第十一話 二人の気持ち
「あらら~。おばさん負けちゃったんだ~。」
女性を倒してほっとしたのもつかの間、辺りに若い少女の声が響いたことで、迅は意識を切り替える。
「そんなに怖い顔しなくても大丈夫だよ~。おにいさん。」
そんな台詞とともに、いつの間にか見知らぬ少女が現れていた。
褐色の肌に低い身長。どこか、ファンタジーのロリなアマゾネス的な雰囲気をもつ、少女は倒した女性の傍らに立っていた。
警戒心むき出しの迅に少女は笑顔で言った。
「私は、このおばさんを回収にきただけだから、今おにいさんとは戦うつもりはないよ~。」
「回収ね・・・」
「うん。だって、『如月迅の回収なんて余裕よ』なんて言って勢よく出ていったくせにこれでしょ?さすがに見てられなくてさ~。」
少女はそう言って、自分の倍近くある大きさの女性を軽々と持ち上げた。
「ちょっと、待て。」
立ち去ろうとする少女に迅は待ったをかける。
少女は無邪気な表情でこちらをみた。
「どうしたの?おにいさん?」
「お前達は何が目的なんだ?」
答えるかはべつにしても、迅は聞くだけ聞いておきたいこと・・・すなわち、この連中は何が目的で自分を狙ったのかを明確にしたくて、そう聞いた。
少女は少し考えてから、迅と・・・後ろにいた紗耶をみて、笑顔で言った。
「楽園の創造かな。」
「楽園?」
迅はその台詞に思わず首を傾げる。
そんな迅の様子をみて、少女は頷き答える。
「うん。まあ、詳しくは秘密だけどこれは、能力を持つ人への救済みたいなものって考えてね~。」
「救済?」
「分かりにくいよね?でも、今は詳しく言えないんだ。まあ、いずれはおにいさんと隣のおっぱい大きいおねえさんも一緒に迎えにくるからね~。」
「待ちなさい。」
そう言って、立ち去ろうと背を向けた少女に今度は紗耶が待ったをかける。
「紗耶?」
「あなたが何を企んでても別に興味はないけど、でも・・・」
そして、紗耶は今までみたことがないほどに怒ったような雰囲気を纏って言った。
「迅を傷つけて、それでこのまま帰すと思ったの?」
「さ、紗耶・・・」
「うーん。確かに急におばさんがしたことは悪かったと思ってるけどね・・・でも、おねえさんは攻撃的な能力はないでしょ?本当はおねえさんも近いうちにおにいさんと一緒に連れていかなきゃならないから傷つけたくはないけど・・・」
そう言って少女は空いている右手を出して、手刀をするかのように真っ直ぐに伸ばした。
「場合によっては、少し痛い目にあってもらうよ~。」
そう言った少女の手から不思議な光がでた。
それをみた、迅はすぐに紗耶の前でいつでも対応できるように構える。
「紗耶には触らせないよ。」
そう言って構える迅は内心焦っていた。
(あれって・・・絶対ヤバイやつだよね?)
どうみても、少女の手から出てる光は尋常じゃないほどによく切れそうで、しかもあの少女はいきなりこの場に現れたらことを考えると・・・
(ぴ、ピンチじゃねぇかな・・・?)
そんな迅の内心を知ってか知らずかはわからないが、少女は突然構えをとくと、笑顔で言った。
「おにいさん達の邪魔をしたことは謝るね。でも、また遠くないうちに迎えにくるから、それまではゆっくりしてるといいよ。じゃあねー。」
そして、少女はまたしても一瞬で消えた。
しばらくして、二人は距離的に近い、迅の家にいた。
さっきの件もあるので、色々話すには丁度いいかと思ったのだが・・・
「ここが、迅の家なんだ・・・私の家にもなるのかな?」
「わあ、迅の部屋の布団迅の匂いが・・、くんくん。」
「迅、あの・・・私初めてだからその・・・優しくね・・・」
紗耶は迅の家にきてから暴走していたのをみて、すぐに後悔した。
ちなみに、最後の台詞にドキッときてしまったのは迅の秘密だ。
「それで、紗耶・・・さっきのなんだけど・・・」
紗耶が落ち着いたあと、迅はさっきの件・・・すなわち、女性が話していた自信のことについて話すことにした。
「ほとんどあの女の言う通りなんだけど・・・聞いてくれる?」
「うん。」
紗耶は静かに頷いた。
迅はゆっくりと語り出す。
「まず、俺には紗耶と同じで特殊能力が2つあるんだ。一つはさっきの【水の加護】これは水の力。そしてもうひとつ・・・」
そして、迅は語った。
自信の能力のこと。
自信の家庭のこと。
自信の当時の友達との関係。
そして・・・後の事件を。
紗耶はそれらの話を黙って聞いていた。
そして、すべて迅が話終えると、紗耶は迅の頭を撫でた。
