ダークフレイムセイジョサマ
「あははははは!もっと燃えなさい!豚ども!!」
「うーむ、方針を間違えたな、確実に。」
楽しいからいいけどと言わぬが花なことを思いつつ完全覚醒したジャンヌさんを引き連れて今日から本格的に親玉のところ目指すことになった。まあ、目印は既に玉座手前までミゼール達に作って貰ってる上にジャンヌさんの攻撃力がカンストレベルなので問題ないが、有り体に言って暇である。
そして暇になると何がどうしてアマゾネス系ダークフレイムマスターな聖女様が出来上がってしまったのか頭を悩ませてしまっている。
いや、強いから別にいいといえばいいんだが、マーリンとかから確実に俺の関与を疑われるだろうと言うことと、そこから派生する面倒ごとについて主に頭を悩ませているのだが…
「ふふふ、あーっはっはっはっは!」
「・・・」
《おー彼女吹っ切れてるねー、何、ヒミツああ言うのが好み?》
「あはははwいやー人間ってすごいねぇー!」
「もはや豹変ですね、先ほどまであんなにか弱く震えていたかと思えば怒りと感情のまま的を灰燼に帰しているのですから。」
もうなんて言うかこれは素直に謝るしかないだろうな、しかしなんて謝ろう。『ちょっと聖女様にテコ入れしたらオカシクなっちゃいました!てへぺろ!』・・・ダメだな、と言うか真面目に謝ってもダメな気がしてきた。
「む?」
そのとき、俺は首筋あたりにチリチリとした殺気を感じとっさにアンサラーを抜き放つ。
霧を切り裂くような、肉を切り裂くような曖昧な手応えとともに斬撃は迷宮の壁を数枚吹き飛ばして終わる。
「猟犬か、てことは、もうかなり親玉に近づいてるのかな?」
俺がそう言いながら先ほどとは比べものにならない密度で襲い来る敵と合間に混じる猟犬の処理に俺も混じろうとするとジャンヌはムッとしつつもその魔力をさらに高めた。
「そう言う事ならっ!『我が身は聖女、我が身は救世、仮初めの光をこの身に』!焼き尽くせ!魔女裁判!」
どこからともなく現れた十字架を背負い、いや、その黒く燃え上がる人影のようなものがちらつく十字の鈍器を高速で振り回し叩きつけ、燃やし尽くす。その範囲と熱量に迷宮が一部炭化し神話生物は吹き飛んでいく。
どうやら彼女の焔は彼女のトラウマである焼け落ちていく家屋や村々の記憶と彼女を選んだ旗に宿った聖女が焼かれた時の火刑の炎から生まれた全てを灰にする攻撃的な面と全てを受け止める聖女の献身の両面を持つ彼女らしい能力へと進化を遂げたらしい・・・うむ、つおい!
「ほら!いくわよ!」
「ミゼール、道はあってるのか?」
「大丈夫、どうやら兄様は君が気に入ったみたいだ。迷宮をかなり捻じ曲げてこっちが引き寄せられてるくらいだから後ろに行ってもつくよ。」
焼け焦げた巨大な十字架を担ぎ、いつの間にか聖女の旗を身に纏う彼女が手を一振りすれば一瞬で炎が道を作り、熱とその性質で敵を吸い込み燃やし尽くす。
俺はその異様な光景と、自分が少しとはいえ手助けしたことで開花した才能というやつに大人気なく喜色を浮かべた。
『ヒミツ!あんたなんかやったでしょ!?』
「あ?なんだよ。」
燃え上がる道を進み巨大な門の前に着いたがそこでジャンヌが真っ白になって燃え尽きたように倒れたのでそこで野営することになり、ジャンヌに魔力を送り込みながら焚き火を作ると同時に念話でかなり慌てたマーリンの声が響く。
「どうかしたのか?」
『突然次元の裏から塔が現出したと思ったら変形して、デッカいゴーレムみたいな化け物に・・・ああ!もう!』ブツっ
唐突に打ち切られた念話に驚きながら周りを見渡す。どこにも変化はない。
「それはそうさ、アレでも神の座を簒奪した男なんだよ?時空間の操作なんてお手の物だし、見た目の質量以上の変形合体くらい簡単だよ。」
「物理法則さんに謝れ。」
いや、剣と魔法の世界でそれは酷か、そもそもがなんで息ができるかとか重力があるのかとかが意味不明な世界だし、それに俺自身今更それくらいじゃどうってことないって感じだし。いやー、染まったなぁ。
思いふけるヒミツを見ながら、しかし彼は敏感に空間の支配権が塗り変わるのを察知し身構える。
先ほどまでの人のいい笑みのままミゼールはその制限を解除していく。
「それにさっき言った通り彼は君にご執心らしい、それこそ僕とのお遊戯を忘れて君をこっちに引き寄せるのに一生懸命になったりするくらいには。」
「ん?おいミゼール、いったい何を隠して「さ、ヒミツ。その邪魔な聖女様が起きないうちに始めようか。」」
ミゼールも枷がなくなると同時にヒミツはジャンヌを焚き火付近に寝かせて結界を付与、ミゼールの無くなったはずの神格から発せられる魔力とそれによる衝撃波でヒミツの体が吹き飛ぶが瞬間的に再生、いつの間にか鎧も着ている。
「・・・なんのつもりだ。」
「ふふっ、なんだと思う!?」
一つ確かなことは侍女であるはずのキティも気絶させられていること、そしてミゼールの顔に余裕がないという事だけだった。
突っ込んで来るミゼールにヒミツはアンサラーを抜き放ち、同時に聖剣を発動させおそらく初めてとなる左腕の変形機能を最大に使った裏技を発動させた。
ガシャガシャと機械的な音を立て変形する左腕の形、そして魔力炉に完全に火が入ると同時にまるでヒミツの左目のように、タヌキチの、ヘクトアイズの大量の目が輝き、光はヒミツのうちに込められていく。
「聖剣、抜刀。」
いつになくテンションが低いヒミツの体は今までのように魔力を外で操作するような事もなく、ただ静かに、まるで聖剣を抜いていないかのような見た目の静かさを保っていた。
唯一左腕の周辺にだけ黒い何か細いものが浮いているように見えたが、ミゼールがそれを正しく認識する前に一撃は放たれていた。
「ハッ!?」
「成功か…どうにもこの世界で上手くいかなかったことがあまりないな。」
そこにはサイコロステーキみたいになってモザイクがかかったミゼールともう一人分のサイコロモザイクが造られていた。
「鋼糸術、ま、魔力ゴリ押しだけどね。」
「そっかぁ…」
ぐちゃりグチャリとサイコロステーキが組み合わさり、ミゼールは蘇る。しかしその顔色は優れない、何故だろうか凄まじい焦燥を感じる。
「・・・すまないヒミツ、依頼変更だ。」
「ふむ?」
「死んでくれ。」
ヒミツは何も言わずに彼の目を見て左目を輝かせる。そして硬質な、金属と金属がぶつかり合うような音がした。




