7
「ヴィヴィアン、会話をしなくてもいいのかい?」
「えぇ、話をしても髪が美しいか、瞳が美しいか、言われるだけですもの」
「一国の王女を口説くのなら捻りというものが欲しいね」
「それで叔父様はよろしいのですか?」
未だ熱の籠った瞳で見つめる令嬢たちはパーティが終わったあとに声をかけて貰うことを期待していた。
「彼女たちは王弟と踊ったという箔が欲しいだけさ」
「それは手厳しいですわね」
「ただ、三番の彼女はダンスが終わったあとに飲み物を飲みたがったね」
「それはわたくしの忠告通りになりそうでしたでしょう」
「あぁ、もしかしたらすでに誰かの子を身籠っているかもしれないな」
王族に産まれたからには姦計の類には敏感だが、むやみに家臣となる貴族を疑いたくはなかった。
この婚活パーティを楽しんでいないのはヴィヴィアンと王弟だろう。
王家の者であるという義務だけで出席している。
「あら?」
「うん?」
「あそこで楽しい声を上げているのはお祖父様かしら?」
「うん、王と私の父であり、先代であるね」
「お父様の熟女趣味も困ったものですけれど、お祖父様の女好きにも困ったものですわね」
先代は年若い女を好み、王に地位を譲渡してからも新しく側室や愛妾を増やしていた。
先代王の正妃は敗戦国からの人質として嫁いだ経緯を持つため子どもが産まれることを望まれなかった。
そのため自国から嫁いだ側室たちにその役目が廻った。
「お祖母様は立場上、強く言えないでいらっしゃるから仕方ないですけれど、未だに春を謳歌しているのは王家としてどうなのでしょうね」
「あの令嬢は」
「詐欺で騙されて伯爵の位を売って男爵家になった家の次女でいらっしゃるわね・・・お祖父様に手を引かれているわ」
「彼女は愛妾になるのかな?」
伯爵家以上は側室、子爵家以下は愛妾というように決められている。
王家の愛妾ともなればみすぼらしい生活はできない。
だが金はない。
そうなると王家より交際費という名の援助金を下賜することになる。
交際と言っても街を歩いてデートをするわけではないから領地運営のための資金になる。