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ポルツァーノ兄弟とイゴール卿の過去

間違えて投稿した内容から差し替えました

−1953年 9月7日 13時27分 ニューヨーク市 ポルツァーノ邸



「お義母さんは先に正門の方に行ったわ」

 鏡の前で髪を整えているルイージに彼の妻がそう伝えた。


「うん?ああ、もうそんな時間か」

 腕時計で時刻を確認したルイージはスーツの上着を手に取った。


「ねえ、今日イタリアから訪ねて来るカルロさんってそんなに大事な人なの?」

 結婚して2年経つが、ルイージの妻はポルツァーノ一家がここまで浮かれているのは初めて見た。ルイージを始め彼の母親までもが、そのカルロの到着をこの数日間待ちわびていたのだ。


「……ああ、そうか。君には言ってなかったな」

 ルイージは一瞬、妻に言っても良いか考えたが、結婚して2年も経つし、妻に秘密にしておく必要はないと考えた。


「俺の兄なんだ。父親違いのな。……マーマ(ママ)がイタリアに住んでいた時にオーストリア人の人と付き合ってたんだ。だが、両親が結婚に反対してる間に妊娠したんだけど、相手の人が事故死してな。それで生まれたカルロ兄さんは親戚に預けられたんだ。……俺も5歳まで向こう(イタリア)に住んでたから面識は有るけど、何時も遊んでくれたよ」


「ルイージ、居るかい?」

 弟のマリオが扉をノックして、暫く間を置いてから扉を開けた。


「そろそろ着くそうだ」

「ああ、判った。今っ」


 ルイージが一歩前に歩き出した時だった。


 突然、屋敷が揺れ、衝撃音が聞こえてきた。


「何だっ!?」

「おい、どうした!?」


 マリオが音がした方向……。屋敷の表に向かって叫ぶと、返事が帰ってきた。


「ダンプが正門に突っ込んできた!」


「ダンプ!?何で……」

 屋敷の周囲は幹線道路から外れており、周囲で工事などしていなかった。

 ルイージが戸惑っていると、さらに表の方から銃声が聞こえてきた。


「襲撃だ!銃を持ってきてくれ」





 ルイージとマリオが表に出ると、ダンプカーが正門を突き破り、銃を持った男達が屋敷の中に入ろうとしていた。


「誰だ!?」


 ルイージは、車の陰に隠れショットガンに弾を込めていたクオーレに話し掛けた。


「判りませんよ、いきなり襲って来たので」


「マーマは?マーマは何処だ!?コッチに来てるはずだ」

「奥様が!?」


 マリオに言われ、クオーレは車から顔を出し、辺りを見渡した。


「私は見てません……」


 屋根の上やバルコニーから屋敷に詰めていたポルツァーノファミリーの構成員がライフルやショットガン、更には軍の放出品の機関銃で反撃を始め、襲撃者の勢いが削がれた。


「先にアイツらを蹴散らすぞ。援護だ(Cover)!」


 ルイージが屋根の上に居る部下に援護射撃をするように指示し、自身はクオーレ達を率いて一気に近付いた。


 襲撃者達は機銃射撃の銃弾を避けるために頭を下げたので、ルイージ達の接近に気付いたのは側面からショットガンで撃たれた時だった。


「続けぇー!」

 構成員の殆どが軍人上がりで、ルイージ自身も第2次大戦に出征していた経験が有ったので、一気に形勢が逆転し、襲撃者達は慌てて乗り付けてきた車に戻り始めた。


「ルイージ!兄貴の車が!」


 兄のカルロを迎えに行っていた車が屋敷近くの路肩に止められていたが、フロントガラスは銃弾で穴だらけだった。


「行くぞ!」

「判りました。援護しますよ」

 襲撃者達は10台ほどの乗用車に乗込みつつ、銃を乱射しながら逃げようとするが、クオーレがショットガンを放った遺髪が運転手に当たり、車が一台塀に衝突した。また、通りの角で襲撃者の車がトラックと正面衝突したのが確認できた。


「カルロ兄さん!」

「兄貴!」

 姿勢を低くしながら駆け寄ったルイージ達が車内を見ると、運転手がハンドルを握ったまま絶命していた。


「ルソー……くそ、死んでる」

「だが、兄貴は?」

 胸を撃ち抜かれた部下しか姿が見えず、カルロの姿が見当たらず、後部座席が僅かに開いていた。


「居た、外だ!」

 車外に這い出し、歩道で横たわっているカルロの姿があった。


「兄さん!撃たれたのか!?」

 カルロは白いスーツを着ていたが、血で赤く染め上がっていた。


「ル…ルイージか?マーマが……ダンプに」


「奥様ー!あああ……」

 背後からクオーレの叫び声を聞いたルイージはその場に固まった。


 振り返る勇気が沸かなかった。ダンプは門を突き破っている。それに、自分の母親がなど……。


「おいこら、銃を捨てろ!」

「ニューヨーク市警だ!銃を捨てろ!」

 通りの角で事故を起こしたと思っていたトラックから私服姿の若い男2人が降りて来たが、警察バッジを左手で掲げた状態、拳銃を右手に持ちながら近付いてきた。


「おい、フランツ」

 1人がダンプに気付き、もう1人の男に目線で示した。

「……家族か?」

 フランツと言われた警官はダンプの方と、血を流すカルロを交互に見ながらルイージに説明した。


「あ…兄と……母親だ……」

 暫くルイージを眺めていたフランツは短く言い放った。


「俺達はお前達が出ていくのを見ていない」

 最初は呆気に取られていたポルツァーノ一家の構成員だったが、クオーレが叫んだ。


「何をやってるんですかあなた達は!さっさとアイツらを追うんですよ!地獄の底まで追い回して嬲り殺しにしなさい!」

 クオーレが檄を飛ばし、部下達は屋敷に止めてあった車に乗込み襲撃者の後を追い始めたが、ルイージは恐怖と怒りで動けなかった。

 やがて、目の前で倒れるカルロも動かなくなり、パトカーのサイレンが聞こえてきた。


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