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「困りましたわね」
「あぁ」
「叔父様が叔父様でなければ今すぐにでも求婚していますのに」
「それは光栄だね」
「きっと宰相は本気で結婚相手を探して来ますわね」
「まぁそこは手を打ってあるよ」
「あら、ご自分だけお逃げになるの?」
「可愛い我が姪を見捨てるなんてしないさ。まぁ来年の婚活パーティを楽しみにしていてくれ」
それ以上は何も言わずに終わってしまった。
先代王は婚活パーティに出席しなかった。
昨年に連れ帰った男爵家令嬢が好みの体型だと思っていたのに、ドレスを脱がすと、そこにあると思っていたものが無かった。
ショックを受けて他の側室たちに慰めて貰っていた。
「そろそろ私たちも帰ろうか」
「そうですわね。来年になれば宰相が相手を探し出してくださるものね」
王弟とヴィヴィアンが本気で結婚相手を探していないことは貴族たちの中では有名だった。
二人が退席したあとは三々五々解散というところになった。
「今年も踊ってくださらなかったわ」
「抽選になってからますます厳しくなりましたわね」
「その点、殿方はよろしいですわね」
「えぇ、ダンスを申し込まれたら令嬢は断ってはいけないと暗黙のルールがありますもの」
「いやいや、今年から抽選になりましたよ」
「際限なく踊ればヴィヴィアン王女といえども疲れてしまいますわ」
「それとも王族の方は疲れないとでも思っていらしたのかしら?」
純粋に王弟と王女とお近づきになりたいと思っている者にとって発言権のある年配の婦人たちは目の上のたんこぶだった。
彼女たちを差し置いて行動することは、いくら無礼講としている婚活パーティでも外の社交界で話されては致命的だった。
「本当に困りましたわね」
「えぇ」
「あのご婦人方が気に入らないと思った令嬢については、いろいろなサロンから締め出されてしまったそうですわ」
「ご婦人方の孫娘の嫁ぎ先を探すのに真剣でいらっしゃるから」
「ご自身を王に売り込んで、孫娘の嫁ぎ先を探す。そのことを考えますと、お隠れになられた前々侯爵夫人は上手くしましたわね」
「本当に」
「あの手腕は見習わなければいけませんわね」
「王弟様と踊れば嫁ぎ先が見つかると有名ですもの。わたくしたちはこちらを待つ方がいいですわね」