表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/195

2つの復活

 翌日、町中に噂が広まっていた。

 ギガコウモリに続いて、誰が万年眠亀テンサウザンドスリーピングタートルを倒したのかと。


 常連のおばさんが店に来て教えてくれた。

 言葉がほとんど言えなかった頃、『ババア』に近い発音を言ってしまった人だ。


 新しいツルの商品を買いにきてくれた。

 なんでも、お孫さんにあげるらしい。


「それでね、街の中からでも最大魔法を見た方が大勢いらして、誰かが魔物と戦っていると言うんですよ。

 私も家の外に出ましたら、巨大な竜巻が丘の方に出現して、度肝を抜かされましたよ。

 そして……、」


 な、長い。

 まだ続くの?


「……ですって。

 ギガコウモリを倒した同じ人ではないかと誰もが思っているんですよ。

 それでね、

 候補として上がっているのがヒミングレーヴァ王女でしょうか。


 大賢者のご子孫で、学園でも一位二位を争う程だそうですよ。

 あと候補に上がっているのがラーズスヴィーズルですね。


 彼は……」


 えーと、この後も長々と話している。

 知らない人の名前がこのあと出たので、頭に入ってこなかった。


 このおばさんは、誰かに話したいだけなんだと思った。

 父ちゃんが言うには、俺が店に来てから上機嫌で話すようになったと言っている。


 俺の笑顔の効果?


「……、と言う噂を聞きましたのよ。

 あら、こんなに長く話してすみません。


 このツルを買うのでお勘定をお願いしますね。

 あら、トルムルちゃんは、今日は元気がないみたいね」


 えーと……、元気はあったんだけれど……。


 話が長すぎて何もできなかった。

 家族以外の前では本を読めないので……。


「私が抱っこしてあげて、元気付けてあげますね」


 そう言うとおばさんは俺のところに来て抱き上げた。

 そして、その大きな胸で抱いたくれた。


 こ、ここは。

 ヤッパリ、笑わないといけないよな。


 この人は常連さんなんだから。


「バブブブゥーーー」


 俺は軽く手足をバタバタさせた。

 そして、ハグキを見せて笑った。


「ほら〜、トルムルちゃんが元気になったわ。

 あら……?」


 おばさんが俺をジッと見ている。

 も、もしかして、わざと笑ったのがバレた?


 ハグキを出して笑ったから、少し不自然だったか……。

 し、しまった〜〜!



「トルムルちゃん。もしかして、乳歯が生えかけているみたいですよ」


 え……?

 乳歯?


 ほ、本当に?

 俺も気が付かなかった。


 そういえば、ハグキに違和感がある。

 舌で触ってみると、何かが当たる。


「トルムルに乳歯が生えてきたんですか?」


 父ちゃんが飛んできて、俺を抱っこした。

 そして、俺の口を指で開けた。


 ジッと俺のハグキを見ると、喜んで言う。


「本当ですね。

 小さな乳歯が生えかけていますね。


 今の今まで知りませんでしたよ」


 本当に生えてきたんだ。

 やっと。やっと歯が……。


 こんなに長く待ちわびたことはなかったよ、俺。

 これで、離乳食から卒業できる。


 ま、徐々にだろうけど。

 でも、スッゴク嬉しい。


 俺は喜びのあまり、再び手足をバタバタさせた。


「よかったわねトルムルちゃん」


 おばさんは会計をすませると。今回も上機嫌で帰っていった。


 アトラ姉ちゃんも仕事を止めて、わざわざ俺の乳歯を見にきた。


「可愛い乳歯だね。

 トルムルよかったな」


「バブゥー」


 俺はそう言うと右手をあげる。

 アトラ姉ちゃんも、自分のことのように喜んでくれている。


 でも、姉ちゃんは心の底から笑っていないのがわかる。

 令嬢方が罠にはめたことが尾を引いている。


 笑ったかと思うと、ふと窓の外を見る。

 その方角は姉ちゃんが元いた国の方角だ。


 もしかして、彼氏でもいたのかな……?

 アトラ姉ちゃん美人だから……。


 とにかく、計画通りに進めないとな。


 俺は再び椅子に降ろされると、続きの本を読み始める。

 読んでいる本は大賢者の本ではない。


 この本は父ちゃんが持っている本で、魔剣に関しての本だ。

 この本の中に、ギガコウモリの魔石付与に関する箇所を見つけるためだ。


 大賢者が書いてはいたが、数行しか書かれていなかった。

 俺はもっと詳しいことを知りたかった。


 あった。

 数ページに渡って書かれている。


『魔剣の中では、すでに幻になってしまった魔剣に含まれる』


『最強の魔剣の中でも、五本の指に入る』


『殆どの防具を、一瞬で破壊できると言われていた』


『その魔法の種類が特定できていない。よって、実際にスキルを持っている者が誰も居ない』


『もしこれを持つことができれば、魔物の防具を無力化して有利に戦いを進めることが可能である』


『剣の名前は超音波破壊剣ソニックウエーブディストラクションソード


 やったね。

 俺はすでにスキルを持っているので、超音波破壊剣ソニックウエーブディストラクションソードができる。


 これで伝説の魔剣と、アトラ姉ちゃんの復活だ〜〜!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