イージスの剣
オモチャ組み立て工場で働いていたところ搬入トラックが突っ込んできて俺は死んだ。
あの女神とやらの説明によると、最近は転生者が多いらしく間引きが必要なんだと。
そこで一〇〇人の死人同士を殺し合わせ、残った一人を異世界に転生させるそうだ。
バトルロワイヤルの舞台はおあつらえむきとも言うべき孤島の廃墟。
殺し合いと言っても我も彼も死人、普通の手段じゃ死なないし殺せない。
廃墟に散らばった切先・刀身・鍔・目釘・柄・柄頭パーツを一定数集めて、死人殺しの魔剣を完成させる必要がある。
その前に魔剣持ちに襲われりゃあ、今度こそ死だ。
周囲の気配に注意しつつ、俺は息を殺してチェストを開けた。
「ちくしょう、ハズレだ」
もう三枚目になる鍔パーツに、おもわず毒づいた。
~NPC集合住宅302号室~
「ねえねえ、・・・お兄さん」
箱が呼びかける。
「起きたかハコ。 体調はどうだ」
騎士は作業を中断すると箱に寄り添って応えた。
テーブルの上には模型のようなものが組み立て途中で置いてある。
仕事の手を完全に止めてくれたことに、箱は嬉しさとちょっぴりの申し訳なさを感じた。
「んん。 だいぶ良くなったみたい。 まだぼーっとするけど」
「そうか。 無理はしなくていい。 食欲はあるか」
「んんっと・・・。 ちょっとだけ」
「用意しよう。 新しい寝間着はそこに置いてある」
そういうと騎士は台所に姿を消した。
箱娘が風邪を引いて寝込んだのは早朝のこと。
もちろん通常のNPCにとって”風邪”などというバッドステータスは存在しない。
一部のヒロインNPCにのみ、条件が揃えば発生する特殊イベントが”風邪”である。
これは消費者の描く物語を彩る隠し要素の一つとして設定されているものだ。
いつもは強がってばかりのヒロインが風邪で弱いところを見せる、といった用法が多いだろうか。
そういった概念なので、半日も安静にしていれば治るうえに、消費者が敢えて望まぬ限り重篤化もぶり返しもしない。
腐ってもSR級ヒロインNPCとして設計された人食い箱亜種たる箱娘だが、だらしなく蓋を開けっ放しで寝たため身体が冷えてイベント条件を満たしたようだ。
「うーーー。 まだだるいや・・・」
モヤのかかったような頭も、新しい寝間着に着替えると少しは晴れる。
冷却シートが張られたままの金髪頭をフルフルと振ると、改めて周囲を見渡した。
「これ、なんだろ? 仕事かな」
やはり目に付くのはテーブルの上、作業マットにおかれた模型だ。
組み立て途中の日本刀に見えるが、せいぜい十五センチほどしかない。
マットの周辺には模型のパーツが分けて入れられている大きなビニル袋が数袋。
テーブルの横のはガチャカプセルのギッシリ詰まった段ボールが数箱積み上げられている。
箱は作業マットの向こうに置いてあった依頼票を手繰り寄せて眺めた。
内容:データフラグメント組み立ての内職
職場:在宅ワーク
時間:所定時間での集荷
報酬:一セットあたり5GP
「ハコ、これなら食べられるだろう」
リンゴを皿に乗せた騎士が台所から戻って来た。
その一つ一つにウサギの飾り切りが施されている。
皮を耳に見立てるのみならず、目と鼻、髭に見立てた細工掘りまで入る手の込みようだ。
厳つい全身鎧の騎士がしたには、あまりに可愛らしい仕事ぶりに箱が思わず噴き出した。
「ちょっとお兄さん。 そのリンゴ、かわい過ぎて食べられないんだけど」
「む、そうなのか。 風邪ひき時のリンゴは、こうするものだと聞いたのだが」
「誰に聞いたのそれ。 ぜったい騙されてるよ」
「アスカだ」
騎士が挙げたのは箱もいつぞや会ったことのある、裂光の二つ名をもつ女剣士。
ラノベリオン発作品の中で最大ヒット作「BSO」のヒロインを努める大女優の名であった。
