教会ってマトモじゃない人がトップの方が腐敗しない説←題名と内容の一致しない俺氏、サクッと脱出。
ちょっと展開とか時系列乱れ気味・・・修正のため次は遅れるかも
「なんですか、こんな夜更けに・・・あら、ギルドの小僧にトンボ帰りの大馬鹿それに小僧の娘・・・過剰戦力が三人揃って何をしようって言うのかしら?」
アルビノと言う奴だ。色が抜けたと言うよりは元からなかったかのような白い髪、そしてこちらを射抜く真っ赤な眼、最近知ったが魔眼らしい、彼女はハルと名乗って居るこの教会の司祭にして孤児院の院長さらに言うなら王族に匹敵するかそれ以上の発言力を持つ長命種のお姉さんである。因みに女性をパーツで判断するのは些かというかかなり失礼だが相手が顔を選ぶなら俺は高らかにこう言おう、オッパ「何ですか?気に入らないことでも?」・・・まだ死にたくはないのでやめておこう。
胸部装甲の薄いハルはヒミツを軽く睨むと次はチェルシーの方へ目を向けた。
「別に?そこの馬鹿を援護に来たのよ。」
「それがなんでウチの門の前になるんですか?」
相変わらず綺麗と言うか絵画のような神秘性を感じさせる見た目と中身のガラの悪さがアンバランス極まりないが別にもう見慣れたものである。と言うかその容姿でドスのきいた声とかギャップすごすぎわロタw
「ああ゛?」
・・・さて、切り替えてギルマスの後ろから出て来たチェルシーの言葉を吟味する。『援護』か…しかもチェルシーの…嫌な思い出が湧き出て来るが、そうした思い出の生成者本人の悪気がないのが最高に最悪である。
「ワーウレシイナー」
「すまんヒミツ・・・本当に」小声
援護と言いつつ俺ごと敵を粉砕したり、援護と言いつつ後ろから射抜くし、援護と言いつつ結局前に出て陣形を破壊するし・・・しかも断ると泣くし。マンドくさいんだが?あと此処に逃げ込んだ時点でもう俺の『チキチキ!物騒な町から抜け出しさらに凶悪なモンスターはびこる外へ逃げちゃうぞー二時間スペシャル』は終了して居るんだが?
「む、嬉しくなさそうね、まあいいわあなたが此処から門を出るまで手伝ってあげ「うむ、要らんので俺はこのまま逃げるぜ『転移』!」・・・・は?」
いつも通りあまり嬉しくなさそうなヒミツを引き摺って行こうかとヒミツに手を伸ばすチェルシー、がそれよりも早く懐の短剣の一つを触りながら短く呪文を詠唱したヒミツは瞬きする間もなく教会の門の少し内側から姿を消したのだった。
「え?は!?」
「あら?知らなかったんですか?あの子生意気にも教会間の転移システムを自分で制御して大陸間すら移動できるのよ?」
そこにあったのはヒミツが消えた教会の門ギリギリの部分を見て呆然と口を開けるチェルシーと能力の大半を聞かされていたためオチがわかっていたギルマス、何食わぬ顔で説明をするハル司祭、そして逃したのを確信して悲しみにくれ四つ這いで一人凹むいつからいたのか描写すらされなかった総隊長(笑)という混沌めいた風景だけが残されたのであった。
「はああああああ!?」
「最近の若い子は元気は良くても頭が弱くて困ります。もう夜何でさっさとうちに帰って寝てください。」
漸く自体を飲み込み再起動したチェルシー、そして無詠唱で防音魔法を使いつつ敷地内に兵士がいないのを確認するハル司祭。
「・・・あいつ、何者なの!馬鹿なの?死ぬの?」
「・・・あいつはいい奴だよ、少なくとも今も昔も「そういうことじゃないの!」・・・知ってた。」
チェルシーはひどく取り乱すというか駄々をこねていた。それには色々と原因があり実は少しは乙女チックな理由もあるが最たるものは嫉妬であり羨望である。一番最初にチェルシーがヒミツにあったのは彼女が10歳だった頃、それなりの敷地面積を持つ闘技用の訓練場でおふざけで新人冒険者用の試験に出て来たギルマスを魔法と体技で圧倒していたところだった。
「ということで中ランクくらいから始めさせてよ、少なくともそれくらいの実力はあるでしょ?」
「ええ〜いや、だって下位からコツコツコツ行ってこそじゃないか?成り上がりって。」
