34話
悪魔のルール。
これを破ったものには罰を与える。
簡単な内容だから、誰でも楽に覚えられることである。
『契約者を横取りしてはいけない。契約者を掠め取るような行為もしてはいけない』
結んだ絆を破綻させれば、待っているのは悲劇のみだ。
人間は弱くて脆い生き物なんだ。彼らの精神は大きな力を前にしてすぐに壊れてしまう。何度も契約を結べば、強大な力であるそれは彼らを蝕むことに変化する。
彼らは耐えられない。何回も大きな力を受けられるようには作られていない。彼らの精神崩壊が世界の存続を脅かすものになってしまう。それは彼らが弱いからこそ起こってしまう出来事なんだ。
不思議な玩具がある。空気を入れて膨らませるもの。でも、空気を入れ過ぎたら、大きな破裂音を立てて割れてしまう。さまざまな色があるそれは、うまくいくと飛んでいくのにね。
小さな器に大きなものを詰め込もうとしても、結局は入らない。無理なんだよ。何度も契約を結ぶなんてことはさ。針を刺したら、大きな音を立てて、破裂していく不思議な玩具と同じだよ。
元人間と悪魔。愛する者同士の契約を引き裂けば、より悲惨なことが起こるよ。
ルールは守れ。契約するのならば、他の悪魔の痕が印がない者とすること。
いろいろと面倒だから、みんな守ってよね。僕が決めたルールをさ。
ヴェルトより。
人間の魂が契約によって壊れたら、僕が面倒なんだもん。悪魔が魂を回収して食べるなどの行為は問題ないんだけどね。世界の管理って億劫なことだらけだよ。
人間の欲望って怖いんだ。世界を壊せるほどのものだもん。だから、絶対に守ってね。悪魔の皆様。
永遠に取れることのない印を持った魂がやってくる。同じ印を持ったものも一緒にね。印によって結ばれ、繋がっている魂。
君たちは今度はどのように出会うのかな。僕もまた君たちのところにお邪魔しようと思うよ。君たちをみていると面白いからさ。
じゃあ、チェサくん。僕の代理をよろしくね。えっと、やだ? 自分も行きたいって? そんなことはわかってるよ。僕たちのために必要な準備をするのに、少しの間頼んでいるんだよ。そんなに不満そうな顔をしない。
なるべく早く帰るからさ。その間だけ、世界の管理をよろしくね。崩壊させてもいいんだけど、僕は彼らのことを気に入っているから、残しておきたいんだよ。そうすれば、いつでも好きな時に彼らの下にいけるでしょう?
うん? チェサくん。僕たちは世界に干渉してはいけない存在なんて誰が決めたの?
ただ気になっただけって……。ルールを決めるのはいつだって僕だよ。率直に言うと、僕がルールなんだ。僕が僕の好きなことをするのに問題なんてないんだよ。
全ては僕の気分次第さ。




