鍛冶屋は強キャラ、後いい奴、それと…
「と言うわけでだ。鍛冶屋に行こう。」
「?…何がと言うわけなの?」
手紙通り休んでいるのであろう風間達の前に現れた正式な雇い主にして彼らの元暗殺対象ヒミツ、そして突如現れた彼に対するツッコミがなめらかすぎるアリス
(物怖じしなさ過ぎだろう!)
そして内心どころか普通にビビる風間、まあそれはそうだ。つい昨日ぶちころがされそうな殺気を当てられ、その直後自分には不可能だった『家族の奪還』という依頼を、それも結構命をかけて頼み込んだ物彼は一晩で終わらせた。
その出来事はヒミツという存在を風間に刻むのには充分過ぎた。ヒミツは彼にとって雇い主である以上に気まぐれなように見えて計算高い、それでいて戦闘力などその力は他の追随を許さない理の外側に平気で立っているような化け物、ある意味畏れの対象でありその戦闘力や強さと言うのは尊敬に値する人物だ。
しかし、一度身内と決めた者にはおおらかなヒミツは何の気なしに話を始める。最近ミゼールやキティ、ミッシェルを使い魔にした所為か空間把握能力というには異常すぎる空間内の事柄を手の取るように見ることのできる能力の一端を手にした彼は風間の畏れや、動揺なども感じているがそれも込みで、である。
因みにそのことを使い魔を多く持つモードレッドやマーリンに相談するとため息を吐かれたのが最もヒミツにダメージを与えた。
「まぁ今のままでもいいんだろうが回避主体にしてもいい加減ただの布の服や皮鎧と言うのは如何なものか、と言うことだ。」
「えー、それより私は武器が欲しい〜。」
「防具の作成・・・ですか。」
反応は様々だがとりあえず鍛冶屋に行かなければ話は始まらない、急いで朝食を食べるように言ってヒミツは宿屋の外でいつも通りの全身鎧のまま待つのであった。
ややあって飯を食い終え装備を一式着込んだ二人を連れて、・・・その際にこちらを見つめる悪意を幾らかミゼール達に始末してもらいながら、王都の中で往生の次に俺が最も訪れ、更におそらく最も散財しているであろう鍛冶屋についた。
「ここは・・・まさか!」
「知っているの?カザマ。」
「ああ、知っているも何も此処は・・・「おう!この馬鹿が!また剣を折って・・・あん?」」
妙な空気だ。あの空気が読めない、いや、むしろ金属の機嫌以外興味もない鍛治馬鹿ガーランドが風間とアリスを見て止まっている。その目には困惑というか悔恨というかよくわからない複雑な言葉にできない類の微妙な心の揺れを感じた。
「ヒミツさん、」
「ん?」
風間がこの状況を考えてなのか、それとも何か事情があるのか声を小さくして俺に声をかける。
「さっき言いかけたことです。此処は彼女の親が死んだ事故があった工房なんです。」
「ガーランドおじさん。」
「アリス、か。その「言い訳はいいのそもそも今日は買い物に来ただけ、新しい雇い主さんが色々買い揃えてくれるって。」・・・そうか。」
おっと、凄まじいシリアスについていけないぞ、ガーランドが今までになくテンションが低い上にアリスも聞いたことないくらい感情がない声出し、風間も事情を知っているのかなんとも言えない表情だし。
まるで葬式のような暗い空気が漂っている。
「・・・とりあえず店に入ってくれ、今の武器と防具を見て見ないと新調もできないだろう?」
「あ、ああ。」
沈黙を破ったのはガーランド、しかし相変わらず空気が死んでいたし、いつもと違い妙に殊勝な態度の彼に違和感しかない、いつもよりも大勢で来た割に静か過ぎて工房から響く鍛治仕事の音がひどく大きく聞こえた。
ガーランドはすぐに弟子を呼んで風間とアリスの採寸にかからせ、俺は相変わらず量が多いのと神妙な顔をしてその内心で後悔に苛まれる何かを思い出しているガーランドについて行った。
「なぁ、ガーランド「言うな、もう少し整理させてくれ。」・・・いいけどな?」
鍛冶場は相変わらずの熱気と職人達の怒号によって異様な雰囲気が作られている。
そして俺はそこで相変わらずぶっ壊れている武器群を並べていき、幾らかしょぼくれているとは言え鍛冶屋である彼はそれが10を超え遂には刀身の一切が吹き飛んだ物を出した頃にはいつも通りのブチギレモードだ。
「なぁ、ヒミツよぉ?」
「お?どうしたんです?整理とやらは終わったんですか?」
俺がそう言うと苦虫を噛み潰したような、元からシワの多い彼の顔にさらにシワを寄せるような顔をしてため息を吐いた。
「はぁぁ〜、わかった。話そう。話せばいいんだろう?」
「ああ、一応彼らの雇い主だからね厄介ごとだろうがなんだろうが彼らのことについて把握しておきたいんだよ。」
観念したように、いや、ほんの少しだが動揺している自分を弟子達に見せるわけにもいかないちょっとした親方としての見栄と誰かに話して楽になりたい、そんな普段なら感じない弱い面を見せるガーランドから語られたのはある家族に纏わる。事故と、不幸な行き違いの物語。
「そいつはな、東にある学芸の盛んな国家でも有名な魔剣職人だったんだ。」
遠くを見るような、それでいてどこか近くにいる友人を見るようなそんな目をしたガーランドはいつも通りのハンマー捌きを見せながら、俺に背を向け話し始めた。




