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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8.5章】イグノ君、遺跡調査をする
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8.5−1 特殊祓魔師の嗜み

章間の恒例、イグノ君の近日譚をつらつらと。

今回はハーヴェンさんと一緒に、遺跡調査に繰り出したようです。

(もしかしたら、意外と長くなるかも知れません)

 俺……イグノは今、ゴラニアの西方・ヴァンダートに来ている。目の前に広がるのは、黄金色の砂漠……じゃなくて、早朝でしっとりと薄暗いトーンの砂の山。ま……見事に砂しかないのは、変わりないんだど。砂漠だから、それは当たり前か……。


「砂漠って、もっと暑いと思ってたけど……そうでもないんだな」

「うーん……まだ早朝だから、こんなもんで済んでいるだけで。日中はカンカン照りになるし、気温も跳ね上がるな」


 いやいやいや。早朝なのは、お前が日も登らない内に叩き起こしやがったからだろ……なんて文句は言わないでおいてやろう。

 俺達に課せられたミッションは、「新規発見の遺跡調査」との事で。出現したてホヤホヤな遺跡の先行調査も特殊祓魔師のお仕事らしい。そして、早朝の出勤になったのは……他の冒険者共に気付かれない内に、調査に入る必要があったからだ。


(あぁ……眠ぃ。でも、このくらい我慢してやるか……)


 何せ、お宝ゲットのチャンスが巡って来たんだ。これは張り切って参加しないと、損だろ。


 ハーヴェン曰く、新発見の遺跡は危険度も不透明(規模と状況によっては、危なさマシマシ)だけど、誰も入った事がない分、お宝も手付かずのまま。掘り尽くされる前に調査に入り込めるのは、特殊祓魔師の特権らしい。

 でも、当然ながら……美味しい事案を狙っているのは、冒険者も一緒なワケで。本来であれば、特殊祓魔師が最初にある程度の調査をし、ランクが決まってから晴れて「調査にご協力ください」……の流れになるのだけど、早耳な奴はどこにでもいる。腕に覚えがある(らしい)自称・凄腕ハンターが勝手に入り込んでは、荒らすだけならいざ知らず……死んじまう奴もかなりいるそうな。

 お陀仏様に関しては、自業自得じゃないかと思うんだけど。どうも、お人好し集団の悪魔的にはそうはならないようで。……無駄な犠牲を出さないための早朝出勤も、特殊祓魔師の嗜みになるっぽい。


(フン、底辺の冒険者共が。俺達を出し抜こうなんて、100年早いわ)


 それこそ、転生してから出直して来給え。このイグノ様のようにな!


「しかし……しっかり暑くなるのかよ〜。俺、暑いの苦手なんだけど!」

「心配しなくても、大丈夫。俺が近くにいれば、冷んやりは確保できるぞ」

「あっ、それもそっか。ハーヴェンは伊達に、氷の悪魔じゃないよな」


 そういう事……って、お茶目なつもりらしいハーヴェンがウィンクしてくるけど。どうせなら、ウィンクは美少女ちゃんにして欲しいし、「男のウィンクなんぞいらん」が本音だったりする。ま、奴がいるおかげでクーラー代わりになるのだし……この際、男のウィンクも許してやろう。仕方ない。


「えーと、それで……ここが例の遺跡? いや、あれは遺跡っていうよりは……」


 オアシスか何かかな? どこをどう見ても、遺跡には見えないぞ?


「なぁ、ハーヴェン。……もしかして、あの森っぽいのが調査対象?」

「うん、そうだな。このテの秘境は、魔物の種類が多いのが特徴でな。瘴気でもへこたれない豊か過ぎる環境の名残もあって、大型化かつ、凶暴化している傾向がある」


 あっ、なるほど。こういうタイプは遺跡じゃなくて、秘境って呼ぶんだな……じゃなくて、だな! 今、知れっと面倒なこと言ってたろ! 魔物の種類が豊富なのは、まだいいとして。魔物が大型で凶暴って、今回もモンスターパニック確定じゃないかよ! いい加減にしろよ、コラ!