今朝のこと、寝込んだ箱娘を前に珍しく狼狽えた騎士。
箱と同じSR級ヒロインの知り合いであるアスカに風邪の対処法を相談した挙句、アニメ収録だグラビア撮影だで多忙な彼女に食材の買い出しと適当な在宅ワーク受注まで使いっ走りさせたのであった。
”裂光のアスカ”が訪れたことで、NPC派遣センターはちょっとした騒ぎになったらしい。
ウサギリンゴの嘘は、きっとその仕返しなのだろう。
「あのアスカさんにリンゴ買いに行かせたの!?」
「いや、このリンゴ、レジェンドレア食材”利宇古宇”を譲ってくれたのはヒデマロ氏だ」
「なに? その高そうな名前! こんなウサギリンゴにしていいの!?」
「その飾り切りを施してくれたのはタテイタ氏。 皆わざわざ来てくださったんだ」
「恐れ多くて食べられないよ!」
今度は箱が狼狽える番であった。
~NPC集合住宅302号室~
「それでお兄さん、このオモチャみたいなのはなんなの? 内職なんでしょ?」
楊枝に刺したリンゴは、ひとかじりすると口の中でシャーベットのように広がり溶ける。
もはや味にも食感にも驚き疲れた箱は、リンゴを頬張りながら尋ねた。
テーブルの作業マット上には、未だ組み立て途中の刀の模型が鎮座している。
「そうだ。 データフラグメントの組み立て作業だ」
「フラグメント?」
「まあ、いわば”カケラ”だな。 こういったバラバラのパーツを指す」
騎士がビニル袋から日本刀の切先のような模型パーツをつまんで見せる。
「こういったフラグメントを一定数組み立てると、アイテムデータが完成する」
そのまま切先パーツと柄頭パーツを取り付けてやると、作業マットに一振りの日本刀模型が完成した。
ガントレットの手で器用にやるものだと、箱は改めて感心する。
「へえ、オモチャにしてはよく出来てるねえ。 部屋に飾りたいかも」
「オモチャじゃない。 データフラグメントと言っているだろう」
「だからそれがなんなのかわからないって」
「そうか。 ハコはカプセル封入の仕事をしたことがなかったな」
騎士はダンボールの中からガチャカプセルを一個取り出した。
「ここにあるデータ封入用の穴に当てると・・・」
騎士がガチャカプセルを模型に触れさせるとピッという電子音が鳴り、模型の姿が消えてしまった。
「あ、消えちゃった」
「このようにカプセル内にアイテムデータが封入させるわけだ」
そう言いながら封入済み用のダンボールにカプセルを入れる。
「へえー、手品みたいだねえ」
「もちろんカプセルを開封すると、ちゃんとしたアイテムの実物が出て来る」
今回で言えばこれだ、と騎士が渡してきたのはガチャカプセルに入っているミニブック。
そこには先ほどの模型によく似た、流麗なれど怪しい雰囲気を漂わせる日本刀がプリントされていた。
でかでかと書かれた名前から、”魔剣キリサメ丸”というらしい。
端っこには『上記は完成例となります』という注意書きが小さく書かれている。
「ガチャのアイテムってそうなってたんだ。 知らなかったよ」
そう言えばガチャカプセルを開けると、カプセルよりも大きなアイテムが出て来るなあ、と箱は今さらながら疑問と回答を同時に理解した。
「まあそういう訳だ。 この仕事なら家でも出来るからな」
あらたなリンゴを口に運びながら、ミニブック裏の白黒ページを眺める。
そこには『パーツを集めて完成させることもできます』という注意書きと共に種類が載っていた。
どうやら切先・刀身・鍔・目釘・柄・柄頭の六種類が存在しているようだ。
鍔や柄、目釘ならわかるが、切先と刀身が別パーツというのはどういうことかと疑問が生まれる。
「でもさ、なんでこんなパーツがバラバラになってんの?」
「ああ、それには訳があってだな」
