計画?立ててませんが
本の中の少女は星空のもと、遂に得られた自由を感じていた。
ならばと実行は夜にうつすこととした。
それまでの時間を絵本を読んで潰した結果、抜け出す方法はよく頭に入れることができた。
簡単にいえば、壁にうっすらと描かれた魔法陣のようなものに手をかざすだけ…らしい。
この世界って魔法なんて存在していないはずなのだけれど、そこは乙女ゲーム主義といったものか。どうやら、シナリオ内ならこう言った要素も追加してくれるようだ。もしかしたら私も魔法を使えたり?なんて思った私が少し恥ずかしいです。
ふと格子から覗く空を見上げる。そこには黒く染まった空を星々が飾り、月明かりにうっすらと照らされた森は朝とはまるで違った雰囲気を醸し出していた。ぼうっとその光景を眺める。
この国でのハーレムもいいけれど、もしかしたら自国へ戻ることができるかもしれない…!なんて淡い期待を抱きながら。
頭上には星々がよく輝いている空が続いている。
あたりには一面、木などは一切なく、白く、うっすらと透けている花々が咲き誇っているのみだった。
その光景はまるで物語のようで、絵本で見た光景、そのままでもあった。
魔法陣に触れた瞬間、ぼうっと辺りが白く輝いたかと思えば、気づけばどこかもわからない場所へと飛ばされていた。
転移魔法か何かだろうか。
けれど、まるでゲームのシナリオに出てくるかのような幻想的な雰囲気の場所だということから転移は成功したと見ていいだろう。
さて…ここからどうすればいいのかな?
本の通りだと、このあとどこか小道に入ったあたりで塔のような場所に辿り着いていたはず。そして
「延々と続くかのような長く長く伸びる塔の階段を登っていく。ようやくついたそこは満点の星空のもと。少女の見たことのない美しい景色を彼女の目に映したのだった。」
という描写で物語は終わっている。
どこまでもこの絵本が乙女ゲームに沿っているかわからない以上、必ずしも本に従ったからといって目的が達成できるかわからない。
けれど、なにも道標がない以上、従うしかないだろう。
計画性がないと思われても仕方がないだろう。ノープランで結構。これもひとえに時間がないせい……決して私の計画性のなさによるものではないのだ。
こうして、私は今後の進路である塔に向かうため、小道を探すことにしたのだった。