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ミリーの冒険

「遅い!」


 ナキ町の宿でミリーの帰りを手ぐすね引いて待っているアスランはイライラしながら声を荒げた。


「もう三日と三時間も待ってるんだぞ!」


「ねぇ、アスラン」


「リサか……まだいたのか」


 あまりの言い種にムッとするリサはそれでも顔には出さないように我慢した。


「きっと帰って来ないわよ、あの子」


「何でそんなことが分かるんだ!?」


「だって、ミリーったら「冒険者になって、素敵な人と結婚する」とか訳の分からないこと言っていたわよ」


 もちろん嘘ッパチだが、リサもずっとアスランが好きだったので必死だ。このまま二人を再会させなければリサにもチャンスが巡ってくるかもしれない。


「なにぃ!? 素敵な人とケッコンする!?」


 だが、アスランはにへらー、と笑みを浮かべた。

 彼の脳内では素敵な人=アスランなのだ。


「冒険者になんかならなくても僕のお嫁さんにするのに。そんなに待ち切れなかったのか……可愛いヤツめ!」


「陛下、ギルドでロリー様の現在地を確認するべきです」


「そうだな、ちょっと行ってくる」


「待ってよ、アスランったら!」


 アスランは矢の様に飛び出してギルドへ突撃していった。リサもその後を追う。

 ヴァレンから戻り仕事に復帰したリヨンお姉さんは、血相を変えて飛び込んできた見知らぬ冒険者にギョッとした。


「こんにちは、どうしたの?」


「こんにちは、ミリー・ケインの現在地を知りたいんだけど!」


「ミリーちゃんね……ちょっと待ってくれる?」


 お姉さんは紫の石でミリーの現在地を確認しながら、綺麗な顔の冒険者をチラ見した。お姉さんの第六感が何かを告げている。


「一応お名前を聞かせて貰えるかしら?」


「僕? 僕はアスラン・ウィル、ミリーの幼なじみなんだ」


 こいつが、あのアスランか。

 お姉さんはニッコリ微笑んだ。


「ミリーちゃんはパーティーの皆と休暇に入っているわね」

 

「休暇!? いつ帰って……いや、今どこにいるの!?」


「今は、港町にいるわ……ええと、港町トスカね。十日くらい滞在の予定よ」


「トスカ!? どこのダンジョンが一番近い?」


 お姉さんはワザとらしく地図を広げて調べ始めた。


「トスカだったら、王都の南のリグイル森のダンジョンから魔界に出て、そこの西のハーミット谷のダンジョンから出られるわ」


「分かった! ありがとう!」


「待ってよ、アスラン! 私も行くんだから!」


 礼もそこそこにギルドを飛び出すアスランの後ろ姿を目を細めて見送るお姉さん。

 リグイルからローナまではどれだけ近道をしても一月はかかる。しかもハーミット谷のダンジョンはドラゴンやベヒーモスなどがウヨウヨいるからかなり手間取るだろう。ミリーのパンツを持ち歩くヘンタイをわざわざミリーに近づけさせるものか。



***


 ミリーたち四人はのんびりしながら、ローナの依頼もちょくちょく受けていた。

 ローナでは浜辺で薬になる貝やワカメの採取などが主だ。たまに海の魔物退治なども請け負っている。いつもニコニコして元気いっぱいの四人はこの町でも可愛がられている。

 その日も午後からギルドへ行くと受付のお姉さんがミーシャを手招きした。


「ナキ町のリヨンさんからミーシャさんに緊急の通信が入ってます」


「お姉さんから?」


 ミーシャが通信の丸い鏡を預かるなり切羽詰ったな顔のリヨンお姉さんが大声を出した。


『たいへんよ! ヘンタイが!』


「どうしたんニャ、お姉さん? 何言ってるニャ?」


『そっちにアスランが向っているわ! しかもミリーちゃんのパンツを持っているのよ!』


「ニャにぃ!?」


『とりあえず時間稼ぎはしたから、半月は大丈夫だと思うけど……』


「分かったニャ! ありがとうニャ!」


 ミーシャは通信を切ると、急いで三人の元へ向かった。とりあえず、ここから離れなければならない。


「ミリー、悪いんニャけど……えと、お遣い頼むニャ。桃のジュース買ってきてくれるニャ?」


「うん、分かった! 行ってくるね!」


 ミリーがギルドを出て目の前の屋台へジュースを買いに行くと、ミーシャは真面目な顔で二人を見た。


「ハインリヒ、じじい……ちょっと良いか?」


「なんだよ?」


 ハインリヒが鼻に皺を寄せてミーシャを見ると、ミーシャは二人に重大事項を報告した。


「た、大変じゃないか! でも、ミリーここ気に入ってるし……どうしよう?」


「ほっほっほ、そうかそうか……どうれワシが説得してやろうかの」


 亀の甲より年の功、ここはナーガに任せるのが良さそうだ。

 丁度良くミリーがジュースを四つ手に持って戻って来た。


「はい! ジュース買ってきたよ」


「ありがとうな、ミリーや」


 お礼を言われたミリーはとても嬉しそうにニッコリ笑った。


「そう言えばミリーに冒険者の心構えを教えとらんかったのぅ」


 ミリーはニッコリ顔を引き締めてナーガを見つめた。


「はい、ナーガさん」


「なぜ冒険者というか……冒険者は一つ所に留まらず、あちこち冒険をするから冒険者なのじゃよ」


 ナーガが尤もらしく意味不明なことを言うとミリーは顔を輝かせて頷いた。


「そっか……そっか! あたしたち、冒険者だもんね!」


「そうニャ! 次はどこに行こうニャ?」


「肉の町が良い! 肉、肉!」


「ほっほっほ。そうじゃのぅ……そうじゃのぅ」


 四人はどこに行こうか地図を見ながら話し合った。


 小さな村を出た小さな少女は仲間たちと出会い広い世界へ飛び出した。

 世界は広く様々な冒険で満ち溢れている。

 

 これからも色々な人に出会うだろう。その都度四人は笑ったり泣いたり、そうして冒険者として成長してゆくだろう。





 そして――


「ミリー……絶対、捕まえてやる……」


 魔王不在の魔界での冒険も待っているだろう。



      ~Fin.~

皆様、お付き合い真にありがとうございました!


ミリーの冒険はこれにて終了です。

お話は終わりですが、ミリーたち四人の冒険は終わりません……。


某少年雑誌の打ち切り終了風です。



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