世にあまたあるガチャの数々。
当たりアイテムはおいそれと当たるものではない、というのは恐らく共通だろう。
もちろん簡単に当てられてしまうと、収益が悪くなるという運営側の事情もある。
しかしそれが度を過ぎると、すぐさま悪評が立ってしまう。
曰く、あのソシャゲはガチャが渋い、と。
こうなってしまうとそのゲーム自体、あるいは取り扱うコンテンツに余程の魅力でもない限り消費者は離れていく。
やがてソシャゲの寿命を縮めることになるだろう。
それを抑えるために、いくつかの手法が考案され、実装された。
有名なところで一定回数以上ガチャを回すと希望するアイテムが必ず手に入る”天井”システム。
これは某有名ソシャゲのあまりにも低いガチャ当たり率が巻き起こした騒動によって結果的に考案されたということを知っている者も多いだろう。
そしてラノベリオンが今回”魔剣キリサメ丸”ガチャで実験的に導入したのが”欠片”システム。
目玉となる”キリサメ丸”こそ抽選確率は据え置きなれど、その代わりに”キリサメ丸の欠片”がそれなりの確率で排出される。
その”欠片”を一定数集めれば、”キリサメ丸”を完成させることが出来るという寸法だ。
当たりアイテムは当たらずとも、やがてそのアイテムが手に入るだろうという仕組みが”欠片”システムということである。
「ってことは、カプセル開けるとパーツだけ出て来ることがあるってこと?」
「ああそうだ。 補足するとパーツだけが出て来る可能性の方が何十倍も高い」
「それでこんなにバラバラなんだね。 それってどうなんだろう」
むむむと難しい顔をする箱娘。
確かに当たりアイテムに少しでも近づくと考えると得をしている気もするが。
反面、当たりアイテムそのものは結局当たりにくい事実を誤魔化されている気もする。
「まあ、実験的な導入だからな。 そのうち運営が方針を決めるだろう」
そう言って騎士は話を打ち切ると、組み立て作業に取り掛かった。
実際のところ、当たりが手に入る期待値と欠片がそろう期待値はほぼ同じに設定されている。
つまり欠片がもう少しでそろう頃に当たりを引いてしまい、欠片が無駄になるというケースも多いのだが、そこまで説明する必要も無いだろうと。
カチャカチャ・・・
シャクシャク・・・
しばらくの間、データフラグメントを組み立てる音と、リンゴを咀嚼する音のみが居間に流れる。
やがて食べ尽したのだろう、咀嚼音がやんだころ。
「ねえねえ、お兄さん」
「ハコ。 今日は大人しくしていろ」
模型を組み立てるような内職仕事。
自分もやってみたいと言おうとした矢先に釘を刺され・・・
「ちがうよ。 リンゴ食べたらよけいにお腹すいちゃって」
思わず言い訳が飛び出した。
まあ食べ盛りの彼女のこと、実際に腹が減ったと感じるのも事実ではあるのだが。
「そうなのか。 わかった、卵がゆを用意しよう」
騎士にしては珍しく慌ただしく立ち上がる。
風邪の間は食欲が減るとアスカから聞いていたので、まだ下準備も出来ていないのだ。
しばらく我慢してくれと言い残して、台所に向かう背中に若干の後ろめたさを感じながらも、箱の興味はデータフラグメントに向けられる。
試しに刀身パーツと柄パーツをビニル袋から取り出してみた。
「へえ、いろいろとくっ付くんだ。 ブロック見たい」
カチャカチャと夢中になって組み立てる。
切先と刀身、柄と柄頭からなる短刀を二本作り、目釘でつなぎ止めた。
「えへへ、完成っと」
出来たのはハサミ。
もっとも刃が外側に向いているため危険極まりない上に、挟んだものは切れない代物だが。
元来の無邪気さと病み上がり特有の妙なテンションも相まって、箱は次の作成に取り掛かる。
柄を三個つなぎ合わせ、刀身と切先を付ければ長巻。
