過激系ユーチューバー、異世界に凸ってみた
はいどうも、こんにちはこんばんわ~。
いやね、体当たり企画でトラックに突っ込んでさ、異世界来ちゃったわけだけどね。
いやー、長かった。
うん。いつも見てくれてる人ならわかると思うんだけどさ。
とうとう完成したんだよね。最強の剣。
じゃーん! メメント・スコーラー(ドラ〇もん風)
いやー、長かった。どれくらいかな。俺がレベルカンストしてからも結構かかったよね。
で、さっそく試し切りしたいんだけどさ、この剣っていわば剣の中の王様じゃん。
だからさ、試し切りする相手もそれなりの格がいると思うんだよね。
ということで、ちょっと手を回してこんなチケット手に入れたんですよ。
~王都エリア 中央通り~
「ねえねえ、お兄さん」
箱が呼びかける。
「どうしたハコ。 あまり乗り出すと落っこちるぞ」
騎士は声のする方に振り返る。
その顔はいつもより随分と高い位置にあった。
「この中すっごい豪華だよ! 椅子とかフカフカで最高!」
満面の笑みを咲かせるそれは、騎士から見てあたま一つ分ほど上の高さ。
豪華絢爛に装飾された四頭立て馬車の窓から、箱が身を乗り出していた。
窓から覗き見える馬車内もまた、外装に負けず劣らずのようだ。
「・・・そうか。 特区に入ったら大人しく座っているんだぞ」
「大丈夫だって! それにしてもその鎧、かっこいいねえ」
騎士の注意を聞き流しつつ、箱娘は目をより輝かせた。
覗きこむ箱の顔が映るかのように光を反射する、白銀の鎧。
そのいたるところに黄金の意匠が施され、より豪華さを増している。
何より目を引くのは、鉄兜の上に付けられた鶏冠のような赤い羽根飾りだ。
それはくすんだ灰色をしているいつもの鎧と見違えるようであった。
「ピカピカでキレイだねえ! すっごい高そう!」
「テクスチャを張っただけだ。 そもそもこの鎧は俺の身体そのものだからな」
やはり光り物には目が無いのか、ワイワイと騒ぐ箱。
騎士はため息交じりに身も蓋も無いことを返した。
派遣NPCに降格したとき、内部テクスチャが削除処分されたため、今の騎士は鉄仮面が素顔であり鎧が生身である。
普段からピカピカの身体など目立って仕方がないのだが、そんな彼の思いも空しく、
「じゃあ普段からそのテクスチャ使ってよ。 絶対その方がいいよ!」
などと箱は言葉に力を込める。
彼女からすれば、もどかしくて仕方がないのだ。
実力も経験もある相棒がいつまでも目立たぬ裏方作業や非正規仕事に専念していることに。
もっと目立った功績を上げれば、いずれ非正規から昇格できる日も近付くだろうと。
以前、騎士が自ら手放した正規NPCという地位に。
そんな思いもまた空振りする。
「このテクスチャはいわばお仕着せだ。 仕事が終わり次第返却することになる」
「えーー、そうなんだ。 つまんないの」
「それにこの鎧は目立って仕方がない。 目立たぬための男騎士だからな」
それは”騎士”というNPCを選ぶ際、主人公の大半が女性キャラを選択するラノベリオン世界において、ある意味この男の人となりを端的にあらわした一言だったのかもしれない。
「ふうん? なんかわからないけどわかったよ」
箱は怪訝な顔でそう言うと、窓から身体を引っ込めた。
~王都エリア 第七イベント特区入口~
歩兵隊五〇人と騎兵一〇人、その他数名からなる王の行幸隊列。
ゆっくりと中央通りを進んでいくと、レンガ造りの大きなアーチ門に差し掛かった。
門扉は設けられてはいないのだが、ここをくぐることは大きな意味がある。
この先は運営によって設けられたイベント特区と呼ばれる地域。
ある意味”何でもあり”の無法地帯なのだ。
門前まで到着した隊列がいったん停止する。
「さて、着いたか」
声を上げたのは隊列中央、煌びやかな深紅の外套に身を包んだ騎乗の男。
白いひげを蓄え、白髪の頭には王冠、腰には宝剣。
歳の割にガッシリした身体と、威厳に満ちた相貌を持つ高齢の人物だ。
「レクス殿。 今のところ問題は無いだろうか」
歩み寄った騎士が尋ねると、レクスと呼ばれた老人は深く肯いた。
「うむ。 現状に問題は無いな」
「了解した。 一同、予定通り一〇分の休止の後、特区に入る。 各自準備を怠るな」
