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18 最後の散歩
よろしくお願いします。
死を覚悟した私は、サイズの合わなくなった体を引きずるようにして施設内の休日の散歩に出た。
今日か明日には黒い霧に包まれるだろうと覚悟を決めていた。
死刑員が最後に一つだけ願いを叶えられる瞬間。
思い出のグリーン・グラス。
魂だけが故郷へ帰る物語。
最後の散歩。
それもいいだろう。
さぞかし楽しいだろう。
そんな気持ちで散歩に出ていた。
そんな時、またしてもエンジン音のうるさい二輪が近づいてきた。
そして、あの時のように私達の散歩集団に近づくとスピードを落とした。
二輪のシートにまたがっている男が、今度こそは私を見たように思った。
いや、思ったのではなく、確かに目が合った。
そして男は、左手を差し出した。
その手の親指と人差し指には小さな水晶玉が挟まれていた。
絆。
私は思い出した。
兄だ。
大好きだった兄だ。
私は、二本の指に挟まれた水晶玉に引きずられるように二輪の後部シートに乗った。
あの、いつも、ちゃらんぽらんだった兄の言葉。
そしてそれが今、兄から殆ど聞けなかった真実の言葉、最高の真実となった言葉、絆。
ありがとうございました。




