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王も立ち直り、先代も立ち直り、婚活パーティが恙無く始まった。
「叔父様」
「何だい?」
「宰相の姿が見えないですわね」
「それならそれで構わないが、本当に誓約書を書くとは思わなかったよ」
二人の婚約者を探すと言って一年間、姿が見えなくなった。
宰相が一年も不在になって大丈夫かと心配になるが、仕事が手につかなくなる時期があったから誰かが対応できるようになっていた。
「あら?叔父様」
「どうしたんだい?」
「あちらをごらんになって」
「ん?あれは」
「さぁさぁお二方、婚約発表をしていただきますよ。ん?どうされました?」
三人の視線の先には、亡き王妃と第一王女の面影を持つ令嬢が年配の男性にエスコートされて入場していた。
恥ずかしそうに俯きながら歩く様は庇護欲をそそられた。
「まさか」
「宰相?」
「噂があったんですよ。王妃のご実家に王妃そっくりの姫がいると」
「年の離れた妹、にしては年が離れすぎていますわね」
王妃の顔を知っている婦人たちは令嬢を見て顔色を変え、知らない令嬢たちは社交界でも見たことがないと訝しんでいた。
エスコートしている男性はまっすぐに王のもとに向かった。
近づいてくる存在に気付いた王は男性が誰なのか分かりしかめ面をした。
「久しぶりでございますね、王」
「うむ、久しぶりだな、公爵よ」
「我が娘に長らくの寵愛をいただき有り難うございます」
「余にとって王妃はそなたの娘のみであるからな」
王妃の実家というところで権力を持っていたが王妃が亡くなってから二十年も絶てば薄れてくる。
王妃には子どもが二人いるが、第一王女は病弱で表に出て来られない。
第二王女は王からの愛情が薄いという噂があり、権力としては期待ができない。
過去の栄光を取り戻すために、あの手この手を使っていた。
「本日は紹介したい娘がおりまして」
「その隣の娘か」
「王の無聊を慰めるのに打ってつけな娘だと思っております」
「うむ」
王妃の若い頃の面影があり、亡くなる寸前の面影もあり、王は動揺を隠せないでいた。
その様子に公爵は手ごたえを感じていた。
「公爵よ、パーティを楽しんでもらえると嬉しい」
「有り難う存じます」
周りは公爵が連れている娘の扱いについて決めあぐねていた。
公爵家の令嬢であるのに社交界で見たことがないことに不信感を持っていた。
それは壇上で見ていたヴィヴィアンも同じだった。




