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教育問題

「一通り見てどうだったよ?」

書類仕事をしに、先に戻ったニュクスと違い。カエは街娘の格好に着替え、アルトゥルとライネの3人で遅めの朝食を食べに街へ出ていた。


「結構、面白かったよ。魔法で代用していた作業を無人の機械にやらせれば作業効率が上がるし、兵器も予想以上に独創的だったし」

格好にあわせて、少女の様な口調になっていた。


「野外試験場はどうしようか?」

ニュクスとの会話を聞いていたアルトゥルは野外試験場の事を尋ねた。

「エルノが捕まっていた城はどうかな?兵士を駐留させているし、人が立ち入らないし」

「いや、ダメじゃねえか?山を下った先に神聖王国が街を造って入植してるぜ」


前回の騒動の後、クヴィル族の騎士団が斥候を派遣していたが山の向こう側に人間の街が建設されているのが確認できた。まだ、建物の多くは基礎工事をしている段階だったが、入植した農民が開墾した土地に種を蒔いていた。

今のところは監視の為に城に兵士を駐留させ。定期的に斥候を出させてはいるが。


「尚更良いんじゃない?斥候に出してる兵士だけじゃ示威行為としては薄かったし。いずれは前線の警戒の為に本格的な駐屯地にするつもりだし」


既に城に通じる街道整備の作業員の募集と資材の調達を開始していた。

「関連施設は城の近くに置いて、山のこちら側には試験場を作れば直接は見られないし」


「具体的には何処まで話が進んでるの?」

「貴方達の学校とマルキ王国からの亡命者を中心にした兵士、それにポーレ族の兵士を中心に………って何?」

ライネとの会話の最中に、アルトゥルの耳が嫌そうに倒れた。


「赤居んの?」

「?」

「別に、転生者のロシア人しか居ない訳じゃないでしょ」

「?」

「嫌だね。共産主義が感染(うつ)る」


カエを置いてきぼりに会話が進んでいく………。

「またか………。別に目くじら立てなくても良いでしょ」

「いんや、アイツ等が試験場に近付くなんかゴメンだね。また、技術を全部盗んで気付いたら此方に銃口を向けてくるにきまてらあ」


通りの真ん中で道幅が半分になる形で、若い男が通行人を誘導していた。どうやら、クレーンで箪笥を吊り上げる所のようだ。

「マルキ王国の亡命者の中に科学者が居るし、ちょうど良いでしょ」


引っ越し作業で、クレーンを使い建物の4階に箪笥を上げている横を通り過ぎてもアルトゥルは不機嫌そうだった。


「そんなに嫌?」

「ああ」

「どうしても?」

困った様子のカエに言われ、アルトゥルは答えに窮した。

確かに嫌だけど、カエを困らせる程じゃないが………。

「判ったよ。我慢するよ」

「そう、ありがとう」




「此処だ」

アルトゥルの案内で小料理屋に到着した。

「ふうん………何のお店?」

店の看板と内装も何処か赤い。アルトゥルは“赤が嫌い”と言っていたが、この店は全体的に赤かった。


「トマト料理だよ」

アルトゥルは“古代ローマ人って何食うんだ?”と悩んだ末、“まあ、イタリア料理っぽい物で良いか”とお気に入りの店の中から、トマト料理の店を選んでいた。

アルトゥルが「ちょっと待ってて」と言い残し、店の中に入った。


「意外だ………」

「何が?」

「いや、“赤が嫌い”ってさっきまで言ってたのに、赤いお店に案内されたから」

ライネが「ハハハ…」と笑ってから説明をしてくれた。


「いや、違うんだよ。アルトゥルが“赤”って言ってたのは、共産主義のシンボルカラーが赤だから、蔑称で“赤”って言ってただけだよ」

「シンボルカラーか。成る程」


「席が空いてるってよ」

混み具合を確認してきたアルトゥルに案内され、テーブル席に着いた。

「………何しに来たの?」

注文を取りに来た女性店員がアルトゥルを見て、一言漏らした。

「あれ、君は確か」

「いいじゃん。姉妹が働いてる所を見ながら飯くってもよ」


女性店員はアルトゥルの姉妹の一人だった。

「まあ、良いけど。何食べるの?」

「ラザニアとスープを3人分。飲み物はどうする?」


「ワインで」

「ダメ、未成年だろ?何か葡萄ジュースで」

聞いておきながら、違うものを注文された。


「ちょっと待てい!」

「なんだい?」

「私は18だぞ、成人だぞ、子供も居るぞ!」


アルトゥルとライネはカエを上から下までじっくりと眺めた。

「12ぐらいだろ?」

「今14歳の僕らより小さいしね」

「~~っ!」

またかと思いつつ、アルトゥルの姉妹に助けを求めたが苦笑いをしながら「葡萄ジュースですね」と言い残し、厨房に消えて行った。


「いやさ、見えないよ。君達は童顔の上に、背が低いし、華奢だし」

ふーっと鼻からため息を吐いたカエは「貴方達が大きいだけなのに」と愚痴り、そっぽを向いた。


(正直、仕草も子供っぽいよね)