騎士が声高に告げると、二騎の伝令兵が走っていった。
「モブイチ、急な依頼で済まなかったな。 助かったよ」
老人の口調は外見に見合わず砕けたものだ。
「いや、こちらこそ指名派遣はありがたい。 ハコの同行も許してもらい感謝する」
応える騎士も仰々しい振る舞いなど取らない。
傍から見ると友人のように接する王と騎士、という不思議な光景に見えるだろう。
もちろん彼女もそう思ったらしい。
馬車内で大人しくすることなど出来ない箱娘が降りてきて尋ねた。
「ねえねえお兄さん、王様にその態度は失礼なんじゃないの?」
そんな当たり前の疑問に、王と騎士は顔を見合わせる。
「そうか、紹介していなかったな。 彼は・・・」
「クルル・レイ・ケーニヒレクス十二世だ。 よろしく頼むよハコ嬢」
騎士の言葉を遮り、ウインクを寄こすその老人に、
「へっ? あ、はい。 よろしくお願いします」
箱は豆鉄砲を喰らったような顔で返したのであった。
内容:お試しイベントのスタッフ
職場:王都エリア 第七イベント特区
時間:イベント終了まで
報酬:一万五千GP
特記:指名派遣
ゲームのプレイ内容が自動的に文章化されるソーシャルゲーム”ラノベリオン”。
多くの異世界ライトノベルがそうであるように、このゲームも基本は中世ヨーロッパをモチーフにしている。
それも現実的な中世ではなく、ゲームや小説などの創作物によって歪められ培われた特異な世界。
そこでは冒険者なる謎職業の連中が、剣のみならず魔法とかいう胡散臭い力で魔獣や亜人と戦うわけだ。
倒した人外の魔獣は何故か人間の通貨を持っており、迷宮の奥には誰が作ったのかオーパーツ的な武具が眠っている。
いわゆる”ナーロッパ世界観”である。
そんな世界がライトノベルの主流となって久しいが、その勢いはまだまだ衰える気配が無い。
なにせ広く定着してしまった世界観は、後発の創作者にとっても都合のいいテンプレとなる。
例えば「アイテム」という言葉の意味。
本来は”項目”や”品目”を指す英語であるが、この世界観内では「道具的ななにか」という認識になる。
けっして「道具」ではなく「道具的ななにか」で伝わるため、詳細を詰めない創作者には都合がいい。
とりあえずギルドやらスキルやらレベルやらと言っておけば、ニュアンスは通じるので大変便利なのだ。
かくしてテンプレ化して一層増え続けるナーロッパ作品群。
キーマンとなる人物も大体テンプレ化されている訳だが、その代表格が”王”である。
物語を大きく動かしうる国一番の権力者は、王女と並び、多くのナーロッパ作品中で必ず出てくる存在と言っても過言では無かろう。
当然ながらラノベリオン内でも”王”の需要は常に高い。
消費者が自分の作品にイベントを起こす際に使う課金アイテム”イベントチケット”。
ある程度の希望的展開がまかり通るそのチケットで多いのが「王に気に入られる」イベント発動だ。
これまたテンプレながら読者にとってもウケがいいため、作品のPVを伸ばす効果が高い傾向がある。
一方、課金してまでイベントチケットを使わない消費者も多い。
無課金の範囲でラノベリオンを楽しみ、そして文章化されたノベルに満足する。
あるいはノベルは完全におまけと考えている、そんな連中だ。
それはそれでソシャゲとしては重要なファクタなのだが、運営NPCは彼らを傍観している訳にはいかない。
より長くこの世界を維持するためには、たとえわずかでも課金してもらったほうがいいのだから。
そこで運営NPCが時におこなっているのが”お試しイベント”。
全ての消費者を対象 -ということになっている- に、ちょっとしたイベントチケットを無料配布しているのだ。
それをきっかけにイベント課金に手を出してくれたら・・・というメビウスの輪のごとく裏事情が丸見えな策略だが、消費者からの評判は良い。
そんな”お試しイベント”の中でも特に反響が多いのが、これまた「王に気に入られる」である。
~王都エリア 第七イベント特区~
「へえ、あんたがこの国の王様か」
顔立ちの整った青年が、傲慢不遜の見本のような振る舞いで言ってのけた。
馬にまたがる王を守るように、騎士が踏み出し剣の柄に手を掛ける。
「貴様! 無礼であるぞ!」
