5 鈴木芳香【現し世-夢中】
鈴木芳香、17歳。
つまらない。
最近、何をしてもつまらない。
クラスでは誰かが推しのライブの話をしていて、真面目な子は受験勉強に必死になっている。
みんな何かに夢中だ。
私だけが、何にも夢中になれない。
勉強は学年でご位くらい。
一位じゃないから天才なんて思わない。
でも、悔しくもない。
授業を受けて、宿題をやる。
それ以上でもそれ以下でもない。
それだけで五位なら、それでいい。
スポーツも同じ。
何をやっても、それなりにできる。
飛び抜けて上手いわけでもないけれど、困るほど下手でもない。
「すごいね」と言われることもある。
でも、「悔しい」と思ったことはない。
芸能人も、ゲームも、漫画も、小説も。
「好き」はある。
でも、「好きすぎる」はない。
何を見ても、「まあ、面白かった」で終わる。
最近はもう「熱中する」ってどういうことだったのか、思い出せない。
そんな時、父親から話があった。
勤め先のゲーム会社で、新たに開発中のゲームのモニタープレイをしてみないかという話だった。
最初に聞いた時は、「面倒だな……」としか思わなかった。
ただ、その内容を聞くと少し興味が湧いた。
――五感体感型の歴史シミュレーションゲーム。
戦国時代のある武将になりきり、その世界を五感で体験できるゲーム。
注意点は、五感を再現するため痛みも感じること。
もちろん、安全のために痛覚は制御されているらしいけど……。
まあ何より、暇だったし。
時間潰しにはなるかな、くらいの軽い気持ちでやってみた。
その結果。
久しぶり――いや、初めて夢中になった。
心が躍った。
素直に、すごいゲームだと思った。
私が演じることになった武将がまた面白かった。
明智光秀。
そう、あの本能寺の変で主君・織田信長を討った武将だ。
ただ、一つ気になること……というより、分かったことがある。
私が今仕えている足利義昭。
ご存じ、足利幕府最後の征夷大将軍。
もっとも、今はまだ信長のもとに身を寄せている。
この人はたぶん私と同じプレイヤーだ。
そして向こうは、私がプレイヤーだということに気づいていない。
さらに、他にもプレイヤーがいる。
たぶん、今自分たちが身を寄せている織田家にも。
誰なのかは今探っているところだ。
そして、この世界は史実とずいぶん異なる状況になっている。
先ほど早馬が来た。
信長が、美濃へ攻め込んできた三好軍を垂井で討ち破ったらしい。
それを聞いた義昭公が「信長のところへ行く」と言っている。
どうやらこのまま信長を利用して京へ、という腹づもりのようだ。
それはそれでいいかな。
あとは、いつ、どこで下剋上を果たすか。
初めてだ。
明日が楽しみだなんて思ったのは。
後日、この続きをUP予定です。




