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無事に産まれた子どもが何もなく成長すればいいが、途中で病気になり命を落とすことになれば悲劇としか言いようがない。
婚約しているのだから構わないだろうと女性の意思を無視した行動をした結果、結婚をしても跡継ぎが望めなくなった。
ここで婚約解消などということをすれば確実に社交界から白い目で見られるのは男性の家の方だ。
いくら跡継ぎを早くと望んでいる家でも娘に乱暴を働くかもしれない男に嫁がせようとする親は少数だ。
「叔父様」
「何だい?」
「彼女から渡される飲み物にはお気を付けくださいね」
「まさか」
「既成事実を作られて身に覚えのない子どもを貴方の子よ、と言われても知りませんわよ」
ヴィヴィアンに断言をされて王弟は背筋に冷たいものを走らせた。
王家のための婚活パーティであるから誰とも踊らないということはできないから仕方なく席を立った。
結婚できない者同士であっても男女が話をしているところに声をかけるのはマナー違反だ。
そこにヴィヴィアンひとりになったのだから声を我先にとかけるのは目に見えていた。
「ヴィヴィアン王女、声をかけずにいられない無礼をお許しください」
「婚活パーティなのだから構わなくてよ」
「宜しければ一曲お相手願えませんでしょうか。王女の美しさを表す言葉を持たぬ哀れな民にご慈悲を賜ればと思います」
「いいでしょう」
男性のリードは可もなく不可もなくというところで女性に恥をかかせないというところは褒められる点だった。
だが、それだけで楽しいというところもなく、踊りながらの話も可もなく不可もなくというところだ。
「これで終わりとは寂しいものです。貴女に会えない間は枕を涙で濡らすことでしょう」
「侯爵家の次期当主ともあろう方が何を言うのかしら。再来月には婚姻式であるというのに」
「それは」
「侯爵家当主にお伝えくださいな。わたくしヴィヴィアンは婚約を解消させてまで嫁ぎたいわけではないと、ね」
「分かりました」
「幼馴染の婚約者がお待ちのようよ。お二人のこと祝福させていただくわ」
王女が嫁いでくる、もしくは王家に婿入りできるとなれば今の婚約を解消させるくらい訳なかった。
虎視眈々と爵位を上げようと画策する家は多い。