刀身を外し更に柄を延長すればなぎなた。
切先だけを何枚も重ねて目釘で固定すれば風魔手裏剣。
いやいや、もっと面白いものは作れないか。
こうして世にも珍妙な謎武器シリーズが生み出されていった。
カチャカチャカチャと台所から聞こえて来る音。
どうやら卵を溶いているらしい音に、箱はお遊びの潮時を悟る。
騎士が戻って来るまえに、謎武器シリーズをばらさなければ。
もっとも妙に優しい今日の騎士であれば、多少の悪戯は許してくれるだろうが。
「あれ、ちょっと抜けにくいな。 うんしょうんしょ」
ハサミの柄を外そうとしたが、一度結合したデータフラグメントは意外に外れない。
病み上がりで力が入りにくい上に、パーツが細かいので尚更だ。
「よーーいしょ!」
目一杯力を込めた手はパーツから滑り抜け、肘が勢いよくダンボールにぶつかった。
積み上げられたダンボールの山が、その中段を肘鉄で打ち抜かれて崩れ落ちる。
ガラガラガラと大きな音と、うひゃっという悲鳴を耳に騎士が飛んできた。
「どうしたハコ!」
居間に駆け付けると、テーブルや床に転がるガチャカプセルとその横で尻餅を突く箱の姿。
「大丈夫か」
「ごめんね・・・。 あの、トイレ行こうとして・・・、よろけちゃって」
「無理をするな。 トイレだな」
とっさに言い訳をしたのは理由があった。
騎士に付き添われてトイレを済まし居間に戻って来るも、箱は気が気でない。
チラチラと作業マットの上をうかがうが、やはり謎武器シリーズがすべてなくなっているのだ。
そして周囲に転がるガチャカプセル。
ということは・・・。
「・・・えっと、あのね・・・、お兄さん」
果たして一度封入されたカプセルは開けていいものなのだろうか。
そういや開封すると模型ではなく武器として出現するって言ってたな。
叱られることを覚悟の上で事情を告げようとする箱であったが。
「謝らなくていい。 俺のミスだ」
「えっ?」
「お前の寝ている横で作業を行ったのは俺だ。 公私を混同していた」
一方の騎士は鉄仮面をしかめる。
いくら箱娘の容体が気になっていたとはいえ、そのすぐそばで仕事スペースを展開してしまうとは。
普段ならそんなことは決してしないだけに、気が動転していたとはいえ配慮が足りなかった。
挙句に積み上げたダンボールに箱がぶつかって転んでしまったのだ。
俺は、なんと情け無いやつだ。
心の底から悔いるものの、口には出さない。
心配そうにオロオロとこちらを見ている箱の眼差しが彼の背を伸ばす。
ガサツで無神経に見えても、本当は性根が優しく意外と繊細な少女だ。
自責の念に囚われているだろう彼女に、これ以上の弱さは見せるわけにはいかない。
「・・・そうじゃなくてね、お兄さん」
「わかっている。 大丈夫だ」
騎士は何かを訴えたげな箱の言葉を制すると、強くも優しい口調で告げた。
「安心して休め。 気のせいか、顔色が悪くなっている」
~NPC集合住宅302号室~
「ふうふう・・・。 うん、お兄さん、これおいしいよ」
あれからもう一眠りして起きた箱は、すっかり回復したらしい。
騎士が作った滋養溢れる五目卵がゆを、うまいうまいと次々かき込んでいく。
「それはよかったがもう少し落ち着いて食べろ。 風邪は内臓が弱るらしいからな」
「はーーい。 ・・・ところでお兄さん。 さっきの内職は・・・」
恐る恐る尋ねる箱。
再び起きた時、内職のパーツやダンボールがきれいさっぱり無くなっていたのだ。
願わくば、あれ自体が熱にうなされて見た悪夢だったら、などと思うのだが。
「あれか。 お前が寝ている間に業者が回収していった」
「・・・そうなんだ」
落胆を誤魔化すように、ずずずとレンゲから粥をすする。
どうしようか。
素直に白状した方がいいのだろうか。
