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「その令息に令嬢を紹介したのは、さる王家の姫君だと聞いたのだが?」


「あら、物好きな姫君もいたものね。誰かしら?」


辺境伯の領地となると王都から離れているから煌びやかな世界が好きな令嬢には不向きだ。


そんな中、ヴィヴィアンは定期的に開いているサロンで辺境伯の身分を持ち、虫を愛でることを趣味にしている令嬢がいると聞いた。


これ幸いと、令息に手紙を送り、アプローチをさせて婚約まで焚きつけた。


「そう言えば叔父様、聞きまして?」


「ん?」


「叔父様がダンスを踊った三番の彼女、公爵家の婿を取ったそうですわね」


「あぁ婚約者を殺したと噂されている嫡男に跡をそのまま継がせては外聞が悪いと思ったそうだね。妹の方に継がせると決めたみたいだね」


「その公爵家の令息はわたくしがダンスで思わず足を踏んでしまった彼だったのですけど、縁があるものですわね」


「世間というのは狭いものだね」


「そう世捨て人みたいなことを言わず、美しい令嬢、令息に目を向けて婚約してください。そんなだからお見合い婆と呼ばれるんですよ」


胃のあたりを押さえながら宰相は小言を言って、胃薬を飲んだ。


去年より飲む量が増えているようだった。


「あら、わたくし、まだ二十代なのだけど」


「それは見れば分かります。いい加減に相手を見つけてください。それでなくても医者から胃薬が主食になっていると言われているんですから」


「きちんと一汁三菜を守って食べないと体に悪いわよ」


「誰のせいですか!誰の!あいたたた」


「あら大変、宰相に胃薬をお持ちして」


昨年は胃薬が三食のおかず程度だったが、一年で悪化していた。


「・・・お見合い婆というと私は男ですらないというのか」


「そこを気にしますか?そこを、だいたい未婚の貴族たちの身辺調査をしたと思えば、あっちを引っ付け、こっちを引っ付けと、他人のことを気にする前にご自分たちのお相手を探して引っ付いてください」


「そうは言ってもね。婚活パーティに参加するのは兄上目当てのご婦人か、父上目当てのご令嬢か、私とヴィヴィアンのどちらにも年齢が合わない方が多いのだよ。年齢が合えば、だいたいは家の三女や三男といった領地を継ぐこともできない身分の方が多いからね」


「そんなに相手をと望むのなら、わたくしたちに見合った方を招待してくださいな」


「言いましたね。この宰相、王弟と第一王女に見合う二十代の婚約者候補を来年の婚活パーティに連れて参りますよ。そうなれば、婚活パーティで婚約宣言をしてくださいますよね?あとで誓約書を書いていただきますよ」


「かまわないよ。見つかったらね」


「わたくしも同じですわ」


「では、あと三百六十五日しかないので御前を失礼します」


宰相は本気で相手を探し出すだろう。


二人に逃げる方法はなかった。


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