45話:狙うは革命家連合
コロシアムでの出来事から数日が経った。
この数日間に、色々なことがあったので、少し振り返るとしよう。
まず初めに、私はヒビキくんに対し本名を明かしたうえで、異世界政府軍へと誘った。彼は「やることもないから」と私の勧誘を承諾し、現在はユウスさん直属の部下として活躍している。
彼の潜在能力は素晴らしいものでユウスさん曰く「直ぐにでも政府軍トップレベルになれる」とのことだ。
次に、コロシアムと私に関して。
以前から政府軍はコロシアムを黙殺していた。それはインデックスさんによる“方針”の一つであり、彼が一位である以上、下の者たちはその方針に従うしかない。私がそんな方針を知ることになったのは、コロシアムを破壊した後のことだ。
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ユウスさんから伝書鳩によって呼び出しを受け、私はワーパーでトルンドへと向かった。彼が指定した場所は、どういうわけか私と彼が初めて出会ったあのホテル。その点に些かの不可解を感じつつ、私は足を運んだ。
するとそこには、死んだはずのインデックスさんの姿があったのだ。
「おっ、アキサ。お疲れ」
「…………いや『お疲れ』じゃないですよ」
開いた口が塞がらなかった。すっかり傷心しきっていた頃に、唐突にインデックスさんは姿を現したのだ。死んだと思っていたのだから、驚愕して当然だ。
背後から、ユウスさんの声がした。
「アキサ君、よく来てくれたね」
「……説明してもらいますよ、ユウスさん」
インデックスさんの死の偽造。これはユウスさんの仕業であった。
インデックスさんが定めた方針には保守派が数多くおり、方針を撤回するとなればその者たちが黙っていない。そのため、私のしたいことを自由にさせるためには、インデックスさんが死んだという事実を偽造しなければならなかった。
方針を定めた当人が死んだとなると、その方針は一度破棄され、今度は次の政府軍順位一位の者、つまりカレンさんが政府軍全体の方針を定めなければならない。そして現在、カレンさんは方針の採択を保留しているそうだ。
つまり、インデックスさんの死が政府軍全体に行き届いてから現在に至るまで、かつてインデックスさんが定めた政府軍の方針は無効となっている。保守派から私に対する非難は無いというわけだ。
「……流れはわかりました。でもどうして私なんかのために、死を偽造したんですか? 偽造がバレたら、戻った時に色々言われちゃうんじゃ──」
「それは、だ。アキサ。もう俺が政府軍に戻る必要がないからだよ」
再び疑問が浮かび上がる。質問はせずとも、その答えは彼の口から語られた。
「革命家連合。アキサも知っての通り、革命家十名……今は九名によって組織された対革命家殺し二名の連合。そこに所属する革命家九名を残さず拘束することができれば、世界の均衡が変わる」
世界の均衡……つまり、私たち政府軍と革命家らによる勢力のバランス。
ブレイガンは対峙してきた敵の中で言えばヒビキくんを除いて間違いなく一番強かった。そのレベル、もしくはそれ以上のレベルの者たちが残り九人。確かに、世界のバランスが変わってもおかしくはない。
「そしてそうなれば、俺が長々と居座らずともカレンやアキサなんかが新しい政府軍の指揮を執ってくれる」
「……それはそうかもしれないですけど」
ユウスさんが言う。
「アキサ君。今が勝負の時だ。僕たちで革命家連合を潰そう」
望みを叶えてくれた彼らの意志を、私が否定することはできなかった。
「わかりました。でも、今度から何か大きなことをする時は私にも相談してくださいね?」
私がそう言うと、彼らは微笑んだ。
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本来ならば独断による行動が処罰の対象となり、私には自宅謹慎が強制させられるが、今回はカレンさんとインデックスさんからのご厚意により、何の弊害もなく休暇からの復帰ができた。
次はコロシアムで拘束した、ブレイガンを含む革命家たちの処罰について。
私たちが余すことなく捕らえた彼ら革命家。一人ひとり正確に罰を下していく必要があるため、現在進行系で裁判が進められているところだ。ただ、無罪は確実にないだろうから、そこは一つ、安心できるポイントだ。
そして、革命家フウガさんの手によって配置された私の助力者四人。
彼らには「フウガさんによろしく言っておいてください」と言って別れた。至って蛋白な別れだったが、彼らには心から感謝している。そのことが伝わってるといいな。
フウガさんには、またいつか会いに行って挨拶をするつもりだ。
最後に、コロシアムに囚われていた転生者たちについて。
ハルさんとカルさんに頼み、避難をさせていた転生者たちは今日までに政府軍の手によって全員救助される手筈となっている。私は救助された転生者の名簿を一日ごとに確認しているが、そこに私の弟コウイチの名前は乗っていなかった。
今日で救助作業が終わるということで、私は今日、カルトスタウンを訪れている。
救助された後、転生者は近くのリュードで保護される手筈だ。この場所における政府軍の役割は、転生者をコロシアム地下から地上へと連れ出し、リュードへとワーパーで転送すること。
コロシアムの外には既に政府軍の方々がおり、予め事情を話していた私はそこに加わって作業を進めることにした。彼らと共にコロシアムの地下へと歩いて向かい、転生者らが拘束されていた部屋へと辿り着く。
「みなさーん! 一人ずつ近くの国に転送していきますので、お並びくださーい!」
私がそう言うと、転生者らは順番争いをしながらもしっかりと並んだ。だがそこで、私の目には一人の男の背中が映った。
他の転生者らが醜く順番争いをする中、彼は一切動かなかった。
……髪型と背中から漂う雰囲気。確信した。
私は静かに駆け寄り、壁の方を向いて座る彼の背中に、優しく手を置いた。
「コウイチ……だよね?」
瞬間、彼の首がぽっきりと折れた。背後の私に顔を向ける形で彼の顔が顕になる。
それは、私が望んでいたものとは違った。
人形だ。目が赤く発光する人形だった。
私が危険を察知して能力を発動するよりも早く、人形は部屋の片隅、私の目の前で大爆発を起こした。