ガチャカプセル開けて、あんなふざけた武器が出てきたら、お客さん怒るよね。
「ねえ、お兄さん。 ちょっと聞きたいんだけど・・」
「どうした?」
「さっきの刀のガチャなんだけどさ、例えばの話、どれかのパーツが無い・・・とかになったら問題になるのかな」
かなり遠回しのやんわりとした質問を投げかける。
思い出せる範囲でも、鍔や刀身パーツを一切使っていない謎武器がいくつもあったはず。
またしても恐る恐るの質問であったが。
騎士は目を見開くと、意外な反応を見せた。
「ハコ・・・。 なかなか勉強しているようだな。 正直驚いた」
「へっ?」
「あの”欠片”ガチャが、コンプガチャに抵触しないか懸念しているんだろう」
「は、はあ」
思わぬ切り返しに目を丸くする。
箱はもちろん理解していないことだがコンプリートガチャ、通称コンプガチャとは。
大雑把に言うと、ガチャで特定種類のアイテムをすべて揃えると何らかの利益、例えばより優れたアイテムなどが手に入る仕組みを指す。
ガチャで排出されるアイテムに、それ以外の付加価値を上乗せすることが顧客誘導につながるとして景表法により規制されたことは未だ記憶に新しいことだろう。
「安心しろ。 あのデータフラグメントにはそれぞれステータスが設定されていてだな」
「う、うん」
「切先パーツなら斬撃属性の攻撃力、刀身は攻撃力と攻撃範囲、鍔なら防御力、目釘は武器耐久、柄頭が打撃属性攻撃力という具合だ」
「へ、へえ」
「それらを組み合わせて完成した武器は、その合計値の能力のみを持つことになる」
どうやら大きな誤解をしているらしい騎士が、普段以上の饒舌で解説を続ける。
あとでコンプガチャ勉強しなくちゃ、と密かに箱が決心するなか、騎士は結論を述べた。
「つまりあのミニブックに載っていた”キリサメ丸”の形にならなくても、問題は無いという訳だ」
例えばハサミみたいな形に完成してもな、といって笑う騎士の言葉に思わずギクリとする。
「そ、そうなんだ。 でも当たりが”キリサメ丸”本体なんだからクレームとか出ないの?」
箱は未だぬぐえぬ不安を漏らす。
謎武器シリーズを引き当てた消費者が文句を言わないだろうかと。
その不安げな様子を、騎士はこれまた誤解して受け取った。
まだまだ半人前だと思っていた相棒に、これほどのコンプライアンス意識が芽生えていたとは。
万感の思いを胸に秘めて、騎士は言うのであった。
「その点も安心しろ。 ミニブックに注意書きが書いてあっただろう。 ”完成例”だと」
完成例を持った男が雄たけびを上げて斬りかかって来る。
息をのむほど美しい魔剣だが、今の俺には脅威ではなくなっていた。
あれは攻守速そろってバランスのいい反面、これと言った強みがないのだ。
「無駄だ。 何度やってもな」
斬撃を鍔で受け止め、弾き飛ばす。
今まで倒してきた不格好な武器使いの方がよっぽど手ごわかった。
柄頭の代わりに切先を付けた双刃剣の使い手などまだまだ可愛いほうだ。
切先三枚を鍔に付けて柄をめちゃくちゃ長くした、刀身を拾えなかったであろう熊手使い。
振り下ろした刀身がそのまま柄からすっぽ抜けて飛んでくる、目釘無しのスペツナズナイフ男。
鍔に柄頭をたんまりくっ付けて接近連打をかましてきた、両手メリケンサック女。
それに比べて、完成例のなんとつまらないことか。
「その技は知っている」
虚を突いたつもりなのだろう柄当てを、またも鍔で弾き飛ばす。
完成例の使い手と今まで何度戦ってきたと思っているのか。
まして俺の持つ鉄壁の魔剣、鍔六枚重ねに通じるはずもない。
焦りに満ちたその男に、いつもの決め台詞を投げつけてやる。
「なあ・・・、イージスの理論って知ってるか」
ちなみに転生したのは、七枚刃の回転のこぎり男だった。




