ヒマリ教授の鉄道講座 ~作者失踪のお知らせ~
まばゆいスポットライトが教室の檀上を照らし出すと、そこにはお馴染みの二人の姿があった。
「『YouTuberの旅行オタクと方向音痴の魔法少女』の読者のみなさん! ヒマリ教授の鉄道講座のコーナーへようこそ」
ビシッと人差し指をカメラに向け、知的な笑みを浮かべるのは自称・ヒマリ教授。
それに続くように、隣に立つアサが元気よく両手をブンブンと振った。
「ハロハロ―!」
「今回も、わたくしヒマリと」
「アサがお届けするよん」
息の合ったオープニングの挨拶を済ませると、ヒマリはコホンと一つ咳払いをして、真剣な面持ちを作った。
「というわけで、読者の皆さん、こう思ったのではないでしょうか? なぜ章の途中でおまけコーナーをやるのか。タイトルに書かれている不穏なお知らせとは一体!?」
「作者が失踪ってどういうことかしら? 日本全国一周旅行でも行くの?」
アサが首を傾げ、わざとらしく目を丸くしてみせる。しかし、ヒマリは表情を崩さずに即答した。
「そんなわけないじゃないですか」
「じゃあどういうことよ!」
前のめりになって食い下がるアサ。ヒマリはふっと息を吸い込み、もったいぶるように間を開けた。
「さて、みなさんが気になっている、今回作者が失踪する理由、それは!」
「ゴクリ……」
アサが息を呑み、架空のドラムロールが鳴り響く中、ヒマリはあっけらかんと告げた。
「普通に就活が忙しいそうです」
「ああ……」
あまりにもリアルで夢のない現実に、アサの肩がガクリと落ちる。スタジオを包んでいた緊張感は、一瞬にして虚無へと変わった。
「ま、まあ、私も来年には就職活動しなきゃいけないですので、それはお互い様ということで……」
ヒマリが気まずそうにフォローを入れるが、アサはジト目を向けてすかさずツッコミを入れる。
「いやあんた、既によくわからん国の機関に就職してバリバリ働いてるじゃないの!」
「おや、そういえばそうでした」
ぽんと手を打つヒマリの天然っぷりに、アサは深い深いため息を吐いた。
「まあでも就活なんて、いかにも大学生らしい理由よね」
「そうですね……。なので今回は、作者の代理として、私達メインヒロイン二人が、読者の皆様に謝罪をさせていただきます」
二人はカメラの正面に向き直り、姿勢を正した。そして、息を合わせて深く頭を下げる。
『本当に、申し訳ございませんでした』
数秒間の沈黙のあと、顔を上げたアサが腰に手を当てて尋ねた。
「……んで、復帰はいつ頃になるのかしら?」
「一応、11月末くらいを予定しているそうですね。それまでに、隙間時間でストックは作っておくそうです」
ヒマリが手元のカンペを読み上げると、アサは不満げに頬を膨らませた。
「はぁ。まだまだ私とハルト君の雄姿を見せてないのに。なんというザマなのかしら?」
「まあまあ。帰ってきたら、しっかりとお仕置きしておきましょう」
ヒマリはそう言って、どこか黒い笑みを浮かべる。
こうして、作者不在のまま、ヒロイン二人によるお詫びとちょっと不穏な予告のコーナーは幕を閉じるのだった。