「構わん。 ふむ、なかなか豪胆なやつだ、気に入った」
「陛下、何者かわかりませぬ。 どうか御下がりを」
「小僧、良い眼をしているな。 黒い瞳、それに黒髪・・・、まさか、な」
青年を排斥しようとする騎士と、それを制する王のやり取り。
そして、やけに大きな独り言をつぶやくまでがワンセットだ。
イベント特区に入ってもう何度目かのお決まりパターンが繰り返されていた。
「お兄さんたち、またおんなじこと言っちゃってるよ」
一連のやり取りを馬車の中からのぞく箱娘が、おもわず嘆息する。
当初こそイベントの様子に興味津々とうかがっていたのだが、こうもベタ展開が続くとさすがに飽きて来た。
「小僧よ。 機会があればまた会うこともあろうぞ。 さらば」
「おう、爺さんもな!」
レクスが手を挙げると、隊列はまた進み始める。
黒髪黒眼の青年の姿が遠ざかっていき、人ごみに消えた。
しばらく進めばまた、同じような青年が群集の中から飛び出してくることだろう。
これがお試しイベントのひとつ、「キングロードパレード」。
王の行幸隊列に主人公が出会い、その振る舞いを気に入られるというささやかなイベントだ。
しかしここ以外にも王都の十九か所に点在するイベント特区で同時に行われていたりする人気演目でもある。
本日の予定では、イベント当選者一〇名が特区内の道すがらで接触してくる手はずだ。
「ねえねえお兄さん。 お兄さんの仕事ってあの台詞言うだけ?」
黒髪の青年が見えなくなったところで、箱が馬車から顔を出した。
「まあ、基本的にな。 特に問題が起こらない限りは」
「なんだ。 指名派遣だから敵と戦ったりするんだと思ったよ」
何ともがっかりと言った感じで箱が肩を落とした。
どうせピカピカの鎧を着るのなら、カッコいいところの一つも見せてほしかったのだ。
「場合によってはそうなることもあるが、まあ稀だな」
「最近は目立とうとしてムチャクチャする主人公も居てね。 モブイチみたいな腕の立つ護衛が一人は必要なんだよ」
王が切り殺されちゃ大変だと、レクスが苦笑する。
「え、じゃあ普段はどうしてるの?」
「それがね、いつもの専属NPCが大勢、余所に応援に出てしまってね」
隊列に併せて馬を進めながら、レクスが言うにはこうである。
あるラノベリオンの有名な作家が、大きな課金イベントを発生させたらしい。
なんでも、ゴブリンの主人公が亜人軍団を率いて、王軍の騎士団と平野でぶつかるそうだ。
そこで参戦資格のある正規NPCは、軒並みそのイベントに参加することになった。
なにせその作品はアニメ化映画化までしている人気作ゆえ、運営NPCとしても肝煎りの案件である。
かくして多くの正規騎士型NPCが引き抜かれ、その穴埋めに派遣を雇ったのだと言う。
「え!? それってまさか『ゴブリンプレイヤー』のこと!?」
「うむ、そうだよ。 ハコ嬢は好きなのかね?」
「すっごい好きだよ! 主人公が寡黙で渋くってさあ。 うわあ、そっち見たかったなあ」
箱が心底悔しそうな表情を見せる。
「おいハコ。 あまり失礼なことを言うんじゃない」
「かまわないよモブイチ。 さて、次のお客さんだよ」
騎士の苦言を笑顔で制すると、レクスはゆっくり進む隊列の先頭を見た。
先頭を行く旗持ち兵士の振る王国旗が、一定のリズムで振られているのがわかる。
新たな主人公出現の府庁だ。
箱は馬車の中に身体を引っ込め、レクスは再び王としての振る舞いをとった。
騎士も気を新たに引き締め、職務に集中する。
やがて見えて来たのは、これまた特徴のない黒髪黒眼の女顔男子である。
「またベッタベタなテンプレ展開っぽいねえ。 みんなよくやるよホント」
心底飽きたと言わんばかりの箱の言葉は、一連の展開にかき消されていくのであった。
~王都エリア 第七イベント特区 終着地点~
「あーー、終わったあ。 疲れたねえお兄さん」
イベント特区終点に設けられた野営用の天幕。
主人公が立ち入れないその場所に駆け込むと、箱は目一杯背を伸ばした。
「お前は座ってただけだろう」
「だって、意外に疲れるんだよう、座ってるだけって」
そんなやり取りをしていると、行幸隊列とのミーティングを終えたレクスが入って来た。
「二人ともご苦労だったね。 無事終わったよ」
