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ニュクスとの合流

そろそろ章分けするかな

「撃て!撃てぇ!」

地上でも、兵士達はパニックを起こしていた。

既に殆どの兵士は遺跡から逃げ出し、残った兵士達は森から現れた1体の金属製のゴーレムに銃を撃っていた。


「急げ!」

既に動けるオートマタを全て出し、機関銃を撃ち込んでいるが全く効果がない。


「用意よし!」

「撃て!」

パンツァーファウストも放たれ、ゴーレムの顔に3発命中した。


「危ない!」

しかし、ゴーレムは止まらず。水壕を渡り歩くと片手でオートマタをつまみ上げた。


イシスが地下へ縦穴を掘った時の轟音とズヴェルムの誘導で遺跡に辿り着いたニュクスが地中の磁鉄鉱を集めて創ったゴーレムを遺跡の兵士にけしかけていたのだ。


「うわ………。特撮映画みたい」

「一時流行りましたよね。ハリウッドでも日本でも」

ニュクスの護衛に当たっているドミニカと彼女の従士のルジャは逃げ出した敵兵の追撃に参加せず、物陰から様子を観ていた。


「あ、投げたわ」

「ひえぇぇ」

他の従士、ゲルベラとリリアは初めての光景を見て、騒いでいた。

高さ30メートルを越える巨大な金属製のゴーレムがオートマタを防壁に叩き付け、オートマタは完全に砕け散り、防壁上の兵士を捲き込む形で崩れ落ちた。


「私達の出番は無さそうですね」

ルジャは圧倒的なゴーレムの様子を見て、少し残念そうに言った。

「これから忙しくなるだろう。アイツらが投降したら、尋問と身柄の後送………。尋問は私達も聴く必要が有りそうだしな」

「………と言っても、私は“元”タイピストで、ナチの事とかあんまり知りませんよ?」

水壕の端から4人組が手漕ぎボートで逃げ出しているのにドミニカは気付き、兵士に追うように指示を出した。

「それを言ったら、私なんか“元”主婦だぞ」

「ドミニカ様」

カミルが慣れない馬を必死に操りながら現れ、大急ぎで馬から降りると小走りしながら近付いてきた。


「ニュクス様から伝言です。“遺跡に突入する部隊の指揮にあたれ”との事です」

「突入となると、何処から…」

「あ、ドミニカ様!あれ!」

ゴーレムが防壁の一部を完全に蹴り飛ばすと、そのまま後ろ向きに倒れた。

「え!ちょっとカミルさん!」

「ドミニカ様!ゴーレム死んじゃいましたよ!」

ゲルベラとリリアはゴーレムが倒れた事に驚き、慌てふためいた。


遠くにニュクスの姿が見え、ドミニカが確認すると。ゴーレムが倒れた時に出た水柱を悠然と眺めていた。

「落ち着きなさい!貴女達と同世代のニュクス様は落ち着いているのよ!もう少し戦場(いくさば)に出ている緊張感を持ちなさい!」

「「ふぁ!はい!」」


(ニュクス様は歳上なんだよなあ)

ドミニカも、ニュクスを含め魔王3兄妹の年齢を勘違いしているのを知ったカミルは苦笑いした。


「ドミニカ、彼処から入れ。銃を持った兵士は粗方無力化したが注意しろ!捕虜は無理に捕る必要は無し、抵抗するなら殺しても構わん」

ニュクスが風魔法で遠くから指示を出してきた。

「ハッ!」

カミルはその様子を横目で見つつ、ゴーレムに視線を向けると、ゴーレムは人型から橋の形に変形していた。

(たまげたなあ………)