(てか、18も酒飲んじゃダメだろ)

「聞こえてるわよ」



「アルトゥルが女の子を連れてきたけど、誰だろ?」

厨房に入ってきた姉の一言に、もう一人の姉妹は厨房から客席の方を覗いた。

「んー?誰だろ?一緒に居るライネさんの妹さんとかじゃない?」

アルトゥルと一緒に産まれた兄弟は4人。その内の姉妹2人がこの店で働いていた。

「ちょっと、そう言う雰囲気じゃないんだよね。新しい彼女かと思ってさ」

「一昨日、前の彼女と別れたばっかで次の彼女とか無いんじゃない?アイツそんなにモテないでしょ」


身内の恋ばなに話を弾ませながら、2人は忙しなく調理作業と配膳の準備をした。





「こちらがヤツェク長老の魔法学校案になります」

マリアが書類の束を机に置き、ニュクスはじっくりと中身を精査した。

執務室に戻るなり、ニュクスはリーゼとマリアから差し出される書類の処理をしているのだ。


「士官学校ね………。面白いわね」

ヤツェク長老が提案した魔法学校は、軍の士官を育成する士官学校のカリキュラムに魔法のカリキュラムを入れたものだった。

「コレも進めましょう」


既に冒険者ギルドから出ている魔法学校案は、少年兵や一般兵に魔法を教え、全体の戦力を底上げする事を主眼としていた。

一方のヤツェク長老の案は、騎士や部族長が主にこなしている指揮官を育成して軍全体の組織化をはかる物で、ニュクスは面白いと承認のサインと御璽を押すとリーゼに手渡した。


「此方は公立学校の案になります」

「公立学校?」

ニュクスが眉をひそめつつ、書類を読んだ。


「個人で教育を受けたりしないの?読み書きや計算まで国が関与すべきでは無いでしょ」

ニュクスからすれば、読み書きは教養の有る学者に師事するか、街の私学校で習う物と思っていた。

ところが書類の構想では、私学校に入れ無い平民を主な対象にしていた。


「確かに、私の様に家が裕福でしたら私学校に通えますが。殆どの人は読み書きを出来ないですし。カミルの部下のライネ君は家が裕福ですから判りますが、農民の息子のアルトゥル君や冒険者の息子のトマシュ君が読み書き出来るのはかなり例外です」


アルトゥルの場合は、腐ってもアメリカの上院議員。地頭の良さから四苦八苦しつつも、4歳の時からファレスキの街に住む冒険者の家に通い、計算を教える替わりに読み書きを教わる条件で何とか読み書きは出来るようになっていた。

トマシュの場合は母方の祖父が“いずれ役に立つだろう”と、人狼が使うポーランド語の読み書きだけでなく、ゴブリンが使う英語やドワーフが使う仮名文字を教え、実際にゴブリンやドワーフの街に連れて行ったりしていた。


「庶民で私学校に通ったりする人は居ないの?」

「ええ、殆ど。通えるのは比較的裕福な庶民だけです」


暫く書類の予算関係のページを見つめたニュクスは「保留で」と短く言うと、リーゼに書類を手渡した。

「宜しいので?」

転生者で、小学校に通った経験があるリーゼはニュクスの意外な反応に思わず聞き返した。

「予算と人員を優先的に割く必要がね」


ドタドタと足音がし、誰かが執務室のドアを叩いた。

「魔王様!宜しいですか!?」

声の主はカミルだった。


「構わん。入れ」

扉が開き、カミルとエミリアが部屋に入ってくるなり、大急ぎで扉を閉めた。

「どうしたの?」


様子から、姉のマリアがカミルに尋ねたが、カミル部屋を見回すまで一言も喋らなかった。

「この部屋には私達だけだし、音が漏れないようにしたよ」


内密な話だと察し、ニュクスは部屋全体を無音化した。


「侵略です。南から人馬侵略の連絡が届きました。昨日、人馬の大部隊が越境。国境を接するヴィルノ族が兵を上げました」

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