第十話 紗耶の気持ち
「友達殺しの化け物?」
紗耶はますます訳がわからないと言ったふうに聞いた。
「そう。そこの彼はね。当時たった一人の友達だった男の子を自殺に追いやったのよ。」
「自殺に?」
「ええ、そう。」
いきなり表れた女性にだんだんと隠していたことを告げられる迅はもはや立っているのもきついほどの目眩に襲われていた。
そんな迅のことなど構わずに、女性は続ける。
「彼はね。あなたと同じで本来は1つしか持てないはずの特殊能力を2つ持ってる、天才なのよ。」
「迅も?」
紗耶は驚いた表情で聞き返した。
「ええ。しかも、凄い力でね。当時それを狙っていた友達とその父親をそこの彼が容赦なく叩きのめしたのよ。それが原因で家族はバラバラ。そして、友達は自殺したのよ。」
迅はもはや、女性の言葉が聞こえてなかった。
体の機能が止まったかのような硬直と、急激な目眩に激しい頭痛。そして、動悸がみだれたような心拍の上昇。
頭はもやがかかったように働かず、当時の情景が自然と頭に再生されはじめる。
薄暗くなった部屋に男の怒鳴り声、そして、友達だと思ったた少年の悲鳴とあの言葉・・・
「・・・・・・?」
そんな過去を思い出していた迅はふと、手に温かい感触があることで意識を戻す。
柔らかく、温かい。どことなく懐かしく感じつつも最近体験したようなほっとする感覚。
「大丈夫だよ。迅。」
気がつくと、迅は紗耶に手を握られていた。
紗耶は穏やかな表情で優しく微笑んだ。
「迅が何かを隠していたのは知ってたよ。今日一日一緒にいてなんとなく迅は何かを抱えているって思ったから。」
「紗耶・・・お、俺は・・・」
「でも、大丈夫だよ。迅。」
紗耶は優しく両手で迅の手を包み、微笑んだ。
「私は、何があってもあなたの隣にいるから。たとえどんな過去があってもあなたとともにいるから。だって私は・・・」
そこで紗耶は頬を紅くすると自信満々に言い切った。
「あなたが、大好きだから。」
「さ、や・・・」
紗耶はそう言ったあとに、女性に向き直ると、今度は一転して激しく怒りのこもった眼差しを女性に向けた。
「これ以上、迅を傷つけるつもりなら・・・私はあなたを許さないよ。」
そんな紗耶の迫力に押されながらも女性はバカにしたような笑みで言葉を発する。
「いいの?彼を庇って。彼は人殺しなんだよ?」
「それが?」
紗耶はなんてことないように相手に返した。
そんな紗耶の態度に驚いた女性は言葉をつまらせる。
「それがって・・・だって、そいつは・・・」
「人殺しなんでしょ?だから何?」
「紗耶?」
不安そうな迅に紗耶は微笑んだあとに、女性に毅然とした態度で言った。
「私は、過去のことは知らないから、迅のその話が本当にそうかはわからない。もしかしたら本当にそうなのかもしれない。でもね・・・」
そこで紗耶は少しためると、堂々と言った。
「だから、どうしたの?それが、今の迅に何か関係あるの?それに、たとえ関係あったとしてもそれが何?私が迅のことを好きな気持ちに偽りがあれば失望したかもしれないわね。でもね、私は迅が大好きだし、愛してる。この感情にまさるものなんてないでしょ?」
紗耶はそう言い切った。
呆気に取られる女性。
そして迅は・・・
「紗耶・・・」
迅は涙を流していた。
悲しいからではない。
うれしいからだ。
はじめて、認めてくれた。
自分を好きだと、愛してると肯定する言葉。
迅の過去を知ってもなお、一緒にいたいと言ってくれた女の子。
迅は久しぶりに心からの涙をながした。
「ガキが・・・!下手に出てれば調子にのりやがって・・!」
すると、そんな紗耶の態度が頭にきたのか、女性は体からほとばしるほどの電流を流しはじめた。
「させねぇよ・・・・」