ドミニカはニュクスに頭を下げると、剣を抜き叫んだ。

「突入するぞ!抵抗する敵は切り捨てて構わん!」

「「「「おぉーーー!」」」」




「居たぞぉ!」

一方、森の中に散っていた人狼や亡命マルキ王国の兵士が遺跡から逃げた敗残兵を見付けた。


「クソ!」

既に、ライフルや軍服を脱ぎ、一般の狩人か旅人に変装していた敗残兵は、ただただ逃げるしかなかった。


「急げ」

しかし、彼等は森の事を知らなかった。案内役の居ない状態で闇雲に逃げ回った所で逃げ切れる訳はなかった。

「あっ!」

「動くな!手を上げろ!」

逃げているつもりが、兵士達の前に飛び出してしまい、敗残兵は投降した。


「ナチか!?あ"ぁ!?」

敗残兵はポーレの兵士達に棒等で殴られながら質問した。

「何?」

「ナチか聞いて、んだ、よ!」

惚けようとしたが、答えるまで殴り続ける勢いで殴られ、兵士の1人が嘘を言い始めた。


「ち、違う。神聖王国の者だ」

誤魔化してその場を凌ごうとしたが、次の瞬間、兵士は後悔することになった。

「このコミュニスト(・・・・・・)が!」

直ぐ側に居た亡命マルキ王国の兵士が剣で敗残兵の肩を刺したのだ。


「おい!」

慌てて、亡命マルキ王国の兵士をポーレの兵士達が引き離した。

「何やってんだバカ!」

「離せこの!」

幸い急所を逸れていたが、刺された敗残兵は悶え苦しんだ。


「おい、マルキの人間に殺されちゃかなわん。ニュクス様の所に連れていくぞ」





「あーっ!?どうした!?ってか、どうしよう!?いかん、素数を………数えとる場合かー!」

転移門に組み込まれた制御回路が起動し、世界が崩壊するのではとロキはパニックになり叫びまくっていた。


「………………何も起きんな?」

騒ぐだけ騒いで、今度は何も起きないのでロキはスマフォを取り出し通話を始めた。


「あー、フェン君?私だ!」

「あの、ロキ様?」

アガタがアスマン中尉をロープでグルグル巻きにしながら呼び掛けた。


「え!………あーそうなの?あらら………。あー」

「フランツが……ちょっと?」

「あ、待って」


アガタを制止しフェンリルから何が起きたか報告を受けた。




「なので、世界が崩壊する心配は有りませんが、2人程向こう側へ身体ごと転移したようです。場所は1986年のニューヨーク、転生者のフランツ・バーグ氏の死んだ場面に転移しています」

フェンリルがタブレットを操作すると、転移したフランツの様子が映し出された。

「あー。バーグ氏ですが、人狼の姿のまま向こう側に飛ばされています。どうしますか?」


『安定度は?自壊しない程度の安定度だとすると、誰かが転移するとか何かした拍子で世界が崩壊したら洒落にならんよ』

「待ってください」

フェンリルがタブレットの画面を切り替え、幾何学模様がごちゃ混ぜになった映像を映した。

「自壊する恐れは有りません。むしろ、中途半端に魔力が溢れたお陰で損傷の修復が始まっていますが………。転移はまだ止めた方が宜しいかと。負荷が掛かりすぎます。三途の川経由で魂の移動程度か、通話(・・)程度なら可能かと」

『あー判った、ありがとう』




「お待たせ。みんな喜んで良いぞ!世界の崩壊は起こらない!………ただ、バーグ君が元の世界に転移してしまったが………。まあ、じきに戻って来れるさ。うん」


「ちょっと、それって!」

アスマン中尉を簀巻きにしたアガタが詰め寄った。

「フランツは大丈夫なんですか?」

「あー、大丈夫だよ。後で電話を掛けておくし。転移が可能になったら迎えにいくから」

人狼姿で人間しか居ない世界に転移した不都合をこの時のロキは失念していた。




「大人しくしろ!」

「ひぃ!来るな化け物!」

遺跡の地上部分では、ドミニカ達がナチの兵士相手に戦っていた。既に、頼みの綱のオートマタを全部壊され、銃器も殆ど失った彼等は必死に抵抗するか、ある者は………。


「伏せろ!」

Sieg(勝利) Heil(万歳)!」

尋問される事を恐れ、手榴弾や地雷で自爆して死を選んだ。


「何て事を………」

リリアは目の前で兵士が自爆したのを見て口元を押さえた。

「死んでも生まれ変わる、彼等はそれを知っているのよ」

ルジャは目を背けつつ、吐き捨てるように言い放った。


「ん?」

カタカタと遺跡の建物が揺れ始めた。

「地震!?」

「違う、何か出てくるぞ!」

ドミニカが下から何か来る事に気付いた。


「構えろ!」

ドミニカの指示で兵士達も身構えたが、出て来たそれを見て思考が停止した。

「なっ………え?」

出てきたのは直径10メートル以上はある巨大な土団子、それが地表に表れると水壕に向け転がりだした。

「………っ!おい、避けろ!」

仲間の兵士達が進路上に居ることに気付き、ドミニカは慌てて避けるように指示を出した。


「ドミニカ様、あれ………人の腕です………」

ゲルベラが土団子から数十人分の腕が見える事に気付いた。


やがて土団子は水壕に落ち、水に溶けると、中から泥まみれになったナチの兵士達が出てきた。

「え………、何?………えー」

「あれ?ドミニカさん?」


ニュクスの声がしたと思い、ドミニカが振り向くと人猫のイシスが立っていた。

「イシス様」

慌ててドミニカは礼をし、事の経緯を説明し出した。

「魔王様より、“イシス達がナチから襲撃を受けた”、“それの対応の為に予定を変更し大森林を突っ切り遺跡にまで出よ”と命令が下り、ニュクス様と共に馳せ参じた次第です」


まさか、こんなに早く援軍が来るとは思っていなかったイシスだが、楽が出来るなと安心した。

「では、ニュクスの所にまで案内して、詳細はそこで」


色々と伝えなければいけない事が起きたので、イシスはニュクスと会うことを優先した。

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