閉幕
(side.ミエーネ)
出逢えない不幸と、出逢えて失う不幸ならばどちらがマシかという問いへの答えは、刻々と変わる。
途方もない喪失感に浸されながらも愛に満ちた日々を思い出せば幸せの残滓が胸を満たしてくれることもある。
だが一方で、空っぽの自分がどうあっても埋まらないことは一瞬たりとて忘れてはいられない。
最期の愛の唄を受け取ったあのとき、すぐさま選べばよかったのかもしれない。
彼の人と共に還ることを。
同じ場所へと願い続けた日々は、それでも仲間たちと共にあり。それなりに普通に生きていたのだろうとも思われるが、果たしてどうだったのだろうか。
眼下に暴れる竜脈のうねりの中に、城が、森が、エルフたちが沈んで行く。
恐ろしく残酷なその光景は、けれど光り、跳ねる竜脈の輝きのせいでとても美しくも見える。
竜脈の奥へ、更に地の奥へと目を凝らし、ミエーネはじっと彼の人の姿を探した。
見つからないことなど、わかっているのに。
それでも探してしまうのだ。
もう一度、あの音がこの胸を震わせてくれないかと。
――リィン…………
ゆるり、と口元が綻んだ。
瞬く間にひとつの国を呑み込んだ竜脈が最後に一度、たぷん、と揺れる。
「待たせたな、アートル」
一言だけ呟いて、静かに翼を畳む。
躊躇いなく飛び込んできた黒竜を、黄金色のうねりが柔らかく抱え込んだ。
それはまるで金色の竜が翼を広げ、最愛の人を抱きとめたかのように。
ー了ー




