42 続きからはじめる(1568年3月29日 織田家)【松永久秀という男】
週末まで仕事がドタバタだった。
毎日残業で遅くなりながらも、家へ帰ると誠人から強奪した徳川家康の本を熟読。
そうして金曜日の夜を迎えた。
誠人も仕事を終えて早々とウチに来ていた。
私はテーブルの上のヘッドセットを見つめた。
無機質なはずのそれが、妙に"生きている"ように見える。
誠人はゆっくりと椅子に座った。
「……なあ、姉ちゃん」
「なに?」
「次ログインしたらさ」
少し間を置いて続ける。
「もうゲーム感覚でいられなくなる気がする」
私は少しだけ考えて、頷いた。
「うん。たぶんね」
「死んだら終わり、とか」
「あるかも」
「ログアウト制限、とか」
「ありそう」
「……それでも行くんだよな」
「うん」
即答だった。
誠人は天井を見上げると深く息を吐いた。
「マジで頭おかしいよな、俺たち」
「今さら?」
私は笑った。
「まあ、そうか」
誠人も少しだけ笑う。
そうして2人はヘッドセットを装着すると、再び戦国の世へダイブした。
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ログインするとそこは以前見た本能寺の部屋。
私の部屋=はじまりの部屋だ。
いつも通り床の間に目をやると、
『1568年3月29日 織田家――』
現実世界では約5日経過に対し、今回は22日が経過していた。
さて、まずは状況確認だ。
MAP機能を呼び出して見てみる。
いま織田家は尾張、美濃に加えて南近江が自領になっている。
足利家が山城。
浅井家が北近江と、越前と若狭には朝倉家が。
摂津方面はいまだに三好家だ。
そしてここから少し南の大和は松永家。
伊勢方面は北畠家。
それ以外は靄がかって表示されていなかった。
さて、これからどうするか。
史実では上洛後、信長はすぐに美濃へ戻る。
そして間を置かず本圀寺の変が起こる。
ただ、上洛の時期も周りの勢力図も史実とは全く異なっている。
現実世界では京都から岐阜まで新幹線で行けばすぐだ。
ただ、この時代はそうはいかない。
ゲームの中とはいえ、情報伝達速度や移動時間は比べ物にならないほど遅い。
やっぱりここは岐阜城に戻ろうか。
そう考えていたそのとき――
「申し上げます」
襖の外から小姓が言う。
「何だ?」
「松永久秀様がお越しになり、御目通りを願っておられます」
おお。
松永弾正。
三好長慶に仕えてその右腕に成り上がった梟雄だ。
そうか、史実通りに信長の配下になりに来たのか。
「会おう」
そう言うと立ち上がり、謁見する広間に向かった。
部屋に入ると、久秀は礼儀正しく伏して待っていた。
その能力は――
―氏名:松永久秀(60)
―統率:85
―武力:87
―知力:88
―政治:73
―魅力:64
すごい。
上座へ座ると声をかけた。
「織田信長である」
すると久秀は頭をわずかに上げて言う。
「松永久秀にございます。この度は御目通り頂きありがとうございます」
そして背筋を伸ばして続けた。
「この度の御上洛、おめでとうございます」
「うむ」
「本日は御祝を言上仕り、参上いたしました」
「うむ、大儀である」
「ははっ」
久秀が再び頭を下げる。
しばし双方沈黙。
「……して、その他には?」
「は。これより足利義昭様にも御目通りさせて頂こうかと考えております」
ん?それだけ?
先にコッチに来たのは良しとして、それ以外は無いの?
「左様か。それは良い事だ」
「は。それでは失礼して……」
「久秀殿」
「は……」
「そなたが治めておる大和だが」
そう言うと、久秀が頭をあげて目が合った。
「いかように考えておる?」
「いかように、とは……?」
おかしいぞ、この展開。
「大和については、これより足利義昭様に謁見したうえで、このまま某が治める許可を頂きとう考えております」
やっぱり。
「そ、そうか。無事にお許しがでるとよいな」
「ははっ」
再び伏せる。
が。
「某の御心配よりも、信長様も美濃の方が御心配でございましょう」
なるほど。
史実の信長は美濃を掌握したのち上洛しており、尾張が生み出す財を元手に物資も豊富だった。
そのため、上洛してもなお余力があったので久秀は身の危険を察知し下についた。
けど、今の織田家は余力どころが垂井の戦いでの消耗と上洛で費やした支出含め回復途上にある。
それに対するは近いうちに叙任予定の将軍家だ。
比べれば足利家に与するは自明の理。
「はは。確かに。お互いにまずは自領を確たるものにせねばな」
笑顔を取り繕い言うと
「はっ。それでは失礼いたしまする」
そう言うと久秀は部屋を辞した。
部屋に戻った。
んー、あれほどの武将を手に入れられなかったのは痛い。
しかもだ。
もし織田家と足利家が史実通り敵対した場合、大和が足利家につくとなると相当にやっかいだ。
やっぱりまずは早く美濃へ戻ろう。
よし。決めたら即行動だ。
「誰か」
「はっ」
小姓が応じる。
「これより義昭様のところへ参る。先触れを出し準備いたせ」
「ははっ」
美濃へ帰る前に挨拶に行こう。
そう決めた信長だったが、この義昭公への挨拶が引き金となり事態が急転することになる。
<1568年3月29日時点>
―歴史乖離率:8.4%
―安定化モジュール:通常出力
―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)
―管理者権限保有者:氷室真紀
織田信長(34)…統86 武63 知83 政73 魅85 【真紀】
織田信広(36)…統41 武66 知74 政69 魅80 【誠人】
柴田勝家(42)…統89 武88 知59 政69 魅84
丹羽長秀(33)…統79 武72 知80 政75 魅72
木下秀吉(31)…統75 武63 知80 政75 魅84
竹中重治(24)…統81 武34 知92 政88 魅82
林秀貞 (55)…統52 武44 知68 政72 魅57
前田利家(29)…統77 武83 知64 政43 魅72
滝川一益(43)…統79 武84 知71 政69 魅80
池田恒興(32)…統71 武73 知70 政74 魅76
村井貞勝(48)…統41 武33 知72 政90 魅84
木下秀長(28)…統70 武61 知75 政83 魅87
佐々成政(32)…統75 武80 知62 政53 魅71
森可成 (45)…統75 武77 知68 政65 魅69
足利義昭(31)…統91 武49 知93 政71 魅79 【恭祐】
明智光秀(40)…統75 武78 知81 政73 魅76
細川藤孝(34)…統72 武63 知86 政84 魅79
松永久秀(60)…統85 武87 知88 政73 魅64 new




