最早来るのを描写するとテンプレ感の出る冒険者ギルドに疲れ切った俺氏。
ちょいシリアス?だと良いな。
すこし肌寒いこの辺境都市は夜になるとある場所以外はほぼ寝静まる。異世界らしからぬ技術からくる街灯は街並みを明るく照らすが民家の灯りは少なく、街灯の他に爛々と輝くのはやはり酒場であった。ま、他にも花街とか色々有るけどこの世界の成人年齢は16歳、仕事は実力さえあれば意外と雇ってもらえる、というか衛兵隊には12歳で入隊し史上最年少だか何だか言われたがタッパはあったので違和感はさほど無かった。だがやはり法律は法律、花街に俺は入れないと…グスン。
カランカラン
「いらっしゃいませ〜!」
酒場兼冒険者ギルドという典型的な建物に初めて来たときはワクワクしたもので有る。衛兵やってたら死ぬほど騒ぎが起きて面倒な場所だと思う様になってけどね!
木製の扉を開け上部に付いている金属製のベルが鳴りそれに反応して来訪者を歓迎する形式的な挨拶が飛んで来る。うむ!やっぱりミニスカ給餌服は最高だな!
「・・・・」ジー
「・・・取り敢えず飯食べるか。」
「!?」カァァ
幼女かわいいヤッター・・・ハッ!危ない危うくろりこん面に堕ちるところだったぜ、改めて料理をガン見する幼女を観察する。首にはチョーカー型の魔道具、体はちょっと細めというかガリガリ、うん、ご飯食べよう。そしてその後は風呂だな、服は・・・あー、うーん?あったかな?
「パンと唐揚げ後は適当にお願い、代金は・・・これで。」
まあ今は食事だ。大量の銀貨と銅貨と鉄貨の入った袋から鉄貨をジャラジャラと出していく、うっわ、クッソ重いと思ったらかこんなに詰まってたのかよ!嫌がらせかよ。
「かしこまりー・・・え、なになに奴隷?えー君がー?」
注文を受け厨房に行ったかと思うと一瞬で帰って来た。というか朝の手続きをしてもらった受付嬢にその日のうちにもう一回会うとかどうなの?
「何だよう、貰い物だよ、盗賊とゴブリンをぶっ飛ばしたら御礼にもらったの。他意は無い・・・と、思いたい。」
「ふーん。ま、いっかチョッチ待ってねー!」
彼女はここの看板娘の一人チェルシー、元気ハツラツ毒舌持ちの元気っ子である。勿論不貞を働こうとした冒険者を吹き飛ばすくらいはできる。
「ギョバー!?」
「触んな変態が!」
ああ、また尻を触ろうとした馬鹿が一人酒場の端から端まで蹴り飛ばされてるし…パンチラ最高だな。
「ああ゛?」ギロリ
・・・冒険者相手の受付嬢も兼任する彼女の腕前はドラゴン討伐戦でも抜擢されるほどで有る、というかギルマスの娘と聞いたが強いのは血筋なのだろうか?戦闘スタイルは素手か大剣ブンブンでかなりの上位ランカーだったはずで二つ名とかあった筈だが・・・ふむ?吹き飛ばされたのは外様の冒険者だったのだろうか?
