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王太子殿下の驚異的可動域

王暦167年春の三月5日 曇りのち雨


 今日は、ずっと楽しみにしていたお芝居の観劇へ行ってまいりました。

とても久しぶりでしたので、朝から浮かれておりました。

しかし、お芝居以上に衝撃的なことがあったのです…

公演が終了し、馬車を呼びに、クレマン様が先に外へ行かれてた時のことです

な、なんと!

王太子殿下と、婚約者である公爵家令嬢様が観劇にいらしていたのです!

当然ながらVIP席からのご観劇だったのでしょう

公演中は全く気付きませんでした

お二人の装いから、お忍びでいらしていたことが伺えます。

しかしながらお二人とも…

少しも忍ばれていませんでした

圧倒的王族・高貴オーラが隠しきれておりません

殿下は、溢れ出る高貴な輝きと洗練された所作で、婚約様をエスコートされてましたし

婚約様は、まばゆい光を纏いながらも、どこかリラックスされたご様子でした。

お忍びであるせいか、ドレスも華美過ぎず、最新流行の物をお召しになっていました。

モブ令嬢である私は、モブ体質を存分に生かし、可能な限りお近くで拝見することにしたのですが

はあああっっ!!

いけません…近づき過ぎると眩しくて直視できません!

危うく瞳を焼き切られてしまうところでした

非常に残念ですが、少しだけ距離を取ることにいたしました。

お二人が優雅に階段を降りられている時でした。

残り三段ほどの所で…

で、殿下が躓かれた?!

危ない!!!

思わず目を覆いそうになりましたが、ここを見逃してはいけないのです!!

観察記録担当:モブ令嬢の名に懸けて!!

カッと目を見開きすべてを見届ける所存であります!!

殿下は…

コマ送りのように…

階段から御身が離れ…



は、羽ばたかれたあああ??!!!!



あばばば!

いいえ…はわわわ!!



殿下の肩関節の可動域が限界を超えてらっしゃる??!!

やはり私のようなモブとは可動域さえも大きく異なるのですね?!

国の頂点に立たれるお方は、関節さえも自在なのですね?!



嗚呼、羽ばたかれるお姿は、まるで

天馬のようで…

翼が見えた気がします!!



お見事でございます!!

華麗に羽ばたかれた後は、ズダダーーンと力強い着地!!!



な、なんということでしょうか!!



着地のポーズは…

まさかの…



クラウチングスタートです!!!



はあ…もう感嘆の声すら出ませんでしたわ…


あ…お顔をシュバッ!と上げられました

何かを成し遂げたような、どこか満足気なお顔をされていたような気がします…

そういえば、婚約者様はどうされたのでしょう

そちらに目線を移すと…

婚約者様は、扇子でお顔を覆ってらっしゃいました

そして、全身が小刻みに震えておられます…

殿下はほんのりと頬を赤く染められながら、立ち上がり

軽く咳払いをされ、左肘を婚約者様の横に出されました

婚約者様は、お顔を覆ったまま殿下の腕をとられました

お二人は足早に帰られました

殿下の羽ばたき、クラウチングスタートのポーズ…

私は夢でも見ていたのでしょうか

これは文章だけでは書ききれる気がしませんわ!!

そのためには、ちょっとした準備が必要です

どうしても協力者が必要になるのです

協力者への賄賂…いいえ、正当な報酬を購入しなくてはいけません

私はクレマン様に無理を言って、準備にお付き合いいただき

無事報酬を入手し、帰路へとついたのです


はっ!

観劇後の出来事が衝撃的過ぎて

お芝居の内容が全部吹き飛びましたわ!!!

何一つ記憶にございません!

確か観劇を終えた直後は、愛の儚さに胸を打たれていたような気がします

でも今日見たものは、お芝居よりもっと素晴らしく尊かったので、

実質無料ですわね

ああ、この後協力者にお手伝いしてもらうのが楽しみですわ!

久しぶりに腕がなります



明日も良き日でありますように…



最後にそう書き記し、

私は少しだけ勇ましく日記を閉じました。



「リュシアン、お願いがありますの」

「どういったご用件でしょうか?」

「まず、ここにボンヌの焼き菓子があります。これは、メリスの大好物なんです」

「是非、お土産に持って帰っていただきたいのです。」

「……ご用件は?」

「モデルをして下さらない?5分間クロッキー、3ポーズ!」

「……お引き受け致します」

「ありがとうーーーー!!

早速始めましょう!記憶が新しいうちに!!」

「…仰せの通り」

「羽ばたくところから行きましょうね!!一分間の休憩は入れますか?」

「いいえ、結構です。お早く終わらせましょう……」

リュシアンは、おもむろに上着を脱ぎ背もたれに掛けました


今日の出来事は、現実だったのかしら?

目に脳に焼き付いてはいますが、もしかしたら幻だったのかも?

リュシアンがポージングしてくれたスケッチを夢見心地で見返しております

リュシアンは本当に有能な執事ですわ…

再現力の化身かもしれません。

羽ばたかれているご様子、空中滞空のご様子、クラウチングスタートのご様子…

殿下は、例え躓くことがあっても、それすら助走に代え天高く羽ばたき、

人類の可動域を超越し、力強く着地…

もしかすると、国家の未来を背負い疾走するための姿勢だったのではないでしょうか?

きっとそうに違いないですわ!

殿下の決意を見届けることができて、本当に幸せでした…

この国は未来永劫明るいですわ!




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