ディガの森 part1
「それで、結局パーティーを組む事になったの?」
「まあ、1回だけだし、知らない人と一緒にするのにも慣れといた方が良いと思ってな」
それには一理あるな。まっ、僕は元々、他の人と組む事自体は前から考えてたから丁度良いけど。
そう言えば
「どんなクエストに行くか、まだ聞いて無かったんだけど・・・・・・」
「あ~、悪い悪い」
「それについては、僕がお話しします。っと、その前に自己紹介しますね、僕はギース。つい最近、冒険者になったばかりの新米です。よろしくお願いします」
意外と礼儀正しいな。
「僕はリリィって言います。こちらこそ、よろしくお願いします」
僕が、ギースに挨拶を交わしていると、ギースの後ろに1人の女の子が歩み寄ってきた。
その子は、小柄で黒いロングヘアー、背中には金属製の弓を背負ってる。
「えっと・・・・・・」
「ニーナ」
「へ?」
ニーナ、ってもしかして、この子の名前かな?
「ああ、ごめん。この子は僕とパーティーを組んでるんだ。あんまり喋らないけど、悪い子じゃないです」
なるほど。
それにしても・・・・・・
「・・・?」
ク、クーデレだ! 間違いなくクーデレだ! この子。
まさか、こうしてリアルでクーデレの子に会えるとは。
え? 少し会っただけで何で分かるかって? そんなの勿論、僕がクーデレ萌えだからに決まってるよ。
うん、これだけでも一緒に行く事にメリットを・・・あ痛っ!!
「な、何で打つの?」
「ん~、何となくな」
何となくって・・・まあ、確かに、ちょっと冷静じゃ無くなってたのは、否定しないけどね。
あ、そういえば・・・・・・
「どんなクエストに行くのか、聞いて無かったんだけど?」
「そうだったな。今から【ディガの森】に行って『獣除草』を20房採って来るんだと」
『獣除草』は、獣系モンスターが嫌いな匂いを発生させる為のアイテムを作る時に必要な物だ。
これを使えば、倒す事は出来ないけど、匂いを嫌がって離れて行くから戦闘をしないで済む、という代物。
アイテムとして使用する事もあれば、低レベル時にクエストの納品として扱われていたりする。
「それじゃあ、簡単だしすぐに終わるね」
「まあ、移動に歩きだと5日は掛かる場所なんだけどな」
「・・・・・・結構距離があるんだ。なら、何か足が必要なんじゃない?」
ダンと2人なら人目に付かない所で召喚魔法でも使って、さっさと移動できるんだけどね・・・・・・。
「あの、一応森の近くには馬屋があるけど、お金が・・・・・・」
ああ、うん。お金が無いのか。そう言えば、僕達もお金が無くて召喚魔法を覚える前の移動は歩きだったな・・・・・・。
よしっ!
「大丈夫、その代金なら僕が払う」
「え?! でも・・・・・・」
あ~もう! 人の好意は受け取っとくモンでしょ。
「ほら、行くよ!」
馬屋で馬を借りた僕達4人は、目的地に向かって進み始めたんだけど・・・・・・
「日が暮れたね」
「ああ、暮れたな・・・・・・」
目的地に到着する前に日は暮れてしまい、僕達4人は野宿する事になった。
「それじゃあ、晩御飯の用意をするから、ちょっと待ってて」
「おう」
何だか、こっちの世界に来てから、料理をするのが楽しみになってきたような気がする。
元の世界じゃ、料理なんてほとんどする気にはならなかったのに。
料理スキルが高いからかな? それとも、よく読んでた小説みたいにキャラに引っ張られてるとか?
・・・・・・まっ、考えてても仕方ないな。
今は美味しい料理を作る事を考えよう。
えっと、これとこれを入れて、・・・・・・サッと炒める。・・・・・・それから、水を加えて一煮立ち。
でも、やっぱり不思議だな。ゲームの時は、本当に簡単な仕方で、料理に必要な装備、包丁やフライパン、お玉。そういったのを装備して、開始を押すだけだったのに、まるで普通に現実で料理してるみたいな・・・・・・。
「ご飯が出来たよ」
「おう」
「はぁはぁ、すみません任せっぱなしで」
「・・・・・・」
ギース、凄い息切れしてるな。ニーナも昼間と同じ様に見えるけど、顔を汗が流れてる。それに、服や武器も所々汚れてたり破れてる。
「もしかして、ダンが?」
「ん? ああ、俺は片手剣も弓も両方ともスキル値が高いだろ? だから戦い方を少し教えてた」
「ええ、ダンさんって凄いんですね。剣だけじゃ無くて弓まで! 近距離でも遠距離でも戦えるなんて・・・・・・」
まあ、今の世界じゃ無くて、ゲーム時代でもプレイヤーの中では充分に外れてたからね。普通は、近接か遠距離かをはっきりさせてたプレイヤーばっかりだったからな。
片手剣をメインで両手剣や槍をサブにする。杖がメインで弓がサブ。そんな感じだった。
僕も杖以外は使わなかった。
だから、ダンの様なプレイヤーはよくパーティーに誘われて、色んなクエストを色んな人達と熟してた。
戦力的な意味では、ダンは凄く人気があった。
「到着!」
2日目の昼頃になって、僕達は【ディガの森】に到着した。馬は森から少し離れた所にあった馬屋に置いて、そこから歩くこと約30分。
目的物である森に辿り着いた、という訳だ。
「んじゃ、さっさと採取する・・・・・・何やってるんだ?」
『獣除草』を採取しようとしていたダンが、ふと見ると何故か剣と盾を構えてるギースと弓を構えてるニーナが居た。
「それは勿論、襲われた時にすぐに対応出来る様にする為です」
対応って・・・・・・ここって、そんなに滅多にモンスターには会わないのに。
「・・・・・・一昨日、聞いたでしょうけど、僕はクエストを真面にクリアした事がありません。その理由と言うのが・・・・・・・・・・・・」
「ジャアァ!!」
「「「「っ!!」」」」
行き成り大きな声が聞こえてきたから、僕達4人は咄嗟に声の方を向いた。
そこには、草を掻き分けて、アサリアが10体も飛び出してきた。
「っく、やっぱり・・・・・・」
? やっぱり?
「ねえ、やっぱりって・・・・・・」
「リリィ! 来るぞ」
あ~もう、空気を読まないモンスターだな。
「【ブルースト ウェント リア ホプス】 『蒼風の声』」
真っ先に僕が魔法を撃ったら、アサリア達は散開して魔法をかわした。
む、やっぱり外れるか。 初級の魔法じゃ少し弱すぎたかな?
「ジャッ!!」
ん? あ、1体の体に矢が刺さってる。って事は?
「はあぁぁぁぁ!!」
って、いきなりギースが僕の横を走り抜けた!? おまけに、案の定、後ろには弓を構えてるニーナも居る。
ダンは・・・・・・考えるまでも無いか。
「よっ、はっ!!」
もうアサリアの目の前まで辿り着いて、袈裟切りと逆袈裟切りの2連撃で2体を沈めてる。
「ジャーーーッ」
「ジャジャ!」
あ、ダンの後ろから2体が爪で切り裂こうとしてる・・・・・・でも
ダンダンッ! って、2発の銃声が鳴り止むと、2体とも膝から崩れ落ちた。
「【ブルースト ウェント リア ホプス】 『蒼風の声』」
僕も、魔法を放って1体を沈めた。これで、残りは半分か。
そう言えば、ギース達は・・・・・・? っ! 囲まれてる!
「「「「「ジャアアァァァ!!!」」」」」