儲けられた椅子に座ると、王冠を外して手拭いで額を拭く。
「ところでレクス殿。 例の現れなかった当選者は・・・」
「ああ、あれなんだが、御大が処理されたようだね。 連絡があったよ」
レクスが困り顔で差し出したのは、ナーロッパには似合わない赤い風車。
それを受け取ると騎士もまた、やれやれと肩を竦める。
「やはりそうか。 あの御方にも困ったものだ」
「まったく」
言葉少なに交わされる会話。
なんにでも興味を示す娘が喰いつくが・・・。
「なになに? 何の話? その風車は?」
「仕事上の話だ、気にするな」
「それよりもハコ嬢、今日のMVPを決めよう。 九名の中で気に入った当選者は居たかな?」
それは明らかな話題逸らしではあったが、箱には嬉しい質問でもあった。
今日一日馬車に揺られるだけの、何も働いていない罪悪感を拭うには良い機会だ。
ちなみにMVPは、各イベント特区ごとに一名、好印象の当選者が選ばれる。
ささやかではあるが記念品なども贈られ、発表もされるので適当に選ぶわけにはいかない。
「ええっとね、ええっと。 やっぱあの人! ちょんまげのボロボロの服着た!」
「エントリーナンバー八番、『オラ異世界さ行くだ』の主人公、吾作どん・・か」
「ほう、コメディ作品だな。 ハコ嬢はあれが気に入ったのか」
箱が目を輝かせて熱弁を振るう。
「そりゃそうだよ! ”大名行列じゃあ”って土下座してるんだもん! 面白いじゃん」
似たような当選者に飽きた挙句の変わり種で、よっぽど印象に残ったらしい。
MVPならそれ以外あり得ないと言い切った。
「モブイチはどれが気に入ったんだ?」
「俺か。 ・・・そうだな、三番だな」
「三番というと『チート転生したけど普通に異世界を旅します』か。 なるほど私も同感だね」
しばし黙考の末に騎士が選んだ当選者案。
レクスも意を得たりと肯いた。
こうなると黙っていられないのが劣勢に陥った箱娘だ。
「え、なんで? 三番ってどんなのだった? おぼえてないんだけどさ!」
「黒髪で黒目、地味だが整った顔、中肉中背の旅装の青年だ」
「みんな一緒じゃん!」
「振る舞いに脅えやテレが無いのが良かったよ。 上手く無頼を演じ切っていたね」
「ええ? そんな細かいのわからないって!」
なんとか反論するも多勢に無勢。
まして彼女が気が付かなかった細かい部分を指摘されると手の出しようがない。
「まあそういう訳だハコ。 三番で決まりだな」
「ううっ・・・」
こうして第七イベント特区MVPは決定されたのであった。
それでも納得できない箱は、なおも未練がましく愚痴る。
「”土下座”の方がずっと斬新だし、絶対インパクトもあって目立つのに」
推しているはずの箱娘から不名誉なあだ名を授かった吾作どん。
それを咎めるわけではないが、騎士が口を開いた。
「ハコ。 ひとつ思い違いをしているようだが・・・」
誰に聞かれている訳でもないが。
それでも騎士は言葉を選び、続ける。
「創作の世界に完全な”斬新”など無い。 必ず似たような先駆者がいると思え」
「そうなの?」
「ああ、まして”ラノベリオン”は主人公の数だけ物語がある」
「いま検索かけたけど、”江戸時代の農民が転生”する作品はこれだけあるね」
レクスが差し出したタブレットには、スクロールしても途切れることのないほど作品名が並んでいた。
一体どれだけあるのか、数える気にもなれないほどの類似作品だ。
「それを言ったら三番も同じじゃん。 沢山あるからベタなんでしょ」
「ハコ嬢。 それとこれとは事情が違うんだよ」
「いいかハコ。 仮に”土下座”をMVPに選んだとしたら、それを知った類似作品の主人公たちはどう思う」
「えっと・・・、似たような作品だなあって、思うかな」
「そうだな」
興奮気味の箱を落ち着けるように、深く肯く騎士。
「ではその中でも、”自分の作品は斬新だ”と思い違いしている主人公だったら」
「・・・それは」
それに気付いて言いよどむ箱の言葉をレクスが続けた。
「まあ”パクリ”だの”盗作”だのと騒ぐ人が居ても不思議じゃないね。 これだけ居ればさ」
そして手の中のタブレットを改めてスクロールさせつつ、呆れたように肩を竦めた。
箱は二の句が継げないでいる。
