48 続きからはじめる(1568年4月10日 織田家・足利家)【真・本圀寺の変】
本エピソードで本作品は完結となります。
(ただし、今後は外伝などを追加予定です)
この作品の続きは次回作でお楽しみ願います。
『1568年4月10日 足利家――』
本圀寺に居た足利義昭の苛立ちは、極限に達するまでに至っていた。
―織田信長、岐阜城に帰還
その書状を目にするや、破り捨てて踏みつけたほどに。
ここまで追い込んで仕留められぬとはな――
存外、明智光秀も無能か。
こうなると、織田家に攻め込む以外に織田信広の首を挙げる手立てはない。
いまだ情勢は不安定ながらも、
義昭はMAP機能を呼び出して見る。
足利家の自領は現在山城と南近江だ。
そして線で結ばれているのが浅井家の北近江と、越前と若狭の朝倉家。
そして大和の松永家と摂津方面の三好家。
線で結ばれているのは同盟を表している。
伊勢方面は変わらず北畠家。
そして織田家は美濃と尾張の二か国だ。
だが、この二か国の国力は通常の4か国に匹敵するほど人も財も豊富なのだ。
そう簡単に攻め込めるところではない。
やはり今回信長らを討てなかったのは、とてつもなく大きく痛かった。
しばらくして。
「失礼いたします。明智光秀様がお戻りでございます」
近習が知らせてきた。
―おめおめと、よくもまあ帰ってこれたものだ。
怒りを何とか抑えて言った。
「通せ」
「失礼いたします」
そう言って光秀が部屋に入ってきた。
入ってくるなり平伏して言った。
「此度は、御期待に沿えず誠に申し訳ございませぬ」
義昭は冷たい声で。
「本当にな。其方に任せた私が間違いだった」
そう言って立ち上がると
「与えた軍配は取り上げる。しばらく蟄居を命じる」
見下して言い放った。
「は……承知仕りました」
光秀は何も言い返さず、伏せたままそう言うとそのまま部屋を出て行った。
――駒が足りぬ。
きつく当たりはしたものの、光秀は普通に一線級の武将だ。
今回の失敗で学ぶこともあるだろう。
但し信賞必罰は世の常だ。
今後の柱は細川藤孝と松永久秀とし、将軍の名のもとに人材を集めるしかない。
庭を眺めながら義昭はそう思案していた。
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その夜。
深夜。
義昭は信広を逃した悔恨と、光秀へ対する慚愧の念から深酒に溺れていた。
足利家は単独としてはまだ小勢力。
蟄居はやり過ぎたか。
明日には蟄居を解いて策を考えさせるか……。
酷く酔いながらもそう考えていたその時――
「失礼いたします。明智光秀様が御目通りを願っておられますが如何いたしましょう」
近習が知らせてきた。
―光秀が?
改めて詫びに来たか……?
「よい。通せ」
「はっ」
そう言うと近習は伝えに行った。
しばらくすると、光秀が来た。
「夜分に失礼いたします」
そう言って部屋に入ってきた。
座して一礼ののち
「蟄居を命じられながらも再び参上し申し訳ございませぬ。
どうしても義昭様にお伝えせばならぬ事がございまして……」
「うん?」
「まずは、御人払いを願えますでしょうか」
密談か?
「分かった」
そう言うと声を張り上げて
「しばらく人払いせよ!」
すぐに近習らが遠ざかるのが分かった。
「して、何だ?」
「は……失礼いたします」
そう言って光秀は膝立ちのまま義昭の近くに寄ってきた。
すると
「御耳を拝借いたします」
光秀は義昭の耳に顔を近づけて、続けて言った。
「もはや貴方に用は無い。現世に戻ってください」
―なに?いま何と言った??
同時に目の前が光った。
――眩しい
一瞬ののち気付いたのは、それは蠟燭が刃に反射した光だった。
「貴様……っ!」
そう言って義昭は身体を捻る。
が、酔いのせいか動きが遅い。
刃が、身体を貫いた。
「ぐふっ……」
口から血が噴き出る。
「お前は……ゴボッ」
光秀は血濡れた刀を持ったまま、冷えた笑いの表情で見下ろしている。
「将軍宣下の後のつもりだったんですけどね」
続ける。
「私もプレイヤーです」
――馬鹿な……
義昭の表情が驚愕のまま凍りつく。
「足利家の勢力は全て私が頂きます」
光秀が見下ろしたまま満面の笑みに変わり、言い放つ。
「あ、そうだ」
あっけらかんとして言う。
「最後に教えてあげますね。
私以外のプレイヤーは、織田信広だけではありませんよ」
―なん、だと……
声が出ない。
「この人かな?という候補は数人居ます。確定ではないですけどね」
光秀が袖で刀の血を拭いながら続ける。
「貴方のおかげで諸国を回り、たくさんの武将にも会いましたが特定には至っていません」
屈んで義昭と同じ目線になり、笑顔のまま続ける。
「まあ、ここまでよくやりましたよ。
ただ、私を信用し過ぎましたね。本能寺の変を起こした人物なのに」
語尾に笑いが混じる。
「調略を任せてくれたおかげで、松永や浅井を私の下に組み込めました」
もはや何も、言えなかった。
「心置きなく、逝ってくださいね。
あ。ゲームの中の話ですからね?
