28 続きからはじめる(1567年8月9日 織田家)【稲葉山城奪取】
1567年8月9日 夜半――
秀吉が稲葉山城裏側から奇襲をかけた。
それと同時に城正門への攻撃を再開した。
私と信広は今回は本陣でじっと構えて戦況を見守っていた。
「殿」
側に控えていた竹中半兵衛が声を掛けてきた。
「ん?」
「美濃勢へ伝令を」
美濃勢?
陣触れにもあった通り、西美濃三人衆は城攻めには参加させていない。
西側。退路遮断として街道を封鎖させている。
「街道ではなく、長良川を警戒させてください」
そうだった。
史実では当主・斎藤龍興は稲葉山城落城時、長良川を下って生き延びていたんだった。
史実では半兵衛はまだ織田家に居ない。
この世界では、ここに居る。
そしてやはり聡い。
何故だかこの世界の歴史を変えることにいまだに躊躇してしまう。
ゲームなんだから何も問題はない……はずだ。
そして、龍興を討つ事で歴史がどれだけ変わるのか。
「殿」
思案していると半兵衛が促してきた。
「さほど時はございません。龍興殿はここで討つべきです」
そうだよね。
禍根は絶つべきだ。
「あいわかった。美濃衆へ伝えよ」
すぐさま伝令が駆けていく。
その瞬間――
視界の隅にいつもの『!』マーク。
今回は目力クリックすると
―歴史乖離率 3.8%
―許容範囲内
また出た。
0.7%も上昇した。
龍興の生き死にがここまで作用するのか……?
「殿!」
林秀貞が叫ぶ。
ふと城の方を見ると、その上空に
『織田軍:12,111 対 斎藤軍:129』
更に数字は減っている。
「奇襲が成功した模様ですぞ!」
秀貞が続けて叫ぶ。
すると
「申し上げます!」
伝令が来てひざまずくと言った。
「御味方、正門を突破!一気に本丸まで攻め込んでいる模様!!」
「殿、まいりましょう!」
信広が言う。
そうだ。最後の詰めは見届けねば。
「参る」
私はそう言うと立ち上がり、本陣を出た。
そして昼間と同じ少しひらけた場所で目にしたのは――
正門から本丸に伸びた篝火の光。
そして様々な声。そして音。
鉄炮の砲声も聞こえる。
――ここは、本当に戦場だ。
すると頭上の表示が、光った。
そこには
『織田軍:12,075 対 斎藤軍:0』
の表示ののち、
『攻城成功』
の赤い文字が夜空に高く、そして大きく浮かんでいた。
――勝った。
稲葉山城を落とした。
すぐさま地鳴りのような雄叫びが聞こえてきた。
「「「えい、えい、おーーーーーー!!!」」」
皆が叫んでいた。
すぐに、側にいた信広、秀貞、半兵衛、前田利家がひざまずいて
「「殿!おめでとうございます!」」
皆が異口同音で声を上げた。
やばい。
なんか、泣きそう……。
何だろう、この何とも言えぬ感動は。
映画やドラマで感動するのとは違う。
震える。
いや。
心が、奮える。
このゲームを始めて多くの感動を味わって来たけど、間違いなく今回が最上級だ。
こんな体験は、普段の生活ではまず出来ない。
――このゲームを作って本当に良かった。
心の底からそう思えた瞬間だった。
しかしその時――
視界の隅が赤く光り、強制的に表示が出た。
―【警告】
―歴史乖離率 6.1%
―許容範囲内
え…?
一気に2.3%も上がった。
何があった??
「申し上げます!」
またもや伝令が来てひざまずくと言った。
「安藤伊賀守守就様、斎藤龍興殿を御討ち取られた由にございます!」
――これだ。
半兵衛が応えた。
「ようやった!ご苦労申し伝えよ!!」
「ははっ」
伝令が駆けてゆく。
するとウィンドウ表示が出た。
―安定化モジュール:強制介入
次いで赤い文字。
―【歴史収束力 増大】
―長期乖離予測:補正対象
そしてしばらくして
―歴史乖離率:4.1%
―安定化モジュール:通常出力
――何が起きた???
するとまたもや。
「申し上げます!」
「何だ」
秀貞が応じる。
「氏家三河守直元様、御討死なされました!」
――違う。違う違う!!!
史実では数年先に本願寺勢力に討たれるはずだ。
ここでは死んでいない。
間違いない。
これは安定化モジュールの強制介入の結果だ。
ふと脇を見ると、信広も険しい表情で考えている。
いまここで私が取り乱すわけにはいかない。
「あいわかった」
つとめて私は平静を装い、そう応じた。
「秀貞」
「はっ」
「氏家三河守直元を丁重に弔ってやってくれ。
併せて一族へも取り計らってやってくれ」
そう言うと、秀貞は少し驚いていたが「ははっ」と応じてくれた。
これは、ゲームだ。
だけど……
斎藤龍興と氏家直元は、……私が殺した。
「皆の者」
私は心を落ち着けると、表情を改めて言った。
「稲葉山城へ参る」
そう言って静かに本陣の奥でぷかぷか浮いていた『▷』を数回ほど目力クリックした。
<1567年8月9日時点>
―歴史乖離率:4.1% ↑(+1.0)
―安定化モジュール:通常出力
―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)
―管理者権限保有者:氷室真紀
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