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プロローグ—デイトナの悲劇—

 楕円形のアスファルトの上を、24台ものレーシング・カーがゆっくりと走行していた。

 レーシング・カーとは言っても、F1マシンのようにレースをするためだけに作られたマシンではなく、市販車をベースに改造を施し、リーグのレギュレーションに合わせたものだ。

 彼らは別に本気で走っている訳でも、彼らの中に事故を起こした者がいる訳でもなかった。

 フォーメーションラップ—マシンの調子を整え、レースの準備をするための一周—の最中なのだ。


 …そう、戦いはこれから始まるのだ。


 先頭を走るセーフティ・カーがコースを外れてピットインし、スタートラインの真上にいくつかある赤いライトが全て消灯(ブラックアウト)すれば、マシン達は止まる事なく・・・・・・加速。レースが始まるローリングスタート。マシンを駆るドライバー達は互いに火花を散らし、観客席やピットロードは緊張に包まれる。そんな一周だ。

 ついに先頭のマシンが後続車を連れて一周し、スタートラインにさしかかろうとする。

 刹那、彼らの頭上にある赤いライトが一斉に消えた。戦闘開始レーススタート


 24のエンジンが唸りを上げ、それに答えるようにマシンは急加速する。

 一気に最高速まで加速したマシン達はスタートの体制をほぼ崩さずに、一直線に第一ターンに入る。


 …が、ここで予想外の事態が起きた。


 先頭を走っていた1台が挙動を乱し、制御不能になって隣のマシンにぶつかる。

 その2台がスピンを始めてバリケードのようにコースを塞いでしまい、後ろを走っていたマシンが対応しきれずにその横っ腹に突っ込んだ。

 さらに後方のマシンが先頭の異変に気づいたときには、時既に遅し。350km/h台にまで加速した1tトン近い巨体を止められる訳がなく、それぞれにバランスを崩し壁や他のマシンに激突。事故は次々と後方に広がった。


 …結果として、24台のマシンのうち14台が大破、他のマシンもほとんどが自動車として致命傷となるようなダメージを負うという大事故となった。

 ドライバーも無事ではない。マシンやサーキットの万全な安全対策により死者こそ出なかったものの、その場を走っていたほぼ全員のドライバー達が重軽傷を負っていた。特に先頭集団にいた中には意識を失った者も多くいた。

 幸いにして、ドライバー以外に負傷者は出なかった。しかし、もちろんそのレースは中止。レースを運営・開催していたインターナショナル・レーシング・リーグ(IRL)は事態を重く見てそのシーズン中のレース開催を全て中止。さらに無期限で活動を自粛すると宣言した。


 2018年5月13日、デイトナ・インターナショナルスピードウェイで起きたこの大惨事は「デイトナの悲劇」と呼ばれ、モータースポーツ史に刻まれることとなる。

 今やレースファンでこの事故を知らない者はいない。

Twitterでこの名前を見たことのある人は少ないですがいるかと思います。TaK:と申します。

小説を書くのは、これが初めてになります。もちろん今回が初投稿です。せっかくなので最初は一番書きたかったモータースポーツ物にしようと思いました。いろいろと見苦しい点はあると思いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


ちなみに、今回の「デイトナの悲劇」の舞台「デイトナ・インターナショナル・レースウェイ」は実在するサーキットです。しかし実際はここで描いたものとはだいぶ異なる点があるので、「名前を借りただけの別物」と思ってください。


…それでは、これからもよろしくお願いします。

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