リアルに戻るだけです」
そして
「最後に。私の名前は鈴木芳香。17歳です」
……。
「今まで、ありがとうございました」
義昭こと草薙恭祐が最後に見たのは、光秀がそう言ってペコリと頭を下げたシーンだった。
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『1568年4月10日 織田家――』
その頃。
信長(真紀)と信広(誠人)は岐阜城の「はじまりの部屋(信長の部屋)」に居た。
そろそろ一旦ログアウトしようかーと話していたその時。
視界の隅に例の表示が出た。
赤い文字。
―警告
―歴史乖離率
―12.5%
「は?」
誠人。
すると。
―緊急イベント:真・本圀寺の変
―イベント更新
―足利義昭…討死
―安定化モジュール:出力上昇
「「はああああああ!?」」
2人、異口同音で素っ頓狂な声が出た。
続けて。
―イベント更新によるパラメータ特異変動
―氏名:明智光秀(40)
―統率:75 → 83
―武力:78 → 80
―知力:81 → 94
―政治:71
―魅力:76 → 81
「なにこれ」
「義昭が死んで、光秀のパラメータがエラいことになってる……」
誠人が呟く。
「これさ」
ピンときた。
「光秀が義昭を討った?本能寺の変みたいに」
たぶん、間違いない。
そして――
「このパラメータ。光秀もプレイヤーかも」
ハッとなった。
ずっと引っ掛かってた事があった。
現実世界に居た時のPCモニタの表示。
―OTHER ACCESS POINT: KYOTO AREA
―(他のアクセス地点:京都圏)
―DEVIATION SIGNATURE DETECTED
―(逸脱の痕跡を検出)
この【他のアクセス地点:京都圏】のところ。
この頃、義昭は越前の朝倉氏に身を寄せていて、京都には居なかった。
先日、義昭がプレイヤーだと判明して「たまたまその頃京都に居た」と考えるようにしてたけど、そんな訳が無かった。
光秀なら分かる。
史実でも義昭の懐刀として様々な勢力へ赴いていた。
京に居ても不思議はない。
「間違いないね」
確信した。
「てか、何人プレイヤーが居るんだよ……」
誠人が悲嘆気味に呟く。
ほんとにソレ。
これで私たちを入れて5人目だ。
そのうち2人が早くも離脱した。
―でも、他に居ないとは限らない。
「姉ちゃん……」
誠人の声が震えている。
「なに?」
「大変だ……」
なになに?
今度は何??
「ログアウト出来なくなってる…………」
は?
~~~~~続く~~~~~
<1568年4月10日時点>
―歴史乖離率:12.5% ↑(+2.6)
―安定化モジュール:出力上昇
―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)
―管理者権限保有者:氷室真紀
織田信長(34)…統86 武63 知83 政73 魅85 【真紀】
織田信広(36)…統41 武66 知74 政69 魅80 【誠人】
柴田勝家(42)…統89 武88 知59 政69 魅84
丹羽長秀(33)…統79 武72 知80 政75 魅72
木下秀吉(31)…統75 武63 知80 政75 魅84
林秀貞 (55)…統52 武44 知68 政72 魅57
前田利家(29)…統77 武83 知64 政43 魅72
池田恒興(32)…統71 武73 知70 政74 魅76
村井貞勝(48)…統41 武33 知72 政90 魅84
木下秀長(28)…統70 武61 知75 政83 魅87
森可成 (45)…統75 武77 知68 政65 魅69
足利義昭(31)…討死 【恭祐】
明智光秀(40)…統83 ↑ 武80 ↑ 知94 ↑ 政73 魅81 ↑【芳香】
細川藤孝(34)…統72 武63 知86 政84 魅79
松永久秀(60)…統85 武87 知88 政73 魅64




