海へ行こう! 塩不足の可能性発生
「緊急事態だ」
俺はそう口を開いた。
「なにが?」
「塩が不足しそうになっている」
俺の言葉に全員が驚いた。
「塩」
「ああ。生きていく上で塩は必要だからな。
無視するわけにもいかない」
そう。人工が増えた結果か……。
それとも元々、限界がきていたのか……。
岩塩が取れる場所から塩が取れなくなってきたのだ。
塩がない。
こうなると食生活が貧しくなるだけではない。
塩は生きていく上で必要な栄養素というか成分だ。
人体に流れている水分は塩分が含まれている。
塩水をのむと喉が渇くが……塩が足りないと逆に体内で水分不足になる。
「塩は必需品だ。
無いと命に関わる。
それを考えると、必要だ」
「ならば岩塩を探しますか?」
「いや。それも限界がある」
ユキノの父の言葉に俺は言う。
「それにそこをまた失う可能性もある。
それを考えると……海を探すべきだと思う」
「うみ?」
その言葉に一部の面子がきょとんとした顔をした。
どうやら海を知らない面子もいるらしい。
俺は説明をすることにしたのだった。
とはいえ、詳しい説明は出来ない。
ただ、
「つまり塩水が大量にある場所と言うことですか?」
「厳密に言えば違うんだがな。
大量の水が集まる過程で岩やいろいろな場所の品々。
それらが入り交じっていて塩分が多いが他にも様々な成分が混じっている。
それが特徴とも言えるな」
俺はそう説明する。
「海水でしか生きていけない生物……魚もあるからな。
海水魚は淡水魚と違う魅力がある」
具体的に言えばやはり海水魚が一番だ。
それに、
「海水魚のほうが川魚や沼地の魚よりも大きい魚がある。
それに料理のレパートリーも増やせる。
あとは……そうだな。
豆腐も作れるし……豆腐があれば雪花菜も油揚げも作れるな。
塩が大量にあるなら味噌も醤油も作れるし……」
日本人にとって大量の塩は必須だ。
醤油も味噌もまず必要なのは大豆だが次に塩が必要だ。
……こうしてみると日本人は塩分の取り過ぎなように思える。
「よくわかりませんが……。
それは調味料の類なわけ?」
「そうだ」
俺がいるおかげで会話が可能となっているので説明が一瞬ですむ。
最近、俺の能力によってこの集落内部でなら会話が世界が違う出身でも可能となった。
さすがに装置の都合で世界全体にはいかない。
けれどもそれで会議も楽だ。
だからこそ俺はここから離れて生活が可能だ。
むしろ住民や人で。
それらを手に入れるには会話が可能な俺が必要だろう。
そう思っていると、
「つまりはまた旅に出るということだな」
そういったのはレナードだ。
「それならこれが役に立つかもしれないな」
そう言って差し出したのはイヤリングだ。
「俺と魔女の姉ちゃんが作った作品。
あんたが持っているだけで周囲のやつらは会話が可能だ。
とはいえ、一定の知能と知性が必要だけれどな。
獣とまで会話が出来ていたらたまらないだろ」
そう説明をする。
そんな事をしていたら肉や魚を食べられなくなりそうだ。
あいにくと精進料理を食べて悟りを迎える覚悟は俺にはない。
「それでどうするんだ?」
「どうにかするしかないだろうな。
とにかく問題としては今後だが……。
塩を作るから探すのは海だな。
塩湖でもよいが……。
そう簡単に見つからないだろうし」
「えんこ?」
「海水の狭いバージョンだ。
海よりも塩分濃度が高い」
俺はそう答える。
「とにかく海があればそこの海水を元にすれば塩が出来る。
そうすれば塩が手に入る。
その後はおいおいで調味料を集めれば良い」
出来れば塩、砂糖、酢が欲しい。
たしか酢はお酒から造れるらしいので……。
とりあえずそれはどうにかすれば良いだけだ。
砂糖は……果実を煮詰めたりする。
そう言った方法もあるわけだ
とにかく、
「塩分は必須だからな。
塩がないと命に関わる」
人間、生きている上で必要なのは塩分だ。
もちろん水分も必要だが塩も必須だ。
そのためにかつて内陸部の国では塩が高額で取引されていた。
そんな話を聞くし塩を制限して国を支配しようとしていた。
そんな国もあったそうだ。