(これ、いかにもAmezonな感じじゃん! 絶対、アナコンダっぽい何かが出てくるヤツじゃん‼︎)


 遺跡だったら、大昔の美術品や武器とかもありそうなもんだけど。森の中じゃ、ご丁寧に宝箱が置いてあるなんて事もないよな。これは完璧に外れクジを引いた気がする……。


「うん? あぁ……この時間でも、先客がいるか……」


 俺が内心で「お宝ゲットならず〜!」と今から諦めていると。隣でハーヴェンが困ったように頭を掻いている。……えーと。あれはもしかして、冒険者ってヤツらか? こんな何もなさそうな場所によくもまぁ、来るもんだ……って、お? アイツらがわざわざやって来るって事は……?


「なぁなぁ、ハーヴェン」

「何かな、イグノ君」

「……冒険者がいるって事は、お宝狙いなのか?」

「だろうな。秘境タイプの浄化遺跡は貴重な魔法鉱石や、魔法植物が発見される事が多いんだ。特に魔法植物は環境を整えられれば、栽培も可能だからな。モノによっては、長期的な収入源にもなり得るから……大富豪も夢じゃない」


 お宝はお宝でも、そっちかー……。俺は現物支給がいいんだけどな……。


「とにかく、止めないと。こんな初期調査も済んでいない秘境に入るなんて、危ないにも程がある。この魔力濃度だと、多分だが……高レベルの魔物が巣食っているだろうし」

「ハーヴェン、そういう事も分かるんだ?」

「一応、中身は悪魔なもんでね。……瘴気やら、魔力やらの察知能力は、みんなよりもちょっぴり鋭いんだよ」


 一応も何も、悪魔じゃん……は言わないでおこう。あっちの姿はどこをどう見ても、「悪魔ッ!」なハーヴェンだけど。この世界の悪魔って、ナリは凶悪でも中身は平和なんだよな……。


(悪魔がこの調子なせいで、悪魔退治とか、魔王討伐とか……いかにも勇者なイベント、なーんもないんだよなぁ)


 もうちょっと殺伐とした世界だったら、俺も今頃は勇者とか、賢者とか……格好いいクラスで無双できていたかもしれないのに。ホント、変な世界に転生しちまったと、今更ながらに思ったりする。


「おーい、そこの人達! ストップ、ストップ! その秘境はまだ危ないから、入らないで!」


 俺が異世界転生の世知辛さを再認識しているなんて、思いもしないのだろう。ハーヴェンが早速、秘境にズカズカと入っていく冒険者に声を掛けている。


「なんだ、お前は。危ないから入るな? ……まさか、俺達に言っているのか?」

「そのまさかだけど。この秘境は昨日に見つかったばかりなんだ。まだ先行調査も済んでいないから、何が起こるか分からないし……探索はやめておけ」

「ハッ! 俺達が誰か知ってて、言ってるのか! 聞いて驚け! 俺達はSランクパーティ・金色の栄光だ!」

「……Sランクパーティ? 金色の栄光? うーん……悪いんだけど、聞いた事ないかな……」

「なっ⁉︎」


 ハーヴェンのアッサリした反応に、怒り出す金色の栄光のメンバー達。そうして、一触即発な雰囲気を醸し出しちゃってくれているが。……ハーヴェンは人間姿の場合、あまり強そうに見えないからなぁ。


「なぁ、ハーヴェン。サッサと自己紹介した方が早くない?」

「お? まぁ……それもそうか」


 全く、仕方ないな。ここは1つ、俺もしっかりフォローしてやろう。ハーヴェンは意外と、偉ぶる事を知らないから困る。


(きっと、俺達は特殊祓魔師だって言ってやれば、こいつらもひれ伏すに違いない!)


 ま、俺はまだ特殊祓魔師じゃないけどな! 一緒に偉くなった気分を味わっても、バチは当たるまい!


「えーと、俺達はオフィーリア魔法学園から派遣されてきた調査担当でして。先行調査に来ただけなんだよ。皆さんの邪魔をするつもりは毛頭ないし、できるだけ調査は素早く済ませるから。……公式公開まで、ちょっと待ってくれないか」


 ……いや、待てよ。自己紹介って、そうじゃないんだよ。どうして「俺は特殊祓魔師だ(ドヤァ)!」ってやらないんだよ、お前は……。態度も言葉も下手に出まくっているし、ますます舐められちまうだろうに……。

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