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今日は私たちの結婚式の日だ。天気はいい。教会に行くからあまり派手な服装じゃない方がいいかと考えているとヴァルクネアさんが私に幾つかの箱を寄越した。
「なんですか、これ」
「開ければ分かる」
中に入っていたのは白いウエディングドレスとパンプスだった。それからパールのジュエリー。
「これって」
「婚礼衣装だ。着てくれるな?」
「はい、ありがとうございます。ヴァルクネアさん」
一人きりになって、思わずその箱たちを抱きしめた。嬉しい。ヴァルクネアさん、こんな物まで用意してくれたんだ。おっと、いけない。着替えなきゃ。
ドレスに着替えてパンプスを履いてジュエリーを身につけた。そっと引き出しを開けてこの世界に来てから買った口紅を取り出す。買ったはいいもののちょっと派手だと思ってしまい込んでいたのだ。そっと唇に紅を乗せて、それからヴェールを被る。
「ヴァルクネアさん、用意できました」
扉が開いてヴァルクネアさんが頭の先から爪の先までまじまじと私を見つめる。
「ウメノ、綺麗だ」
「ありがとうございます」
綺麗なのはあなたの方だとは言わなかった。いつもならきっとそう返していた。でも今日は一生に一度の日だから。
教会までは少し距離がある。道は舗装もされていない。パンプスで歩けるだろうか? と不安に思っていたら家を出る直前でヴァルクネアさんに横抱きにされた。人生初のお姫様だっこだ。
「これで移動するんですか?」
「その靴では歩けぬだろう」
「おっしゃる通りです」
道行くシールドの街の人々に冷やかされながら私たちは教会へ向かった。
教会では司祭の前で結婚誓約書にサインをしておしまいだった。誓いの言葉とかは特になかった。そして結婚指輪をヴァルクネアさんにはめてもらって、私はヴァルクネアさんに指輪をはめた。結婚式、これで終了らしい。お幸せにと微笑む司祭にお礼を言って私たちは教会を後にした。
次に向かうのはギルド。ギルド長から来るように言われているからだ。ここでも移動はお姫様だっこだった。
「お前ら、その状態で来たのか?」
「なにか問題があるのか?」
「いやー、いいねえ! 若いって。冷やかされただろ!」
「それはもう。冷やかしと祝いの言葉を山ほどもらいました」
「さあて、宴の準備はできてるぜ。二人とも腹一杯食ってけ!」
ギルドの裏に焚き火とバーベキューが用意されていた。大鍋に入ったスープもある。ギルドの職員さんたちとシールドの街の冒険者たちが勢揃いしていた。皆口々に祝いの言葉をかけてくれる。私はそれにお礼を言って、口数の少ないヴァルクネアさんのサポートに回る。
ああ、私たち、この街で生きていくんだ。そう心から思えた。いつの間にかこの世界に馴染んでいて、この街の住人になって。まだまだ知らないこともあるけどそれでもこの街の住人だと胸を張って言える。
「ヴァルクネアさん、幸せになりましょうね」
焚き火に照らされた横顔はいつもより優しい目をしている。
「もちろんだ」
ヒューと誰かが指笛を吹いた。みんなが私たちを囃し立てる。ああ、今、幸せだわ私。愛する人がいて(本当は人じゃなくて竜だけど)、親しくしてくれる人たちがいて。この世界で前を向いて根付いて生きていきたいとそう思えた。
本当はミアとかルルリアのその後の話もしたかったのですがそれはまた気が向いたら番外編として更新します。今は新しいネタが私を呼んでいます。ごめんなさい。そんなわけでこれで完結です。




