ヘンタイは忘れた頃に
クタクタになっていたが、全員は元気にヴァレンへ帰ってきた。
お姉さんやお父さんお母さん、王様たちに出迎えられてその日は王宮で内々で晩餐会が行われることになった。
シャロンも来ているのだが、少し膨れっ面をしている。約束したのにいつまで経ってもミリーが遊びに来なかったからだ。ミリーも罪悪感からかションボリ項垂れている。そんな娘とミリーを見てアンリが宥めるように言った。
「仕事が終わったら遊びに来ることになっていたんだよ」
「本当に? お父様」
シャロンは途端にニッコリ笑顔になってアンリとミリーを交互に見た。
「ああ、今夜家に招いているからな。お前を驚かそうと思って黙っていたんだよ。そうだよな、ミリー・ケイン」
娘と妻が一番のアンリだが、仕事を頑張ったミリー達を労う気持ちもあるようだ。
「は、はい! シャロン、遊びに行っても良い?」
「ええ、もちろんよ! 約束ですもの」
ミリーとシャロンは並んで座りお話をしながら食事をして、ナーガと師匠二人は仕事の首尾を報告した。
「ミリー」
「あ、師匠! なんですか?」
「僕たちはこれでもう行くけど」
「……え?」
「そんな顔しないで」
「何かあったらすぐ来るでござるよ。弟子のピンチには駆けつけるのが師匠でござる」
師匠たちは泣きそうな顔のミリーの頭を撫でた。
「それじゃあ」
「ニンジャステルス!」
果たして身を隠して立ち去ることに何の意味があるのかは分からないが、こうして二人は去っていき、晩餐会もお開きとなった。
***
さて、暴走中の魔王様御一行はリース村から馬車で3日の行程を半日で熟して王都に到着した。途中のナキ町はそれこそ一瞬通り過ぎただけだ。
因みにリース村からナキ町までは小さな山を一つ越えて、大人の足で3時間程度。結構近いのだが、ミリーは早朝に出発して夕方前にやっと到着した。当時の彼女にしたら大冒険の一つに入る。
「……本当にここにいるのか?」
アスランは独り事を言いながら額に浮かぶ汗を拭った。
「アスラン……それは?」
「あん?」
リサはアスランが汗を拭っている布に目が釘付けになった。
どう贔屓目に見ても――
「ミリーのパンツだけど?」
ミリーの家にお邪魔した(押し入った)ときに手に入れた戦利品の一つだ。
元魔王が見ていたら「だから、野放しにしたくなかったんです……はい」と、力なく笑いながら言うだろう。だが、アスランは爽やかな笑みを浮かべてかぼちゃパンツで汗を拭いつつ、顔に押し当てて深呼吸している。誰か何とかしてくれ。
「さすが陛下……あの短時間で、そのような重要な品を見付けるとは……」
「可愛らしいパンツであります!」
「ロリー様にお会いするのが楽しみであります!」
付き従っている親衛隊がこんなのだから、誰も何もどうしようもない。
さて、ヘンタイはパンツから顔を上げるとキョロキョロと周囲へ視線を彷徨わせた。
「どうでも良いけど、ミリーは何で王都になんか来たんだ?」
王都はおよそ六千ヘクタール、人口十万の大都市である。こんな大都会で可愛らしいミリーがホイホイ歩いていたらヘンタイの餌食になってしまうではないか。
「冒険者になりたいとか言ってたわよ」
「……え? じゃあ、ギルド行けば現在地が分かるな……ギルドへ行くぞ!」
「御意!」
ギルドに行けば登録されている冒険者、全ての状態が分かるようになっている。例えば、納期を過ぎても戻ってこない冒険者がいる場合など探しにいかなければならないからだ。
アスランは勝手知ったる王都のギルドへ急いだ。
いよいよミリーに会える!