「あ、あの〜」
「アッハイ。」
思考の海に潜っていると向かいの席に座って貰ってた幼女がいつの間にか横に来て何か言いたげに此方を見上げている。
「私、奴隷ですよ?」
「ああ、そうだった忘れてた。」
俺が答えるとそれを聞いて何かを決心した様に宣言しようとしていたが、それより先に首の魔道具の設定を解除、外してしまう、一応契約書上奴隷の扱いについては主人の自由と書かれていたのでサクッと奴隷契約を破棄した。
「ほへ?」
呆然とする幼女・・・契約書上マルグリットと書いて有るんだが、名前を呼ぶとちと不味い。
「これでよし。早く席に戻るといい、そろそろ食事が来る筈だ。」
「お待たせ〜・・・ああ、やっぱりかー」
俺がそう言うのとほぼ同時に唐揚げとパン、それに飲み物とよくわからない肉の塊を盆に載せたチェルシーがやって来て俺と幼女を見てなにかを悟った様だ。
「う・・・うえ」泣
「君さー契約解除したでしょ?何、後ろ盾無くなったこの子をどうするつもりー?」
お盆ごと料理を机に載せたチェルシーがちょっと涙ぐんでいる幼女を撫でつつ此方を威嚇している。
この世界の奴隷というシステムはかなり複雑だ。
例えば彼女の様な幼い者が奴隷となるのは親が彼女を売ったか、自主的な身売りかであり、そのどちらかによってどういう扱いなのかが変わって来る。
自主的な場合は自分で条件を付けることができ奴隷というよりは使用人派遣や仕事斡旋の色が強く。
親や他人に売られた場合はマジな奴隷というかんじである。
因みに異世界ものある有るのうちの一つ、『戦争捕虜が奴隷となったり』はあまりしないし王族を奴隷とするのは様々な国際問題を引き起こしかねないので違法、そのほかにも色々有るが犯罪奴隷の印で有る真っ赤な首輪でない限りその奴隷は無下に扱うことを許されない、しかし条件を他人に決められた今回の様な場合は本当に酷い時は命を取らなければなんでもいいみたいな時がありやはり胸糞悪いのだ。
して、今回の契約書上の彼女の条件はまあ予想できただろうが今回の様にポンとくれただけあって『なんでもあり』である。そう言ったことを加味すると彼女が現状俺という薄っぺらな後ろ盾の奴隷で有ると言うのは非常に危険で有る。
そう考えてだったのだが・・・ああ、そういえば説明をしてなかった。
〜少年(笑)説明中〜
「なるほどねー以外と頭いいのね、学校行ってないのに。」
「そ、そんなに酷い契約だったんですか…」
「まあね〜」
なんだかチェルシーにバカにされている様な気がするが彼女の方がバ「ああ゛?」・・・ゲフンゲフン、ま、まあ納得してもらえたなら結構、と言うか奴隷本人が契約を知らされていなところを見るにギリギリ違法じゃねえか斡旋屋仕事しろや!
「まあ、わかったけどこの後この子をどうするの?」
いつの間にか一緒に席に座って飲み食いするチェルシーとその膝に乗っている幼女、俺も謎の塊肉、所謂漫画肉、を頬張りながら答える。
「んあ?俺の元いた教会に預かってもらおうかと思ったんだが…ダメだったかな?そもそも俺この町出ていくし。」
それを聞いて数瞬の間間が空き俺が特になんの問題もなさそうに飯を食い進めていると二人は目を開け口を大きく開いた。
「「ええー!」」
「うるさい。」
「あ、ごめん・・・じゃないわ!え、何?今日再登録だけして依頼も何も受けなかったのはそう言うことだったの!マジで?」
「あうあうあうあう…」
どうやら気づいてなかったらしい、と言うかどう言うつもりだったと思っていたのか聞きたいぐらいだ。今も旅道具は抱えたままだし、寮は無いから宿も無駄に取ることになったし、踏んだり蹴ったりで有る。
「・・・ちょっと用事を思い出したからコレで、後この子をウチで面倒見てもいいわ、あそこの教会はあんたぐらい図太く無いとやってけないしね。」
「ああ、わかった。よろしく頼む。」
何故か突然のシリアストーンだが気にするな、こう言う時はチェルシーが良からぬことを企んでいるか、料理に激辛ソースを混ぜ込んだかの二択だ。
彼が呑気に晩飯を食べている頃マルグリットを連れたチェルシーはそのまま冒険者ギルドのマスター、彼女の父親の元へ駆け込んでいた。
「お父さん!あいつが町を出て行くって本当なの!?あ、後この子を預かることになったからよろしく。」
ギルドマスターは面倒臭そうに彼女の方を向きマルグリットをみとめて少しギョッとしながら少し怒っている彼の娘を見て色々悟った。少しだけ真剣な表情になり話し出す。
「・・・ふむ、一応言わない約束だったんだが・・・奴がそう行ったならそうだ。あいつは自分の意思で外に出る。止められないし少なくとも俺には止める気は無い、て言うか、可愛い子だな何処で拾って来たよ?誘拐か?」
シリアスを維持できず最終的に今後家族になるのがほぼ決定している幼女に自己紹介とか色々始めたがチェルシーにそれを気にしている余裕はなかった。
「この町の衛兵隊に置いて最強と呼ばれの元最高ランクのランカーがこの町を去る?・・・本当に?そもそも逃してもらえるの?」
「さあな、ここの領主様は良いとしてご隠居とその他大勢が面倒なことをしそうだがあいつなら正面から突き破るだろ。」
「・・・・。」
暗い室内で幼女の口が少し歪んだのに誰も気が付かなかったのは仕方がないのだろう。