そんな女性の動きに呼応するように迅は紗耶の前に涙を脱ぐって立つ。
それをみた女性はバカにしたような笑みで言った。
「私はね。電撃を操る特殊能力を持ってるの。あなたの水じゃあ、私には届かないわよ?」
「さて、どうかな?」
迅は相手が特殊能力持ちだと聞いても何故か落ち着いていた。
多分、後ろにいる銀髪の美少女のおかげだろう。
「あっそ、じゃあ話はあなたを倒して連れていってからゆっくり聞いてあげるわ。」
そう言って女性は右手をこちらに向けた。
すると、一瞬でほとばしるように電撃が真っ直ぐに迅に向かってきていた。
「迅・・・!」
紗耶はそれをみてとっさに愛おしいひとの名前を呼ぶが、呼ばれた迅は余裕な表情で紗耶に笑いかけた。
「だからいったろ?大丈夫だって。」
そして、電撃が迅に届くところで・・・
突如霧散した。
「は・・・・?」
「えっ・・・?」
硬直する時間。
女性ははっと意識を戻すと、怒ったように電撃を無数に放った。
しかし・・・・
「どうして・・・どうして消えるの!?」
電撃は迅の体に届く前に霧散した。
すべてだ。
焦っている女性に迅は心底面倒くさい目を向けて言った。
「そりゃ、俺の能力を勘違いしてたからだろ?」
「か、勘違い?」
迅は昔から周りに、【水の加護】という能力は水を操るだけの力だといっていた。
それは間違いではないが、正しくもない。
本来の【水の加護】の能力は水を生み出し、操る能力。
つまり、迅はどこにでも水を産み出し、それを操ることもできるし、元からある水を操ることもできる。
水を扱うための様々な力を迅は【水の加護】の力だと認識している。
当然これを目の前にいる相手に教えてあげるほど親切ではない迅は女性の質問には答えずに、格好つけるように指を鳴らした。
「・・・・!?」
すると、女性の頭に突然水の球体が現れて、女性の呼吸を封じた。
「俺のことを悪くいうのは別にいいし、俺を狙うのも構わない。けど・・・」
苦しむ相手に迅は思いっきり睨みをきかせて言った。
「俺の大切な人を・・・紗耶に手を出すのは許さねぇからな!」
そうして、呆気なく、女性を気絶させた。
最後の言葉は相手に届いていたかはわからないが、少なくとも、後で見守っていた銀髪の美少女には届いていたらしく顔を赤くしていたのは迅の位置ではみえなかった。
落書きコーナーはっじまるよー!
以下略
もしも紗耶が、迅のいないところで一人でこの話を聞いてた場合。
「だから、彼は人殺しなの。わかった?」
「そうなの。わかったわ・・・」
「そう。わかってくれたの。なら彼にはもう・・・」
「ええ。あなたが、死にたいということはわかった。」
「えっ・・・!?ど、とこからカッターを・!?」
「あら、避けられちゃった。まあ、いいや。」
「ちょっ・・・あなた何して・・・」
「だから、あなたが、私を怒らせたいっていうのがよくわかったのよ。」
「はぁ!?」
「迅が人殺し。だからどうしたの?なら、私も迅のためにあなたを殺して同じように背負って生きればいいだけでしょ?」
「そ、そんな簡単に・・・うわ!?」
「簡単だよ?あと、あんまり逃げるともっと痛くなるよ?」
「こ、こんなの聞いてない・・・!?」
「逃がさないよ・・・」
そして、二人のリアルな鬼ごっこはじまった。
仮に一人で紗耶がこの話を聞いてても結果は同じでした。
ただ、怒った紗耶に殺されるというのが違うだけです(笑)
さて、シリアスになってたかどうかはわかりませんが、とりあえず、あと、一話で次の章に移る予定です。
更新は近日中予定。
あと、思ったよりこの作品が皆様に読まれて感激です。
こらからも「特殊能力専門学校のヤンデレ美少女」をよろしくお願いします。




