第一話 食パンくわえた美少女はツンデレでした
ラブコメが好きな俺、高須明人は平穏に生きることを望んでいた。
中学では教室の陰でひっそりと生活し、高校でもそれを続けるはずだった。
高校の入学式。俺は中学の癖でアラームの時間を誤り、少し遅れて家を出た。
「間に合う……はずだよな」
俺は小走りで慣れない通学路を進む。そして、駅前の曲がり角に差し掛かると__
食パンをくわえた美少女とぶつかった。
黒い髪、透き通るような肌__いかにも清楚系という感じだった。
「ちょっと!あんたどこ見て歩いてんのよ!」
おいおい、ツンデレだぞ。
こんなのラブコメだったら王道中の王道だ。こんなの現実世界に起きていいはずがない。
「す、すみません……!」
俺はとりあえず謝罪し駅のほうへ急ぐ。
何とか電車に間に合い、入学式に遅れるということはなかった。
学校に着き、体育館へと向かう。体育館は俺たち新入生ですでにほとんど埋まっていた。
俺は席に座り、残りの時間をどう過ごそうか迷う。
(ん……?俺の隣の席空いてるな……休みかな)
暇なとき、俺は自然と自分の周りを観察する癖がある。
俺は体育館の後ろに目を向ける。そこには見覚えのある少女が走ってきてるのが見えた。
(……!あの人、朝、駅前でぶつかったツンデレか……?)
美少女は俺の隣の席に座る。彼女は気づいてなさそうだ。
俺も気づかないふりをして前を向く。いつもは式などでは緊張しない方だったが、今回ばかりは緊張してしまう。
そんなこんなで式が終わり、俺たちは自分たちのクラスに向かう。
座席表とクラスの席を照らし合わし、自席を探して座る。簡単なことだった。
俺は席に着くときに気づいた。
(あ、あのツンデレ……!と、隣なのかよ……)
こんなラブコメの王道イベント、本来ならヒロイン枠であるあいつは俺に惚れてるはずだが__まぁそんなわけないよな。
俺はさりげなく、気づいてないふりをしながら座る。
「ちょ、ちょっと……」
気づかれたやつだ。絶対。
俺は彼女に喋りかけられた。
「あ、アンタ……今日の朝私とぶつかったわよね!?なんでここに……」
「それはこっちのセリフなんだが……あ、俺、高須明人」
「し、白川詩織よ。なに?これを機にお近づきとか絶対ないからね」
白川詩織。俺は彼女をもう一度よく見る
(か、かわいいな……ラノベのヒロインみたいだ)
「そ、それよりアンタ、今日私と帰りなさい。朝の罰としてね。」
「え、ま、いいけど……」
こいつ、ツンデレだけど結構積極的だな。
陰キャな俺はこういうタイプは苦手なのだ。なるべくかかわらないのが正解__とはいかなさそうで。
担任であろう人が教室に入ってきて、クラスは静かになる。白川は小声でこういってきた。
「帰り、靴箱で待っとくから。ちょっとずらしてきなさいよ。クラスでアンタみたいな陰キャと帰ってるってバレたら大変なことになるから」
「わ、わかったよ」
どうやら、平穏に生きることは難しそうな高校生活の始まりだった。