「紗耶?」
突然の行動にドキドキしつつも迅は紗耶をみて、驚いた表情を浮かべた。
紗耶は泣いていた。
「辛かったよね・・・迅・・・。」
紗耶は泣いていた。迅のことを思って。
そんな紗耶の姿に迅は目頭があつくなりながらも、軽口をたたく。
「いや、まあ・・・昔のことだし、何より俺は過去には囚われない男だから常に前だけ見てたし、なんにも・・・なんにも後悔・・・なんて・・・」
そして、そんな迅を紗耶はそっと自信の胸へと誘った。
つまり、紗耶に迅は抱き締められた。
「迅・・・。私は何があっても迅と一緒にいるからね。だって私は・・・迅が大好きだから。」
「さ、や・・・おれは・・・」
「辛かったよね。一人でいっぱい頑張って。でもこれからは私もいる。二人で頑張ろうよ。迅。」
「う・・・・ん・・・」
「私は、隣にずっといるから。だから・・・」
そして、紗耶は見るものすべてを魅了するようなとびきりの笑顔で言った。
「私と一緒に生きよう。迅。」
プロポーズのような台詞。
本来は男の方からしなくちゃいけないはずの台詞だが、迅はその台詞に、紗耶の気持ちに涙を流した。
救われたと、心から迅は思い、無様にも迅は紗耶の胸で幼子のように泣いた。
しばらくして、落ち着いた迅は逆に紗耶を抱き締めていた。
「迅・・・暖かい・・・」
そんな迅の行動に嫌な顔一つ見せずに嬉しそうな紗耶。
そんな紗耶をみていた迅はある決心をして、紗耶を呼ぶ。
「紗耶。」
「うん・・・?」
猫のように甘えていた紗耶は迅の真剣な様子に不思議そうな顔をしていたが、迅は構わずに心のまま言った。
「好きだよ。紗耶。」
「・・・!?」
初めて言った台詞に迅は顔から火がでるほどに恥ずかしかったが、それでも思いを伝える。
「俺はさ・・・ずっと一人でもいいって思ってたんだ。誰も信じずにずっと・・・」
「迅・・・」
迅の台詞に不安げな紗耶。
そんな紗耶に安心するように微笑んで迅は続ける。
「でも、紗耶といると俺は安心できるし、何より・・・側にいて欲しいって思うんだ。ずっと・・・」
そして、迅はちらっと紗耶をみる。
紗耶は泣いていた。
「さ、紗耶?」
「嬉しい・・・」
泣かしてしまったと焦る迅だが、紗耶は悲しくてないてはなかった。
嬉しさから涙を流した。
「私・・・迅にどう思われてるか不安で・・・私なんかが迅と一緒にいたら・・・迷惑なんじゃって・・・だから・・・わたし・・・んっ・・」
しかし、紗耶の台詞は途中で途切れる。
なぜなら迅が紗耶の唇を自信の唇で塞いでいたからだ。
一瞬のような永遠の時。
なごりおしいが、唇を離すと迅は紗耶に言った。
「大好きだよ。紗耶。俺とずっと一緒に・・・いて欲しい。」
それに対して紗耶は・・・
「私も・・・迅が大好き。ずっと一緒にいたい。」
そして互いに見つめあい、再びのキス。
二人は互いの心を通わせながら、深く繋がる。
この日、二人は本当の意味で恋人になった。
落書きコーナーはっじまるよー!
もはや別ルートにしかならないこのコーナー。
(以下略)
ifエンド紗耶
「二人きりだね・・・迅・・・」
「ああ。なあ、紗耶俺は昔・・・」
「じゃあ、そろそろ本番行こうか!」
「えっ?本番って・・・?ってか俺の話を・・・」
「よいしょっと・・・」
「な、なんでいきなり服脱いでるの!?」
「な、なんでって・・・これからの儀式のために・・・」
「ぎ、儀式って何!?ってか、待って!?」
「も、もしかして、着たまましたいの?迅がそういうのを望むなら・・・」
「だから違うよ!ってか意味が!」
「だ、大丈夫。私、初めてだけど迅のどんな変態的なプレイにも頑張ってついてくね!」
「だから、人の話を・・・ってまて、紗耶・・ちょっ・・・」
「迅・・・二人で元気な子供つくろうね・・・」
「まっ・・・・紗耶・・・あ、あああ・・・」
「ふふふ・・・迅・・・」
このあと滅茶苦茶(以下略)
紗耶の迅への愛が我慢できなかったときのバージョンです。
まあ、遅かれはやかれ、こうなるかもですが(笑)
さて、少し伏線をはりつつも最初の章はこれで終わりの予定です。
次は1話挟んでかそのまま次の章に移るかも・・・
たくさんの感想と指摘ありがとうございます。
色々拙い文章を読んで指摘してくださり、尚且つ応援の言葉をいただけるのは作者としても感激です。
誤字については、すみませんとしか言えないですな(涙目)
続きは早ければ近日公開予定。