仕事ばかりで自分にあまり構ってくれなかった父と何のことやらわからないが昔からの知り合いのように話をするヒミツを見て嫉妬した。
「ちょっと時間がないんよ。許してーな、な?」
「申し訳なさそうにしながら水攻めしないでくれるか?さすがに溺れるし、いや、ちょ!ま!?」
「脳まで筋肉かと思ったけど本気は出してなかったし倒せたのも運と無駄に高い身体機能だし・・・あ、ごめん、生き埋めにしてた。」
そして何よりあふれんばかりの才能を持つにも関わらずそれを誇示しないでわざわざ野次馬のいない状況に持ち込み元超上位ランカーである父を倒したにも関わらず中位ランカーとして、そして何より瞬く間に父と同じ位置に至った彼を見ていて羨望を感じた。
しかし彼は彼女が目標としていた彼に追いつく前に冒険者稼業を辞めることになる。
理由は簡単だ。竜退治での戦闘力評価とそれによる就職先の決定、つまり衛兵隊への加入である。酷くあっさりと冒険者を辞め衛兵隊隊士学校へと行くヒミツの背を彼女は止める事も出来ず呆然と見ているだけだった。
勿論彼女も竜退治に参加しておりその時は13歳でその時から既に超級の冒険者だったのだが、彼女の目標はそこには無い、彼女の目指して居た彼女の理想、目標としていたこととは、ズバリ『ヒミツと対等な関係でパーティーを組む』と言うの物であり、自分も彼も冒険者である事が前提のこの目標は彼が衛兵隊に入ると決めた瞬間から破綻しくだけ散ったのであった。
態々冒険者から衛兵隊に入って冒険者にまた戻ろうとする人間はなかなかと言うかほぼ居ない、それに彼は成り上がりを目指して居たわけで勿論冒険者もその階段の一段にすぎない、それ故に彼女も周囲の人間も彼が戻ってくることはないだろうと踏んで居た。
言うまでもなく落ち込んだしそれからと言うもの受け付け嬢になったり看板娘になったりヒミツに対してトゲトゲとした態度を見せがちだったり…まあ、大変だったのだ。
しかし、その彼が冒険者に復帰したのである。受け付けしていた時は表面上平然としていたためヒミツに気がつかれなかったがヒミツの目的とか何で昼間から居るのかとかそ言う言うことをまるっと忘れてしまうくらい嬉しかったのである。
でだ。その嬉しい状態からどん底まで突き落とされるとどうなるか・・・なのだが。
「う・・・ぐえ、な゛ん゛でよ゛〜な゛ん゛でい゛な゛ぐな゛る゛の゛〜?」
これである。地べたに女の子座りして座り込みうつむきながら泣き喚くという貴重な姿を見せて居る。と言うか普段が猫かぶってても豪快すぎて5話目にしてこれとか、キャラが跡形もないが気にしてはいけない。
「何と言うか・・・複雑な心境だな。これは。」
「色々と汚いので早く連れ帰ってくれませんこと?」
こうして色々と面倒そうなことを残し彼は颯爽とと言うかひどく呆気なく町から飛び出していったのであった。
「はい、失敗しました。・・・はい、何とか追跡を試みますが面が割れて居るので今回の様な策は取れないと思われます。・・・はい、了解です。」
ギルドの拘置所をいとも簡単に抜けた幼女はこの世界でもまだ高価な通信機能のついた魔道具を使用して誰かと会話する。そして苛立ちからか指を少し噛むと霧の様に消え去っていった。
「ふーん、これはちょっと戻れないな〜主にチェルシー的な意味で。」
森の奥地にある廃墟となった教会の聖堂内にヒミツはいた。
外面は完全に廃墟だがヒミツはここを何度も訪れ内部の改装や強化をしていたため外部の様子とは全く違う空間となっておりそこで水晶の様な物を見ながらため息をついていた。
「あーあ、結局これ使ったけどやっぱ馬車がよかったなあ〜、てかこっから歩きとか普通に不自然すぎなんだが?どうするべ?」
荷物に欠品がないかそして武器防具は転移ミスしていないかを確認しつつそんな独り言を呟く。
「はぁーてか最初は絶対使わねえと思ったけどこの短剣ともなげえ付き合いだな。今回も感謝感謝。・・・寝るか。」
装備確認が終わり今日はこのままここで寝てしまおうと寝具の用意をし、最も使い込まれたうっすらと発光する青白い刀身の短剣を撫で感謝を捧げ装備を外して寝袋に入る。
その日は異様に月が輝いていた。