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季節は廻り、また婚活パーティが開かれる時期になった。
「皆の者、今宵は余の招待を受けてくれて感謝する。伴侶を持たぬ王族のために貴殿らの力を貸して欲しい。では、乾杯」
いつもなら王は新しい側室を探すために令嬢たちのところへ向かうが今日はそのまま引っ込んでしまった。
王に見初めてもらおうと狙っていた婦人たちはあからさまに落胆した表情を向けた。
「叔父様」
「何だい?」
「お父様が昨年、側室に、いえ、側室候補にと望んだ先々代侯爵夫人ですけれど、正式な手続きをする前にお隠れになったそうですわよ」
「それであんなにも落ち込んでいるのか。兄上は」
もともとが高齢であったから王よりも先に亡くなることは分かっていたが、たった一年で別れが来るとは思っていなかった。
「侯爵家当主には、その間に伯爵家令嬢が嫁ぎ、侯爵家令嬢は同じ侯爵家に嫁いで王都から離れた領地を治めるそうですわよ」
「侯爵家を守るという目的は果たせたようだね」
「えぇ」
「しかし、ご婦人方が心なしか残念そうだ」
「叔父様がお相手なさったらいかが?」
王がいないことが分かると婦人たちは付き添いで来た孫たちの売り込みに必死になった。
婚活パーティは王家のためと言っても他の貴族同士で話をしたりもする。
「叔父様」
「何だい?」
「弟君と妹君が合わせて八人、お生まれになったそうで、おめでとうございます」
「来年には六人生まれるから、ますます賑やかになるね」
先代は足繁く後宮に通い、一夜を過ごしている。
そのおかげで、王には年の離れた弟と妹が毎年産まれていた。
ヴィヴィアンにとっては自分より年下の叔父と叔母が増えていた。
「のんきにお話をなさらずに、さぁさぁダンスですよ」
「あら宰相」
「今年こそは胃薬を手放したいものですな」
「今年はわたくしも籤にしてくださったのかしら?」
「えぇ事前に申し込みを受けて厳選に厳選を重ねた抽選をおこないまして厳選しております」
ダンスに向いた穏やかな音楽が流れるなか王弟とヴィヴィアンは狭き門を勝ち抜いた令嬢と令息と踊った。
今年は穏やかに終わり、無難に終わってしまった。
「そう言えば、我が姪よ」
「何でしょう?叔父様」
「昨年、君と踊った辺境伯の彼だが、婚約をしたそうだね」
「えぇ喜ばしいことですわ」