塩を手に入れるために行進した聖職者の話も聞いた気がする。
あいにくとうろ覚えなのであまり正確には覚えていないが……。
とにかく日本人なら塩を作るなら海水だ。
幸いにも海水から塩を作り方なら調べ終えている。
「海じゃないといけないのか?」
「海以外で確実に塩が手に入る場所がなぁ」
塩湖よりもある確実が高いし……。
岩塩を見つけるよりも目立つだろうし……。
海水ならば無限にありそうだ。
そう俺は思う。
あと、海の魚が食べたかったりするのは内緒だ。
「今まではどうやっていたんだよ?」
「近場に岩塩がとれる場所があったんだ。
だが、急激な人が増えたことでつきそうだ」
そう俺は言う。
全体量は不明だが残りわずかだろう量だ。
そもそもとして岩塩から有毒物質を取り除く手段をリザードマン達が持っていたのは幸いだった。
さらに、
「そもそもこの世界に海はあるのか?」
「ある。と、思う。
そもそも根拠としてはこの世界にある程度の川があるからだ」
そう言って俺は近場の川を移した写真を見せる。
「さらに雨も降っていると言うことは……。
最終的に川が行き着く先がある。
そこが海である可能性は高い……そう思っている。
何しろここはありとあらゆる世界の一部が切り取られた場所だ。
……これは俺の予想というか希望かもしれないが……。
どんな世界でも大概に海はある。
そう思うんだ」
少なくとも元いた世界のおとぎ話や今時の小説。
どんな世界でも海がない世界というのはあまりなかった。
もちろんそういったテーマの作品はあったが……。
海という概念そのものは存在していた。
「少なくとも川の先を見て回って水が溜まっている場所を知る。
それは良い事だと思うんだよ」
「まあ。たしかに……。
ということはまた外に行くんですね」
「しょうが無いだろうが……。
俺がいなくてもチート集団が大勢居るんだから」
集団行動ならばリザードマン。
凄腕魔法使いに指揮官として優秀な魔王。
畑作りのプロに技術者のプロ。
異世界転移の影響からか最強チート野郎集団が否応なく出てくる。
「別に無限に調味料を出せる人間とか何もないところから料理を作り出せる。
そんなやつを求めてはいないから……」
料理や家事全般が上手なやつはほしいけれど……。
そう胸中に付け足すが……。
人手が増えれば増えるほど俺の役目はなくなっている気もしてる。
とはいえ、俺としてはこれが本業だと思っていたりするので気にしていなかった。
「調味料で最も重要なのは塩ですからねぇ」
そんな声が出た。
まあ、言いたいことは分かる。
塩というのは存外重要だ。
それこそ、人間が生きていく上で必要なのは水分と言われているが……。
水分の次に必要なのが塩だ。
塩がないと生きていけないということで大きな宗教的な運動もあったらしい。
「それに……いつまでもなんとなくで解決できないだろ。
……どうせ、この世界で暮らす事になるんだから」
そう俺は溜息交じりに言う。
「……住むんだよなぁ」
元の世界へ帰りたいか?
そう言われたら困るのは本音だ。
「帰りたくないのですか?」
そうユキノが問いかけてきた。
「……わからない。としか言えないなぁ。
正直、ユキノは?」
「物心ついた頃にはこの世界だったので……。
それに、故郷の仲間もいるので……。
帰りたいと思う理由がない。
というのが本音ですね」
「なるほど……」
帰りたいと思うほどの理由がない。
そういうやつも多いのだろう。
考えてみれば、この世界のこの状況を受け入れている人はいたが……。
元の世界に戻りたいと嘆いているヤツはいなかった。
「誰も元の世界に帰りたいと願ってはいないな」
俺は思わずそうつぶやいた。
普通ならば元いた世界に戻りたいと願うだろう。
少なくともある程度の文化レベルがあれば……。
待っている家族や友が居れば……。
元いた世界に戻りたい。
そう願うのは当然だろう。
だが、……俺も含めて誰も元の世界に戻る方法を探してはいない。
探す余裕がないのか……
それとも……。
「元の世界に帰りたい。
そう思うやつはいないのかもしれないな」
俺はそうつぶやいていた。