以前と異なり、多くの人々が執筆に取り組んでは発表する機会を得られる昨今。
それは特に懸念され、運営NPCを筆頭に注意を払う事項であった。
まだまだ未熟な相棒に教えるには、良い機会だ。
騎士の口調は、敢えて重々しいものだ。
「だから俺たちは王道を選ぶんだ。 誰が見ても王道だとわかる安全作を」
「うん・・・。 わかったよ」
箱が神妙に肯くのを確認すると、重々しさを若干緩めてさらに続けた。
それは、これまたベタな言い回し。
ベタ過ぎて格言にまで昇華した言葉。
「いわゆる”君主危うきに近寄らず”というやつだ」
~NPC派遣センター地下食堂~
「えっ? あの人、本物の王様じゃないの!?」
箱には珍しく、骨付きトリからを頬張るのも忘れて唖然とする。
レクスが騎士の言葉を遮って仕組んだ悪戯は、功を奏したようだ。
いまごろはニヤニヤとほくそ笑んでいるか、それともさっぱり忘れ去っているか。
ピカピカのテクスチャを外し、元のくすんだ鎧姿となった騎士は、改めて説明をしてやった。
「ああ、レクス殿は王役NPCの一人だ。 統治者たる王は別に居る」
「うわあ、騙された・・・」
「考えてみろ。 あんな行進するだけのイベントに王が参加する訳がないだろ」
「そりゃ確かに、ただ歩くだけで変だと思ったけどさ」
「ましてあのイベントは王都二〇箇所で同時開催。 つまり同型NPCが二〇人居るってことだ」
それは某大型テーマパークにおける、どう考えてもメインマスコットが複数存在しているはずの現象に似ている。
ある理由から決して名を読んではいけない”アレ”の問題である。
「でもでも、あんな長ったらしい名前とか名乗られたら信じちゃうって!」
「王・王・王王というふざけた名の王が、本当に居ると思うか」
「うわあ、くっだらない!」
呆れと諦めの入り混じった溜息を吐くと、箱はトリからを噛りだした。
どうやら彼女なりに、王に接するということで態度に気を使っていたのかもしれない。
もっともそんな細かい違いなど、騎士にはさっぱり気付かなかったのだが。
「じゃあ十二世って何なのさ。 十二人目ってこと?」
恨みがましい目つきでなおも愚痴る。
「漢数字の十と二を合体させてみろ」
バタンと音を立てて、とうとう箱はテーブルに突っ伏した。
心底、腰から力が抜けて砕けたようだ。
「おっかしいと思ったんだよ。 お兄さんとレクスさん、やけに親しいしさ」
「あくまで同僚だからな。 ”おかしい”で思考を止めたのが未熟者の証だ」
「むむう・・・」
未熟者の謗りを受けてむくれつつも、箱は考える。
そういや今の会話で、疑問に思ったことがもう一つあったと。
どうせだからそれも口にしてみた。
「で、本物の王様はさあ、どこでなにやってるのさ」
「む、あの御方か・・・」
やけっぱち気味の箱の悪あがきだが、ここではじめて騎士の言葉を詰まらせた。
あの名前を言ってはいけない御大は、本日も暴れ回ってたらしい。
当然、最上級の機密事項なので、まだまだ箱に教えることはできない。
さらに言いよどむ騎士と、ふて腐れ気味の箱。
今は髪飾りと化した赤い風車だけが、箱の金髪頭で呑気にたたずむ。
やがて呆れと諦めの入り混じった溜息をジョッキで喉に流し込むと、騎士はようやく言葉を紡ぐのであった。
「あの御方も、とにかく王道なことが好きな人でな」
いやちょっと待てって!
俺カンストしてんのに、なんであんなモブが強ええの?
最強の剣持ってんのに、あんな護衛二人に効かないってなによ?
おかしいって、ぜってえチートじゃんこれ!
うわ絶対通報してやる。運営なにやってんだよ!
ああそうだ。
あのリーダーぽいジジイ倒しゃいいんじゃね?
杖もってるし、あのジジイが召喚してんだよきっと。
いってえ!
いや、ありえねえから!
ジジイがいっちゃん強いとかありえねえから!
え?あの杖なんで切れねえの? ぜってえチートじゃん!
勘弁してくれよ、ぜってえ通報してやる。
え、あ、護衛がなんか見せつけてくるんだけど・・・なにあれ? スマホ?
あれってロゴじゃん。
ラノベリオン作ってる会社の。
え、なに? ぜんぜん意味がわかn
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