだからねメリー」


どうしてですか!楽園ですよ!


「メリーの希望通りオオカミの群れの中で今晩過ごして、オオカミの臭いをべったりつけたまま村に帰って、

家畜達を混乱させたいのか?」


くっ。

上半身フリル&フリル、下半身ぴっちりズボンと派手派手しいマント。

こんな、変態の人に正論で言い負かされるとは。ふー。


「負かされるって言ってる割には前半は僕をバカにしてるよね」


後半でも変態と呼んでますよ。はっ。


「メリーは僕に対して失礼なのか、幽霊全般に失礼なのかどっちだ」


後者です。私の中で礼を尽くす対象ではありませんから。ふー。


「僕のフリルをふーふーしないで!

フリルを触ろうとして透けちゃうからって、風で僕をいたぶろうとしないで!」


そもそも初対面なのに、メリーメリー連呼されたくないのですよ。


「初対面じゃないってば。まぁ子どもじゃなくなってからは、会わなくなってきたけどさ」


まさかの「幼女メリー」支持層がここに?大変だ変態だ!大変態だ!


「あー、うん。ほら。悪かったよ。

幽霊が見える子って、村にいなかったから。みんなはしゃいじゃって」



ぼんやりと、思い出してきましたよ?


_へいへいっメリー!見えてんだろ?

_おっと危ないっぶつかる?っと思ったら幽霊でしたぁ。

_ベッドの下からババァ幽霊ババァーンッ。


…思い出した上に、イラッときましたよ。



「よく考えたら、別にこの村に来てから見えるようになったわけじゃないだろうし、教会育ちってことは、ある意味墓地育ちのようなものだし、

それって幽霊慣れしてるってことかなぁと」


皆さん、紳士・淑女でいらっしゃいました。騒ぎにならないように、

決して私に話しかけませんでした。

たまに、お墓に蜘蛛の巣が張った時などだけ、呼ばれましたけどね。


_手招きでオイデオイデされ、着いてゆくと、自分の墓石を指して、ココ。

溜まった枯葉や、汚れを掃除すると

フワリと風を起こして、髪を撫でてくれましたね。


淋しいそうではあったけど、いつも微笑んで、穏やかに墓地で過ごしておいででした。


「それを聞くとさらに恥ずかしいな」


ほぼ全員ゲラ笑いで登場。

私を見つけるとどんなに離れていても

走って汗だく、息切れしながら

『幽霊だぞ~こ、こわいだろっごふ」


「…いや、あのさ!仕方ないってか、

ほら、気になる人と目が合うと嬉しいでしょ?」


それは、まぁ。


「変化のない日常で、その人が視界に入るだけで、何かが始まるんじゃないかって勝手にドキドキしたり」


ドキドキ。


「普通にしろって言われても、

普通がなんだったかど忘れして

後になって恥ずかしかったり」


「自分が言った言葉で、ふっと小さく笑ってもらえただけで」


むー!むー!


「おや、どうしたんだいメリー」


め、メリーはですね!

憧れてたのですよ!羨んでたのですよ!

目が合うとドキドキするよね~って

大人のお姉さんの桃色舞い散るお話しの輪に入って

「私もですぅ!」と混ざってみたかったのですよ。

返して下さい!

《自分だけかなと不安だった気持ちが

実は誰かと一緒だったんだ!》を!


わ、私の初体験返せぇぇ!


「メリーメリメリーッ!誤解だから不可能だから落ち付きなさい!

草葉の陰からブーイングするな連帯責任だろ!誰かもふもふ連れて来い!」


「ッ!オ、ォオオオ~ン!」


「聞き耳立ててんじゃないよ狼!

緊急事態発令するなぁぁ!」


~~~~~~~




「…で、酒場のお姉さん方の話題が、知らない単語ばかりで、ついていけなかったと」


服の袖を巻くる姿や、目頭を揉む横顔とか、あと農作業中のお尻のくぼみとかですね、

お姉さん達はヨダレが出そうって

おっしゃるのですが、わからなくて。

それでお姉さんは

《初体験を済ませばわかるわよ》


「君がやりたがっていたのは、初体験じゃなくて、恋バナだよメリー。

主に同世代の女子達と、私も~、ね~?ってのがやりたかったんだよね?大丈夫、さっきのは無効だから」


「わふ」


早とちりでしたかぁ。もふもふ。


「わふわふ」


「はぁ。生前は一度もなかったのに。

まさか没後に狼に囲まれるとは」


実体はないのに怖かったですか?


「むしろ実体がある君が平気なのが

おかしいんだよ」


颯爽と現れて狼を説得するチャロさん

格好良かったです!


「そして帰りついでに草葉に潜んでいた幽霊仲間を蹴散らす狼達…」


通り抜けるだけなのに、物凄い悲鳴があがってましたね!


「生前没後に関わらず、怖いものは怖いよ。はぁ。一応僕たちは、君が村を

一人で出てしまうんじゃないかって

心配して追ってきたのだけど」


ちょっと1人になって考えたかっただけですよ。


「年頃の娘は部屋に閉じこもるかトイレに立てこもるかにしようね。

重装備で山奥にこもるのはやめよう」


屋外調理器具はどうしても嵩張るのです。さ、目的地に着きました!


「参考までに聞きたいけど、年頃の悩みを抱えたお嬢さんは、朝まで何をしようとしてるの?」


川魚の燻製作り?


「ははっ夜釣りでもするの」


魚は夜寝てますから、釣り糸を垂らしても食いつきが悪いのでっ!


バシャ!ビチビチビチッ!


「村の大人達はこの娘に何を教えてるんだ何を」


バシャ!ビチビチビチッ!


「…集中しているようだから、勝手に語らせてもらうけどね。

あのねメリー。これだけは覚えておいて欲しいんだ。


人生の本当に大切な瞬間に、選択肢なんて無いのだよ。


けれど人は。自分で決めた道だと言いながらも、

内心では、選ばされた、選べなかったと不満を抱えてしまう。後悔したい人間なんていないから。でもね、


僕はね。「仕方が無い」と言う人が嫌いなんだ。それは、


人生の本当に大切な瞬間にわざと遅れる、卑怯者の言葉だ」


……。


「メリー。間違うことを怖れてはいけない。助けを求めることを恥じてはいけない。誰かの為にを言い訳にして、

君を誇り、愛している人を大切な瞬間から遠ざけてはいけないんだ」




……説教ジジィ。


「ははっなんだ気づいてたのか」


……若作り、服装センス最悪。


「仕方が無いじゃないか。幽霊は生前の好きな時代の姿になれるけど、服装は当時のままなんだから」


仕方が無いって言った!自分で言った!


「仕方が無いのは当然だろ?僕は死んでいるのだもの」


…卑怯ですよ、村長さん。


「元・村長。今はただのブルーノ。

一応、幽霊達なりに、生前に君と知り合いだった奴らは姿を変えてるんだよ」


そんなの聞いてないです!師匠は?カレン婆ちゃんは?ヒュッテは?ジャンは?


「全員が幽霊になったわけじゃないけれど、今も皆を見守ってるよ。たまにクローゼットに隠れてイタズラしてる奴もいるけどね。

さぁ、それだけ燻製を作ったらもういいだろう。そろそろチャロと眠りなさい」


…はい。お休みなさい…ブルーノさん…


「お休み、メリー」


……グゥ…うぅ、ひどいですぅカレン婆ちゃん……



「おぃカレン、ばれてるぞ」


「生前に築き上げた厳格な祖母像がっ!」


「没後に台無し」


「うわぁんメリー!お茶目なお婆ちゃんを許してぇ!」



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