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追放王子と生態系調査人  作者: 水野青色
5/23

5:噂だけどね

お読みいただきありがとうございます。

不定期更新のため、いつ更新できるかわかりませんが、頑張って更新しています。

今回もウィルのお話です


        5:噂、だけどね



 冒険者ギルドから出て、なじみの武器屋に行く。

 依頼で使った武器の補修と、こまごまとした消費してしまう仕様したものの補充だ。

武器屋といっても、大きい店のため、防具も道具も扱いがある。


「こんちは」

「おや、ウィルさんじゃありませんか、いらっしゃい」


 武器防具専門店にしては、粗野さが足りない店員が迎えてくる。

職人は奥にある工房にいるからだろう。

客商売だから、表面上は人当たりのいい人物を使っているのだと、なじみの親方が言っていたことを思い出す。


「閃光球が終わったので補充と、ちょっとした初心者用の防具を見に来たんだけど」

「初心者用の防具?ウィルさんが着るわけじゃないですよね?」

「うん、ちがう。だから、出来合いのやつでいい」


 初心者は、たいてい懐がさみしいものが多いため、だれが作ったのかわからない、一式そろった防具を格安で買えるのだ。

 たいていは、どこかの工房の弟子が、練習のために作らされているものなのだが、腕の良しあしでできが違う。すぐに一人前になるだろう腕のいいものと、まだまだだという腕のものの、それらを雑多にしたもので構成されている。

 たとえば、工房ごとに作りが少々違うのだが、同じ革でできている革鎧のシリーズなら、それで革鎧一そろいとしてまとめられているのだ。

 ちなみに子供用の防具はおいていない。

 

「承知しました。ではこちらにあるセットでよろしいですか」


 店員が持ってきた一式を、ギルドカード払いで買う。

 冒険者ギルドは、ちょっとした銀行業を行っている。そして冒険者ギルドのカードは、魔道具なので、依頼の達成した後の賃金は、ギルド銀行に預けておけるのだ。そこから支払いもできる。

 この一式分も、この武器屋の店員の誰かが、ギルドに受け取りに行くのだ。


 一式を受け取り、マジックバッグにしまう。

 きついのを承知で冒険者になって、ダンジョンに入って、一番の収穫がこのバッグだろう。長い旅をするときには重宝している。ただ、時間経過なしのものではないため、保存のきかない食料が入れられないのが難点だった。


「武器の補修は明日の午後にはできるそうです。ありがとうございました」


 受注受取証の半券を手渡し、店員が頭を下げる。

 武器防具屋の店員としていい人材だよな、とウィルはいつも感心していた。


 昼。

 冒険者ギルドのランチ時間は、ちょっと遅い。

 キャリーは、同僚に外で食べてくることを告げ、ウィルが待つであろう店に行く。

店内はもう閑散としていた。


「おまたせ」

「ああ、好きなの頼んでくれ」


 キャリーは獣人だ。普通の人間より食べる。しかも遠慮はしない。だがそれも勝手知ったるという仲だからだろう。

 運ばれてきた食事に手を付けながら、ウィルは頼みごとを話す。

 ほぼ周りに聞こえない声量でも、キャリーは聞き分けてくれるから楽だ。

 豪華だが紋のない馬車。平民にしてはいい服を着ている拾った青年のこと。ツノウサギのところに捨て置かれていた時には、けがだらけだったようだということもだ。

 聞いているキャリーは、だれが見ても嫌そうな顔をしている。


「はあああ、わかりました。調べるわよ」

「悪いな。これ、前金で渡しとく」


 ギルド銀行から降ろしてきた金貨を渡す。

 金貨5枚。

 平民一か月の給料分だ。


「ちょっと、ウィル…、ああ、絶対厄介なことになりそうね」


 引き受けたからには、断れないので、お金を受け取る。これだから、高ランク冒険者は、とは思っても、口には出さない。価値はそれぞれだ。


「そうそう、これは噂だけど」


 キャリーが食べながら小声で口にする。

 最近、王都の貴族学園で、妙なごたごたがあったらしい。貴族のことなので興味はないが、王族がかかわっているとかいう。そして、その騒動の決着が、昨日おわったとかいうことだ。

 

「もちろん、噂よ?こんな噂しただけでも、不敬だなんだってことになっちゃう。でも、人の口に戸は建てられないのよねぇ」


 食後に飲み物を頼んで、それを一気に飲み干して、キャリーは言う。

 言外には、これでしょ、どうせ、といっているようだ。


「まあ、頼むよ」

「わかったけど、箝口令敷かれてたら、無理よ」

「そんときゃ仕方ないな。できれば、明日の夕方に武器を取りに来るから、わかったとこまでの報告お願いできるか?」

「はいはい。・・・ね、ここの軽食、ギルドの同僚と家族にお土産に欲しいなあ」

「あー、わかった。頼め」


 これも必要経費だ。

 かかわってしまったのだから仕方ないと、ため息をつきつつ、自分も同じものを頼む。

そろそろ起きているかもしれない彼のことを考える。おいてきた回復薬を飲んでおとなしくしていれば、体は回復するだろう、食欲も出るだろうと思う。

 

 食堂前でキャリーと別れ、門に向かう。

 目指すは森の狩人小屋だ。


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